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ヤンデレ妖狐お姉ちゃんとぼく  作者: いぬごりら曹長
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ヒスイの学園生活

私立光明学園


地方都市某県の中心部にあり、小中高大まである私立学園である。

小学校からエスカレーターで大学まで行くこともできるうえに、学費も高くなく、また奨学金制度等も充実していることから近辺でも大変人気がある。一方で巨大なキャンパス・設備を備えており、多くの学生を収容できるキャパシティも備えており、いわゆるマンモス学校だった。


多くの学生がいることから、学生の雰囲気・特性も多岐多様性に渡り、勉学で好成績を残すもの、スポーツで全国に名を轟かせる者、芸術の世界で名を残す者等、幅広い分野に卒業生を輩出している。


一文字ヒスイはそこの中等部に通っていた。

この春から丁度2年生である。

うららかな春の日差しに、心も踊っていた。


だが、少し悩みもあった。

「お、お姉ちゃん・・・、僕、もう中二だから恥ずかしいよ・・・。

一人で歩けるよ。」

「ひーちゃん、外は危険が沢山あるよ。

だから校舎まで手をつないであげる。」

「うぅ・・・。」

姉の存在であった。

優しく賢い姉。

二歳年上の彼女を、ヒスイは大変尊敬してやまないが、まるで子供扱いであり、思春期の彼には照れ臭くてたまらなかった。

先ほど通り過ぎた同級生の女子の視線が痛い。

姉のヒスイの大変な美貌もそれに拍車をかけている。



物静かな雰囲気で、表情に乏しいが、誰もが振り向くような美貌。

ふとした笑顔は同性でもときめくだろう。

そして豊かな胸の双丘をはじめとした抜群のプロポーション。

さらには成績優秀。

スポーツも万能。

まさに誰もがうらやむ存在だった。



「ひーちゃん、何かあったらお姉ちゃんの高等部に来てね。」

「だ、大丈夫だよ!心配しすぎだよ・・・。」

「じゃあ、昼休みにいつものとこ来てね。」

「う、うん・・・。」


姉のことは大好きだが、年頃になった姉弟である。

さすがに適度な距離感とはいえないのではないだろうか。

それも二人は半妖であるという共有の特性を持つからなのだろうか。

自分がしっかりしていないから、体質のこともあり姉の手から離れられないのだろうか。

としたら、自分は尊敬する姉の重荷になっていないだろうか・・・。

ヒスイ少年の悩みは尽きなかった。

ほう・・・、と小さくため息をつく。

少女のような可愛らしい、あどけない外見の彼のその様子は、あたかももの憂げな天使のようだった。

姉のコハクがその場にいれば、また思わずヒスイをぎゅーっと抱きしめ、もうひとやり取りがあったであろう。



--------------------------------------------------------------------------------

「おはよう!」

にこにこした朗らかな笑顔でヒスイは教室に入室する。

あいさつは大切だ。

しかし、事務的に返してくれる一部のクラスメイトを除き、あまり返事は帰ってこない。

代わりに一部の好奇の目線や女子のひそひそ話が聞こえる。


「あの子か、噂の。」

「お姉さんと手つないでるの見ちゃったよ、小学生みたいよね。」

「すごい甘えん坊なんだろうね。」


「あいつか、糞美人の姉といちゃついてるの見せてくれてるやつって、いっちょもんだろうか。」

「やめとけよ!あいつに手を出すと不幸なことが起きるんだぜ。去年からかったやつまだ入院してんだ。」

「呪いだよ、呪い」

「遠巻きから眺めるのは面白いけど、かかわらん方がいいぞ。」

「呪いの子ってもっぱらの噂だぜ。」


嫌でも聞こえる噂話に、ヒスイはもう一度ため息をついた。

去年も姉のことでからかう同級生がいた。じっと我慢してたヒスイだったが、翌朝その同級生は町の不良達に集団リンチされ大けがを負うことになった。

そうしたことが一件ならまだしも、三件も発生した。クラスメイトはみな不気味がるようになり、ヒスイを表立ってからかうものはいなくなった・・・。

代わりに完全にクラスメイト達から距離をとられてしまったのも事実だった。

(なお、当時からかったクラスメイトが大けがをするたび、姉の機嫌が、まるでストレス発散できたかのような雰囲気であり、ヒスイに一抹の不安を抱かせていた。)



(今年こそ、友達沢山作りたいけど、前途多難だな・・・。)

でも悩んでも仕方ない。

明るく毎日をがんばろう。

クラスから浮いているが、あまり悩みすぎない。

ヒスイの屈託のない朗らかさ・愛嬌は天性のものであった。



「あ、滝沢くん。今年もクラス一緒だね。よろしく!」

「ん、おう。」

ヒスイは唯一友人といえる存在である級友の滝沢に声をかけた。

彼もまた色々あり、教室で浮いている存在であった。

浮いているもの同士ということでヒスイは積極的に彼に話しかけていた。

一方の滝沢は口数の少ない男である。

滝沢がどう思っているかは知らないが、ヒスイは一方的に友人と思っていた。

片思いであってもいい、それでも大切な友人だ、とヒスイは思っていた。





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