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第11話 戦闘開始

 数は五十人以上はいるだろうか?


 俺は天井から飛び降りた後周りを見渡して人数の把握をしていた。


 目の前ではリーダー格と思われる男が女の子の服を剥いでいる最中だった。


「今すぐその子を渡せ。そしたら全員半殺しで済ませてやる」


 俺は精一杯の殺意を込めた目で男を睨む。


 男はポカンとした顔で俺の顔を見た後大声で笑い声を上げる。


 周りにいるチンピラどもも釣られる感じで笑い出す。


 一旦落ち着いたのかリーダー格と思われる男は俺の方に向き直った。


「てめぇ、ここがどこだか分かってんのか?ここは"黒狼(ブラックウルフ)"のアジトだぞ。この女を助ける為に勇敢に乗り込んできたんだろうが、てめぇみたいなガキに俺らがやられるとでも思うか?」


 "黒狼(ブラックウルフ)"。


 聞いたことがある。あらゆる犯罪に手を染めている犯罪集団。普通の犯罪集団よりも強力な力を持つ異能力者が多く所属しているから余計にタチが悪い集団だ。


 少し面倒な戦いにはなりそうだが俺は負ける気はしない。


 と言うよりも俺は俺の力に絶対的な自信がある。

 

「悪いが俺はお前らみたいな犯罪集団に負ける想像はつかない」


 リーダー格の男は俺の言葉が頭にきたのか先ほどまでの笑みはなくなり視線だけで人を殺せるのではないかと思えるほどの殺気をぶつけてきた。


 今までにどれだけの人を殺したらここまでの殺気を出せるようになるのか想像がつかない。


「舐めてんじゃねえぞ、クソガキ。お喋りは終わりだ。お前ら、やれ。手加減はなしだ」


 リーダー格の男の指示で手下どもが一気に襲いかかってくる。


「おらぁ!」


 左右前後、あらゆる方向から武器を手にした有象無象が殴りかかってくる。


 それらを空中に跳ぶ形で回避すると今度は遠距離の異能力者が攻撃を仕掛けてくる。


炎鳥(フレイムバード)!」


風刃(ふうじん)!」


水槍(ウォーターランス)!」


 "黒狼"に所属している異能力者なだけあり、跳躍している俺に向かって正確無比な攻撃を放ってくる。


 だが無駄だ。俺に遠距離攻撃は効かない。


 俺は攻撃してくる方向に向かい手をかざし一言だけ呟く。


異能破壊(アビリティキャンセル)


 異能力者の放った攻撃が最初からそこに無かったかのように消え失せる。


 異能を使った奴らは何が起きたのか分からなかったのか戸惑いの表情を浮かべている。

 

 異能破壊(アビリティキャンセル)


 これは異能の効果を破壊する技だ。俺にこの技がある限り遠距離からの攻撃は全く効かないと言ってもいい。


 俺は異能の力はあまり使わないと決めている。


 しかしこの技だけは相手に危害を加える技ではない為自衛のために使うことにしている。


 俺は地面に着地して辺りを見回して有象無象の多さに嫌気がさしてくる。


「ふぅ・・・・・・」

 

