第4話 魔法ってなに
僕は日常的に読んでいる本によって語学や魔法を学んだ。
最初は執事の人だったり、母さんに読み方を教わったのだけど、やってみれば簡単だった。
これはシーリア文字と言われる人族共通の言語らしいのだけど、英語より覚えるのは楽だった。
日本語的に例えるならば、基本ひらがなが並んでいて、ほんの少しだけ漢字があるくらいの感覚だ。
覚えてしまえば、これで二ヶ国語をマスターしたぞと心の中で調子に乗る自分がいた。
算術だって簡単だ。元の世界と文字以外はあまり変わらないし、日常生活で使うものだけ覚えておけば困る事もない。
魔法に関しては、たぶん姉さんほどは学んでいないだろう。だってあっちは実践的に【賢者】の父さんに学んでいるのだから。
魔法適正がないと言われたけど、興味本位で少しやってみた。
当然の如く何も起きなかったのだが――魔法については理解した。
第一に、魔法とは現象。
魔法は、自身で指定した属性、魔法で作成した魔法式、に自身の魔力を注ぐことで発動する現象のことを言う。
ただ、これには諸説あり、この説を否定する者も少なくない。
というのも、無詠唱で魔法を使う者がいて、その者達は魔法式の構築を省略している場合が多いからだ。
じゃあどうやって属性や魔法の指定をしているのか、そこが分からないらしい。
第二に、魔法には属性がある。
火、水、自然、土、雷、氷、光、闇、無のこれらの属性が魔法を形作っている。
それぞれに適正があり、適正がない者はほとんど初級魔法くらいしか使えない。適正なしで中級魔法以上を発現させられる者は、それほど努力したということだ。
ちなみに、無属性魔法に関しては適正という概念から逸脱している。
無属性魔法にのみ、誰が使えるかは運であるという理論がある。
あの無属性魔法は使えるが、別の無属性魔法は使えないなんてのはよくある話で――基本的に無属性魔法を使える者自体が少ない。
第三に、魔法にはレベルがある。
先程も出たとおり基本的に魔法は初級、中級、上級と三段階に分かれている。
難易度が高くなるほど比例して威力や範囲、速度、消費魔力などが高くなるといった具合だ。
また、この三段階に振り分けられない魔法は二つある。
一つは、無属性魔法だ。無属性魔法には、前で述べた通り使える者自体が少なく、一意性のあるものしかないと言われているので、この三段階には当てはまらない。
二つ目は、オリジナル魔法と呼ばれる魔法だ。自作で作った魔法のことだ。
ちなみに自作の魔法というだけなら誰でも作れるとされている。
しかし、それは難易度や威力に制限を設けれなければの話。
初級のファイア・ショットという炎属性魔法の魔法式を少し弄ってファイア・フラワーという別の魔法に作り変えるのは簡単。
これは敵を想定した攻撃魔法であるファイア・ショットを、誰かに見せる為を想定した花火のように改良しただけだ。
その魔法式をイメージして魔力を流す間に挟めば発動される。これでオリジナル魔法の完成だ。
しかし、既存の魔法式を改良して魔法として発動させても威力自体は変わらないし、逆に魔力効率を悪くする要因になる。
かといって、ゼロから魔法式を組み立てるのは至難の業だ。これには度重なる研究と根気がいる。
第四に、魔法を使用にするにあたって詠唱段階が存在する。
誰しも最初は詠唱という初心者コースを通る。
詠唱は、魔法を制御させるのに一番効率的なもので、詠唱を唱えることで魔法を発動させるのに余分な魔力や魔力回路を排除する。つまりは、魔力が通る道を綺麗にして通りやすくさせるようなものだろう。
しかし、これは初心者がやること。
だいたい魔法を学ぶ学園的に言えば、一年生で詠唱はしなくなる。
姉さんももう詠唱は必要としていない。
では、初心者から上となったらどうやって魔法を発動させるのか。
その一つは、魔力制御具というものを使うというのがある。姉さんはこの段階。
