第20話 冒険者
次の日の朝、俺は教室に入ると何やら騒がしい様子だった。
「何かあったのか?玲音」
俺は自分の席に着席し、前に座っている玲音に聞いてみる。
「ん?あぁ、天上院達が冒険者登録をしたらしくてよ。そんでチヤホヤされてんだろ」
そう言われて天上院の席の方を見てみると、天上院と二宮と赤月が男女問わず色んな生徒達に声をかけられている様子が見えた。
と言っても女子はほとんど天上院に声をかけているので、二宮と赤月は男子に囲まれている。
玲音は天上院が女子に囲まれている様子を見て面白くないような表情をしている。
多分だが天上院がモテているからだろうな。
ちなみに瞬はまだ登校していないようで姿が見えない。
中山達は俺に配慮してくれているのか教室に入った瞬間にちょっとだけ目が合っただけで直接話しかけに来ることはない。
にしても冒険者、か。
高校生が冒険者になる事はほとんどない。
その理由として最初に登録費用の一万円が取られる上に命が危険に晒される仕事だからだ。
また冒険者登録をしたら一週間に一度はダンジョン探索を義務付けられており高校生活との両立が厳しくなる。
普通の高校生からしてみれば低級ダンジョンであろうと命取りになる。
普通のバイトよりは稼げるかもしれないがわざわざ一週間に一度危険を犯してまで冒険者になろうと思う高校生はそうはいない。
だからこそ高校生で冒険者登録をした天上院達はチヤホヤされているのだろう。
普通の高校生は冒険者登録をする勇気はないが冒険者というものに憧れを抱いている人は多いからな。
「天上院達は冒険者になったのか。まぁ俺らには関係ない事だろ」
俺が天上院達を一瞥してから前を見ると玲音は女子に囲まれている天上院に嫉妬している一方でどこか羨ましそうにしている感じが垣間見えた。
「⋯⋯そうだな」
玲音からは少し間が空いてから返事が返ってきた。
こいつは戦う事が好きそうだし冒険者になりたいのかもしれない。
それからちょっと経ってから珍しく瞬が朝礼の時間ギリギリに教室に滑り込んできてそのすぐ後に朝礼のチャイムと同時に早乙女先生が来て朝礼が始まった。
昼休み、俺は中山達3人と玲音と瞬と昼食を取っていた。
今日は醤油ラーメンを食べている。
やはり食堂のラーメンは絶品である。
「ねぇねぇ龍崎。今日さ放課後暇?」
俺の隣で可愛らしい弁当を食べている中山に声をかけられ俺は少し考えたのちに返答する。
「特に予定はないな」
「じゃあさ、2人でプリクラ撮りにいかない?」
これは急展開だな。
まさか中山に2人きりで誘われるとは思わなかった。
俺は特に断る理由もないのでそれを承諾しようとするが玲音によってそれは遮られてしまった。
「ちょっと待て。一樹は放課後、俺様と瞬と一緒に冒険者登録しに行く予定があるからわりぃな」
ん?いつ俺は玲音と冒険者登録をしに行く予定ができたんだろうか。
まさか俺の予定が俺の知らない間に決められてしまっていたようだ。
瞬は苦笑いをしながらこっちを見ている。
「はぁ?龍崎は困った顔してるんだけど?あんたが勝手に決めた予定なんじゃない?」
「確かに一樹には伝えていなかったけどよ、でもダチを優先してくれるよな?一樹」
「龍崎にすり寄るのやめてくんない?龍崎は放課後あたしとプリクラ撮りに行くから」
いやまだ行くって返事はしてないんだが。
行くつもりではあったが声に出して返事をした記憶はない。
「いや一樹は俺様と瞬と冒険者登録しに行くんだよ、な?一樹」
「冒険者とかめっちゃ危険じゃん。わざわざそんな危険な事する必要なくない?そんな事よりあたしとプリクラ撮りに行こーよ。龍崎」
2人して俺の方に振り向いてくる。
俺は一旦間宮と桜井に視線を向けるが2人には知らんぷりされてしまい、瞬はさっきから苦笑してばっかりだ。
俺は少し考えてから俺の意見を述べる。
「中山には悪いが、今日は玲音と冒険者登録をしてきてもいいか?明日は中山とプリクラ撮りに行くと約束する」
「⋯⋯まぁそれならいいけど」
中山は少し口を膨らませていたが美少女というのはどんな表情をしていても可愛いものだな。
それに対して玲音は口角を釣り上げて満足した表情をしている。
俺はその様子を眺めながら放課後の冒険者登録に胸躍らせるのだった。
俺も結構戦う事自体は好きだからな。




