第13.5話 救われた少女
「礼奈!無事で本当に良かった!」
あたしはあの後異警に保護されて事情聴取を受けてから無事に家に帰る事ができた。
家の扉を開けるとパパが目尻に涙を浮かべながら抱きついてくる。
その奥を見るとママとお姉ちゃんも目尻に涙を浮かべている。
「とりあえずご飯にしましょうか」
ママは異警から連絡があった時点で夕飯を作ってくれていたらしい。
テーブルにはオムライスが家族分並べられている。
あたしは席につき「いただきます」と言ってからオムライスを一口食べてみる。
・・・・・・暖かい。
さっきまでの不安が嘘のように心が暖められた。
あたしはようやく無事に家に帰れたんだと実感した。
家族での食事を終えるとあたしは先に風呂に浸かってから自分の部屋に戻って今日のことを振り返る。
にしても助けに来てくれた人は一体誰だったんだろ。
ブレザーはうちの学校の制服だったし同じ高校に通ってる事は確定だ。
あたしがベットに寝転がりながらボーッと考えてると突然スマホから通知音が鳴った。
開いてみるとあたしと美香と桃の3人のグループRAINでグループ通話が開始されていた。
これはいつもの事であたしたち3人は昔から夜にグループRAINで話すのが習慣となっている。
あたしは体を起こし参加のボタンをクリックして通話に参加する。
「やっほ、二人とも」
『やほやほ、それで今日は何話す?話題ある人いる?』
『んー桃は特にって感じだけどれなちんはあったりする?誰かに告られたりとかした?』
「今日は別に誰にも告られてはないけど、ちょっと二人に話したい事はあってさ」
あたしは今日起きた出来事を二人に話した。
"黒狼"に攫われた事。
凄く強い人が助けに来てくれた事。
そしてその人に恋をしてしまいどうやら学校も同じっぽい事。
あたしは徐々に顔が真っ赤になっていっているのを感じる。
『ほぉほぉ、あの礼奈が恋ねぇ。にしても大丈夫だったん?怪我とかは』
「怪我は特にしてないから大丈夫」
『れなちんにもようやく春が訪れたんだね。桃は嬉しいよ。どんなイケメンに告られても振りまくってたあのれなちんがねぇ』
美香はあたし自身の心配もしてくれるけど桃は恋愛沙汰にしか興味がないようだ。さすが頭の中も髪の毛の色もピンクに染まりきっているだけな事はある。
『で、で、どんな人だった?イケメンだった?』
「顔はよく分からなかったけど同じ学校っぽかったんだよね。ブレザーがうちの学校のだったし」
『ふーん、じゃあ探せば見つかるかもね。明日試しに探してみる?』
「うん、そのつもり。ブレザーも返したいし、できれば連絡先も交換したいから」
『れなちんが自分から男の子の連絡先知りたがるなんて!本気で気になってるんだね』
桃には大袈裟に驚かれてしまった。
まぁ中学の時も男子に連絡先聞かれて断ることが多かったから逆にあたしから知りたいと思ったのは珍しいのかもしれない。
『まぁ何はともあれ礼奈が無事で良かったよ。その礼奈を助けてくれた人には幼馴染のあたしも礼はしたいしね。でも、礼奈と釣り合う人間かは見極めさせてもらうからね』
「・・・・・・それはちょっと過保護すぎない?」
『んー、そうかもしんないけどやっぱ礼奈には幸せになってほしいからさ。礼奈と付き合う人間にはしっかりしてもらわないと』
ん?それだとまるで・・・・・・。
『ミカミカ、それだとれなちんとその彼が付き合う前提に聞こえるけど?』
桃があたしの言いたい事を代弁してくれた。
『礼奈は可愛いからね。礼奈に告られて断る人間がいるわけないでしょ。もし告白断られたならその人は人間じゃない何かだったって事よ。その彼が見つかり次第礼奈は告りなよ』
「それは無理!普通に恥ずかしいんだけど!」
あたし自身自分が可愛いと自覚しているとはいえ流石にいきなり告白するというのはハードル高すぎる気がする。恋愛は初心者なわけだし、告白するのは色々と段階を踏んでからにしたいと思う。
あたしも彼のことをまだよく知らないし。
『とりあえずは明日朝早く登校するよ』
「え、なんで?」
『その彼の学年やクラスが分からないなら正門で張っていた方がいいでしょ』
「でも顔もよくわからないんだけど」
『礼奈はブレザー借りてるんでしょ?なら絶対にその彼はブレザーを取りに来るはずよ』
「そっか、確かに。分かった。明日早起き頑張るね!」
『桃も勿論来るよね?』
『当たり前!こんな面白いこと見逃したくないし』
『じゃあそろそろ電話も終わろうか、あたしは風呂入る時間だし』
「そだね、また明日」
『また明日ね〜』
あたしは電話を切ってからベットに倒れ込む。
今日は大変な一日だった。
怖い思いもしたけど初めての気持ちを知ることもできた。
あたしは今日起きた出来事を振り返りながら瞼を閉じてゆっくりと眠りにつくのだった。