魔力制御具は、自身の魔力を制御させるのに使われ、詠唱でやることの半分以上を道具にやってもらい、残りを自分がやるというもの。
自分がやる事になるのは、属性や魔法の指定と魔力を流すことくらいだ。
例えば、ファイア・ショットが使いたい場合、それを叫んで魔力を流せばいいだけだ。
これによって詠唱より素早く魔法という現象を発現するに至る。
ちなみに、魔法制御具には、杖やナックル、剣など色んな形の物がある。
そしてもう一つ、その上の段階では詠唱も魔法制御具も無しで魔法を発動させることができる。
これが一般的であり、基本的に傍から見たら道具を使っているのと同じように見える。同じく外側からは魔法指定しかしてないように見えるからだ。
これの利点となりえるのは、魔法発動までの速さだ。
熟練度や慣れによるが、魔法発動までの魔力操作の仕方しだいで魔法発動のタイミングが遅かったり速かったりする。
これによって道具を使うより早く魔法を発動できる。
ただ、魔力制御がおぼつかない者は、いつまで経っても道具を持ち歩くはめになる。
そして、これが極まった者だけが無詠唱という境地に達することができる。
無詠唱は何の宣言もいらない。属性、魔法指定すべてを自身の体内にあるとされる魔力回路だけで行うらしい為、発動タイミングやいつ使用したかも気付かれにくくなる。
らしいというのは、未だ無詠唱に関しては謎だからだろう。
もちろん、これができる者は限られる。
しかし、僕が知っている人が一人いる。そう、父さんだ。
父さんはそれができ、賢者と呼ばれる要因の一つとなっているのだろう。
やはり父さんは凄い。
第五に、魔法は詠唱段階だけではなく、魔法陣を使用して使う場合がある。
魔法式が複雑なもの、魔力効率が悪いものと色々あるが、一般的な魔法でいえば召喚魔法がこれにあたる。
召喚魔法は、魔法式が複雑で魔法陣を使って発動するしかない。
他にも、無属性魔法には魔力効率が悪かったり、魔法式が複雑なものが多いらしく、魔法陣を使うことがあるらしい。
しかし、魔法陣は一から自分で書くことがほとんどな為に速度が圧倒的に遅い。
一番簡単なものでも、僕なら5分以上はかかりそうである。
通常の詠唱魔法なら初心者でも30秒も掛からないらしいし、これと比べれば遅すぎる。実践向けではない。
ただ、魔法陣自体を自動生成する詠唱魔法もあるらしく、それと組み合わせればかなり短縮できる。
しかし、その詠唱魔法ができる者はこの世界で父さんしかいないと言われている。
つくづく凄いよ。
まぁ、基本的にはこんな所かな。
それで思ったのは――父さんがとても凄いことをしているってことと、僕の異能がゲームで言うチートだってこと。
無属性魔法をこれだけ使える人はどこを探してもいないようだし、
なにより、魔力の減少というデメリットがない状態でいくつも多重に使えるという点だ。
まず、魔法の多重詠唱は三つが限度とされている。
また、これを成したのも過去の偉大な魔法師と僕の父さんの二人だけ。
しかし、既に僕も三つも一度に使っている。明らかに異常であり、父さんと同等な部分があってゾッとしてしまう。
更には、魔力という制限がない為にいつまでも使っていられそうなのである。これが本当なら、ヤバすぎる。
それだけじゃない。
どの本にもステータスバーによって自身の能力が分かるなんてことが記載されていなかった。
自身の能力を知ることができるとすれば、とある魔道具でできるとあるが、それも高価で一国で一つあるかないかというところだそうで、とても希少性が高い。
それなしで日頃から確認できる僕は、更に異常者であることになる。
これを知って、僕は異能の事をより誰にも言わなくて良かったと思った。
誰でもこんなことを知ったら魔法の研究機関に持っていこうとするだろう。そんな実験材料みたいなのにさせられるのは絶対に嫌だ。
僕はもうあの異能を使わないと胸に刻んだんだ。
あんなものが無くたって、僕は凄い人になる。その為にこれからも勉強をするんだ。