父・伝説の極道。娘・17才伝説の極道
『殺したんど!!消えんかい!』
『ひいぃぃ!ごめんなさいぃぃ!』
またダメか。何度男の子を家に連れてきてもお父さんに怒鳴られるとみんなこうなっちゃう。
あの子ももう二度と学校で話しかけてくれないだろうな。
『千秋ぃ。おまんの恋人はワシより強い奴以外認めんど!』
『……パパぁ』
『俺が現役でいる内は組長や!パパなんて呼んだらアカン!』
『……はぁい。組長』
いるかなぁ?パパ……じゃなくて組長より強い高校生なんて。『人は丸くなる』と言うがパパは何年先も変わらない気がする。現役を引退する気配もない。私の青春は絶望的だ。
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『あかん!あかん!あかんど!そげなガキ!ワシは認めん!』
「お願い!組長!本気なの!」
「組長さん。私は本気です!どうか私たちの交際を認めてください!」
凄いよ佐山さん。組長相手に一歩も引かない!この人なら組長に勝てるかも!?
「まだ高校生のクソガキが!自分の立場分かっとんのかぁ!?ワシに逆らうんかボケぇ!」
「お願いします!」
頑張れ頑張れ佐山さん!私たち。結婚を前提に付き合ってるんだよね?ここで組長に負けたら結婚なんて出来ないよ!
「アカンちゅうたらアカンのや!」
「……仕方ありませんね」
「なんやぁ!?」
佐山さんは制服の上着を脱いでファイティングポーズで構えた。佐山さん!?やる気なの?組長と!?
組長も上半身裸になって両手を拡げて構えた。
背中に刻まれた龍の入れ墨が鈍く光る。ひえぇ私が見ても怖いよぉ。
二人のバチバチの殴り合いが始まった。どっちを応援すればいいのか分からなくなってきた!佐山さんにも負けてほしくないけど組長が喧嘩に負ける所も見たくないよ!
……勝負は僅差だった。お互いあと一発で倒れるほどのダメージからのパンチの相討ち。組長が勝った。組長の勝因は『経験の差』って奴かな……。
「……高坊のくせにやるやんけ。誰か!こいつを病院に運んだらんかい!」
組長は上半身裸のまま、あぐらをかいて一升瓶の日本酒を一気のみした。まさに『伝説を継ぐ者』
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「ねぇ千秋。いいじゃん。佐山さんとの結婚を認めてよぉ」
「千秋ちゃう!組長と呼ばんかい!」
ブレザーの制服を着たおっさん高校生。これが今のパパだ。一年前に『高校に受かった。ワシは高校生になる』とパパが言った時は組中が大騒ぎになったがとりあえず私が二代目となる事で収まった。
なんか疲れた。久しぶりに組長から娘モードに戻ろうっと。
「あのさー。パパ。中卒がずっとコンプレックスだったのは分かる。高校生になりたかったのも分かる。けど女子高生と結婚しようとするのは違くない?私とタメだよ?」
「ワシ寂しいんやもぉん。ずっと一人身なんやもぉん」
青春と恋は人をここまで変えるのかしら?伝説の極道と云われたパパはもういないのね。
あー。酒でも飲まないとやってらんない。私は歯で新しい日本酒の蓋を開けた。
「千秋ちゃん。未成年やぁん。お酒はあかんよぉ」
「誰のせいだと思ってんのよ?酒も飲めない極道は舐められるのよ」
パパがいつも飲んでいたのは一升瓶に入れた水だったと知った時はショックだったなぁ。
「あと入れ墨も迫力ありすぎん?ワシ。ビビってもうたよぉ」
「それも誰のせいだと思ってんのよ!?」
「ひっ!怒らんといてぇ」
入れ墨が無きゃ舐められると思って気合いをいれて龍の墨を入れたのにパパの入れ墨がタトゥーシールだった私の気持ちが分かるの?
あー腹立つ。私は日本酒を頭から被った。
「何しとん?」
「消毒よ!あー!クソ痛ぇや!」
「……男前やな。そろそろ服着ぃ?」
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ビルの屋上に私たちはいた。ボーイフレンドの強くんとその娘であり極道の千秋。私は上半身裸になった。
「佐山さん!?それは!?」
ごめんね強くん。驚いたよね?これは私なりの『決意表明』なの。
「……龍か」
まだ色の入れてない龍の入れ墨。ここであなたを倒して私は本物の『龍』になる!
「おもろいやんけ」
組長も上半身裸になった。正面からは見えないが龍の入れ墨が光っているのだろう。
「かかってこぉい!」
「うおおおぉ!」
VS『竜童組二代目組長竜童千秋』