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第12話 石山戦

 俺は石山と向き合いながら少し息を整える。


 石山という男は先ほどの攻撃から一撃一撃が致命傷になる事はすでに分かっているので全ての攻撃を避けながら倒さなければならない。


 俺も石山もお互いを警戒しているからかどちらも動かず向き合ったまま少しずつ時が過ぎていく。


 このままでは埒があかないと思った俺は先に動く事にした。


 地面を蹴って一瞬で相手の懐に入ると相手の顔面に向かって右足で蹴りを放つ。


 右足の蹴りは顔を逸らす事によって避けられたが、相手に攻撃させる暇を与える事なく続け様に体を捻って左足で同じ場所を狙う。


 石山は今度は左腕によってガードし、そのまま右拳を繰り出してきた。


 俺は後方に飛ぶことにより、それを間一髪で避けるが石山は追撃するように距離を詰めてもう一度右拳を繰り出す。


 狙いは顔面のようだ。


 俺は首を傾ける形でそれを避け石山の腹を思いっきり蹴飛ばす。


 石山は後方に大きく吹き飛び壁に背中から激突する。


 この程度で倒せるとは思っていないがそれなりのダメージを与える事はできただろう。


「ガハッ・・・・・・今のはいい一撃だったぜ。お前も俺と同じ身体能力強化系の異能力者か?威力的に俺の下位互換ってとこか?」


 石山は笑みを浮かべながら立ち上がる。


 常人であれば今の一撃で気絶してもおかしくないと思うが少し怪我した程度で済むのはこいつが本物の実力者だからだろう。


「俺の異能は身体能力系ではない。今までのは俺の純粋な身体能力と技術によるものだ」


「はぁ?マジかよ・・・・・・だがその方がおもしれぇ。んじゃあ、異能は使ってねえってことか?」


「あぁ。逆に聞くがお前ほどの実力者が何故Bランク冒険者という地位を捨てて犯罪者組織に属している?冒険者、それもBランクであれば稼ぎは良かっただろ?」


「稼ぎは勿論良かったぜ。ただな、スリルが無かったんだ」


「スリル?」


「おうよ、俺は常にスリルを求めていた。だがダンジョンに潜って稼いで来る毎日はつまらなかったんだ。ま、そこをボスに拾って貰ったんだがな。お喋りも終わりだ。こっからは本気で行くぜ」


「今までは本気じゃ無かったってことか?」


「あぁ・・・・・・勿論だ!」


 石山はそう言うと一瞬で俺の懐に潜り込み右拳で顎を狙ってくる。


 さっきまでとは段違いなスピードだ。これが石山が身体能力強化した時のスピードなんだろう。


 だがギリギリ目で追えるレベルのスピードだ。


 俺は後方に跳んで避けるが猛スピードで追撃してきた石山の右拳が俺の腹部を狙う。


 咄嗟に両腕でガードするがそれでも衝撃を抑える事は難しく俺は後方の壁に激突する。


「グフッガハッ・・・・・・」


 俺は立ち上がり口の中に溜まった血を地面に吐き捨てる。


 石山はそんな隙だらけの俺に迷いなく追撃してくる。


 だが今一撃貰った事によりこいつの攻撃は既に見切った。


 石山が一瞬で俺の目の前まで来ると右拳で顔面を狙ってくる。


 それを顔を横に逸らして避け、石山の右腕を俺の左手が掴む。


 続け様に左拳で俺の顔面を狙ってくるがそれをしゃがむ形で避け頭上を過ぎ去るのを確認してから俺の右拳が石山の顎に強烈なアッパーを叩き込む。


 石山は体勢を崩し地面に倒れるがすかさず俺は石山の上に跨り顔面を右と左の拳で交互に殴りつける。


 数分の時が経過した後、ようやく石山は気絶したようだ。


 それを確認してから俺は立ち上がり口元についている血を腕で拭ってから今まで静観を決め込んでいた奴に殺気をぶつける。


「手下がこんなにボロボロになって戦っているのにお前は何やってんだ?」


「くくく・・・・・・中々にいいもん見せてもらったぜ。少なくとも五十人以上はいたはずなんだが、てめぇ1人に全員やられてしまったようだな。この化け物野郎が。だがなぁ、これでも俺は元Aランク冒険者だったんだぜ?」


 やはり元Aランク冒険者だったか。


 俺の嫌な予感は当たっていたようだ。


「何故か知らねえがてめぇは異能を使えねえんだよな?異能を使わない奴がこの俺に勝てるわけねえだろうが!今から俺が直々にてめぇをぶっ殺してやる。感謝しろよ?俺が相手してやる事なんて少ねえんだからな!」


 そう言いながらこいつは姿を徐々に変化させていく。


 それは二足歩行こそしているが紛う事なき黒い狼の姿だった。


「お前の強さを認めたからこそ自己紹介してやんよ。俺は"黒狼(ブラックウルフ)"のボス、井出圭介だ。俺の名前を心に刻んでからあの世に行きな!」


 そうして"黒狼(ブラックウルフ)"の最後の強敵、井出圭介との戦いが幕を上げた。

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