 一息ついてから俺は眼前に広がる有象無象の群れに飛び込む。


 四方八方から来る攻撃。それを交わしながら冷静に対処していく。


 前方からナイフが飛んで来たら刃先を人差し指と中指の二本で掴みお返ししてやる。


 後方から斬りかかられたら最小限の動作で回避し、勢いのついた回し蹴りをお見舞いしてやる。


 時節来る遠距離からの攻撃も異能破壊(アビリティキャンセル)を使い無効化してから俺がその場所まで跳躍して近づき強烈な拳を腹にいれてやる。


 そんなこんなで10分ほど過ぎると周りにはチンピラどもがそこら中に倒れている状態になった。


 そこまで大きい怪我をする事なくやれたのは上出来だったな。せいぜい至る所にかすり傷がある程度だ。


 あと残っている敵は黒狼(ブラックウルフ)のリーダー格と思われる男と女の子を攫った4人組だけだ。


 俺は"黒狼(ブラックウルフ)"のリーダー格と思われる男の方を見る。


 奴は声を堪えるように笑っていた。


「てめぇ、思ったよりやるようだな?ただ死ににきた馬鹿かと思ったがそうじゃねえみたいだ。石山組、てめぇらの番だ。こいつをぶっ殺してやれ」


 奴がそういうと女の子を攫った4人組が俺を取り囲む形で近づいてきた。


「コイツらはよぉ、"黒狼(ブラックウルフ)"の中でも強い奴らだ。さっきまでの雑魚どもと同じだと思ったら痛い目に遭うぞ。中でも石山は"黒狼(ブラックウルフ)"で俺に次ぐ実力者だからなぁ?」


 俺は息を整えながら正面の石山と呼ばれた人間を観察する。女の子を誘拐する際に周りから兄貴と呼ばれていた男だ。


 背が高く大柄で坊主頭で強面、その上顔の至る所にピアスがしてありまさに裏の世界の人間と言った感じだ。


 石山がゆっくりと近づいてきて拳を振り降ろす。


 ドゴォォォォォォン。


 咄嗟に後ろに避けた俺は攻撃を避ける事ができたが、さっきまで俺の立っていた地面は大きく凹んでいた。


 威力はおそらく同級生の赤月と比べても圧倒的に石山の方が上だろう。コイツの攻撃は一撃喰らうだけでも無事に済みそうではない。


「ちっ、避けられたか」


 石山は舌打ちをしながら俺を睨みつけてくる。


 俺が石山に気を取られてるうちに周りの三人が動き出した。面倒なので子分A、B、Cと名付けよう。


「おらぁ!!」


 子分Aが鉄パイプで殴り掛かってくる。


 俺がそれを横に跳んで回避すると続け様に子分Bが炎を拳に宿して攻撃してきた。


 おそらく玲音と似たような異能なんだろう。


 今は制服を着ているから炎によって焼けてしまう事は避けたい。


 実は俺はこの一着しか制服を持っていないのだ。


 大袈裟に俺は後ろに倒れて手をつき、ブリッジの体勢をとり、真上を子分Bの拳が通り過ぎるのを見届けてから腹に両足で思いっきり蹴りを入れてその勢いで俺は立ち上がる。


 まずは一人。


 次に子分Aと子分Cが同時に攻撃を仕掛けてくる。


 まず子分Aの鉄パイプの先を掴み引っ張ってからAの腹に掌底を叩き込む。


 次に子分Cが背後から刀で斬り掛かってくるが、それを紙一重で避けてから横腹に回し蹴りを入れてやる。


 子分Aも子分Cもこれで再起不能だろう。


 次は石山とかいう男だ。


「俺の初撃を躱したこともそうだが、弟分たちがやられるとはてめぇなかなかやるな。だが俺を甘く見てもらっちゃ困るぜ。これでも元B級冒険者だからな」


 B級冒険者、か。


 ダンジョン探索を生業にしている冒険者という職業。これにはGからSまでの級が存在している。


 冒険者だけで食っていくにはE級あればいいとされる。


 一部の才能を持った人間ならDやC級に達するのは容易だろう。しかしその上、つまりB級以上とC級には大きな差がある。


 B級の人間は天才の中の天才と言われる存在だ。ダンジョンにいる魔物の中でもそれなりの大物を倒さない限りなる事が不可能だ。


 石山が元B級冒険者だというのが事実なら油断してはいけない相手だ。


 そして石山より強いと言われるリーダー格の男、あいつは推定A級かもしれない。


 A級は本当に一部の人間にしかなる事ができない級だ。もしあの男がA級だったとしたなら普通は逃げた方がいいのかもしれない。


 普通の人間であればA級と同等に戦う事など不可能だ。まだB級やC級の相手なら戦い方次第で勝つ事も可能だろう。だがA級はそんな事が関係ないくらいに圧倒的な力を個で有している。まさに敵対したら絶望というものだ。


 ここまでの有象無象たちとは違い気を引き締めて戦わないと俺の命の危険にも繋がる。


 俺は一息ついてから石山と正面から向き合い、拳を構えるのだった。

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