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ヤンデレ妖狐お姉ちゃんとぼく  作者: いぬごりら曹長
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山中のポータル

ある山中。

桜がふぶいている。

先月までは今年度最低気温を記録したことも信じがたい。

すっかり春になり、皆その陽気に眠くなる季節である。


「こーーーーーーーーーーーん!!!」


狐耳と狐の尾を生やした少年、一文字ヒスイは山の中をご機嫌で駆け回っていた。

姉に半妖の力を与えられて以来、妖狐の力を制御するよう修行を重ねてきた。

狐耳や尾を一時的に隠し、外見はふつうの人間へ変身する。

そうした生活を送っているが、これが中々どうして疲れるものだ。


この中々人の入ってこない山の中で、己の獣を開放して思い切り駆け回る。

人間のときの姿と異なり、野生の生命力が体中に満ちて実に気持がよい。

これはヒスイにとって最高の時間の一つであった。



------------------------------------------------------------------------

「はー、楽しかった、ちょっと疲れたな。

 休憩しよ。」

どれだけの時間がたったか、ヒスイも満足し木陰で休憩をとることにした。

「そろそろ帰らないと、お姉ちゃんに怒られちゃうかも・・・。」

心配性の姉のコハクのことを思う。

ここは現在の二人の住処からは幾分離れたところにある。

山の麓まではわざわざ一時間電車に乗ってやってきたのである。

狐獣人であるという、姉を除く他人には教えることのない秘密を抱えたヒスイにとって

毎週末のこの遠出は密かな大冒険であった。

姉にも秘密であるからして、帰りが遅くなるようなことがあればたちまち詳細を調べ上げられ、

挙句には禁止されかねない。


それは困る!

ヒスイは身震いした。


山を下山していた最中である。

いつものルートであるはずなのに、ヒスイは違和感を覚えた。

少し脇道へ寄り道する。

そこには、山の傾斜に転がる岩々が重なって、小さな洞穴のような空洞ができていた。

「こんなところあったんだ・・・。」

ヒスイは空洞の奥をみる。

岩同士の隙間かと思ったが、意外と奥は深いようだ。

もしかして熊の巣か何かであろうか。

「・・・」

少し思案したが・・・。

「ちょっとだけ、いいよね・・・!」

冒険心が勝った・・・!


「すごい・・・!鍾乳洞みたいだ・・・。」

さらに進むと、ヒスイは洞窟の奥に、大きな岩を見つけた。

変わっているのは、こちらを向いているその表面は完全な面になっておりそして凹凸が

まったくない。

まさに鏡だった。

「これって、自然にできたものなのかな?」

ヒスイはそっとその表面に触れてみた。

とても冷たく、滑らかだ。

瞬間、鏡面が鮮やかに輝きだした!!

そして、信じがたいことに、鏡面はまるで水面のように、それも水滴が落とされた水面のように球面波を起こし揺れた。


「うわ!?」

ヒスイは思わず手を離し、あとざすりする。

すると鏡面は何事もなかったかのように元に戻った。

「これって、何か霊的・魔力的なものだったんだ・・・!」

ヒスイも退魔士のはしくれである。一瞬であるが大きな霊力を感じた。

身構えたが、その後、特に変化はない。

このような場合、深入りはしないほうが良さそうだ。


そう判断し、山を後にすることにした。

「はぁ、霊脈を整えるための結界か何かだったのかな、

 好奇心で触らなければよかった・・・。」


反省しながら、帰宅した。




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