プロローグ01
僕は、17歳のただの高校生。
身長が150センチジャストと低めで細身のなんてことのない男児。ちゃんと高校生である。
自分でも解っている。この歳で女子の平均身長より低くて中学生に間違われるのは、コンプレックスものだ。
この梅宮楓という名前も女の子みたいと言われてからは好きではなくなった。
彼女? いたことないに決まってるでしょ。
僕は、女の子は苦手だ。だって何考えてるか分からないし、正直怖いくらいだ。
小学生の時に女の子と喧嘩してボコボコにされて以来、怖くて近寄り難くなってしまった。
なんで喧嘩したのか、原因はもうあまり覚えていない。
ボコボコにされた後の蔑むような目で見られた光景が印象強く、他のことなんか思い出せないのだ。
ただ、これだけは断言出来る。
僕は何もしていない。
昔から自分で自覚するほどの小心者である僕が喧嘩するような原因を作るなんてありはしないのだ。
だから偶に学校の行事とかで話しかけてくる子とかがいるけど、僕は怖くなって引いてしまう。
でも、ゲームや漫画とかは別。
キャラクターは僕を裏切らないし、僕を見ていない。恋愛溢れるものを見ても嫌悪感は無いし、むしろ早く次の展開が気になる程だ。
もちろん、恋愛もの以外もよく見るんだけどね。
まぁ、現実に漫画のようなことを夢見てる訳じゃないけど。ただ現実に期待してないだけ。
なぜこんな事を曇った空の下、肌寒い風に煽られる学校からの帰宅中に考えているか。
それはさっき、このすぐ左隣にいる僕より15センチは身長が高く、髪を茶色に染めてチャラい感じを出してる末堂雄介君が彼女を作らないのか、などと口走ったからだ。
彼等――もう一人の友達の一番右側にいる眼鏡を掛けて真面目そうな真島連君もなのだけど、彼女が欲しいらしい。
分からなくはない、とだけ言っておこう。
まさに今は恋愛一色。
冬間近の人恋しくなる時期で周りの人達がどんどん彼女を作ったりして、度々話題に出るんで触発されたとか、そんなところだろう。
理解はするけど、
去年も同じ事なかったっけ? 何これデジャヴ? どうせ半分以上はそのうち別れて、また来年同じ時期が来るんでしょ。
っていう感じで毎年の恒例行事なのではないかと疑っているくらい僕にとっては客観的な意見しか出てこない。
僕にとっては他人は灰色。どうでもいいんだ。
例え友達ったって彼女ができようが、できまいが、どちらでも構わない。
態度も変えるつもりもないし、それで自分も、なんても思わない。
高校生にして既に大人になったような気になっていると言われても反論しない。
そういう年頃なのかもしれないし、何かを求める欲求が無いのも確かだ。
まぁでも、別の世界だったらもう少し違う性格に育ったのかなとか、中二病みたいな考えもあるんだけど。
それだけ現実に期待していない証拠なんだろうね。
そういえば朝方、雄介君と真島君が肝試ししに行こうとか言ってたっけ。
苦手……いや、嫌い。大嫌いなんだよなぁ、ホラー。
僕の嫌いなもの第二位にランキングされているのが、ホラー物なのである。
だって、怖いんだ!
どうせ無理矢理連れて行こうとするから断れないんだろうけど。
前もホラー映画に無理矢理つれて行かされたし。
あの時は悲惨な目にあった。
最初は断固として断るって断言したんだけど、じゃあってことで雄介君が別の映画を見るからって映画館に連れて行かされて、気付いたらホラー物のチケット買ってるし。
終始目を瞑って耳も塞ぎたいんだけど、両脇から雄介君と真島君に抑えられて耳地獄だった。
怖い音が耳からだけ全部聞こえてきて結局、
身震い、吐き気、悶絶、泣き、鳥肌、気絶。
まさか音だけで気絶するとは僕自身も思わなかったけど、漏らさなかったのが負傷中の幸いだった。
それくらい僕にとって怖いのはダメなんだ、絶対!
いつ行くのかは知らないけど、次は絶対に回避したい。
何か言い訳とか一応考えておいた方がいいのかな。
もしかしたら逃げられるかもしれないからね。
「着いたぜ」
「へっ?」
気づいたら目の前に廃ビルがポツンと一軒佇んでいた。
両隣に建物は無く、そのせいかここに一つだけあるビルからは異様な雰囲気を感じた。
曇りで気分が落ち込んでいるせいか、僕がネガティブ思考だからか、もしかしたら僕に霊感があるのか、ここへは絶対に入ってはいけないと全身の震えが警告を出している。
てか、今日!!?
「どどど、どうして…………」
何故こんな所に僕を連れて来たのか、震える唇を動かして問いただそうとすると、雄介君が通りの先へ向かって手を振った。
「おーい、こっちこっち!」
ロボットのようなかくかくした動きで雄介君の後ろから手を振る方向を覗き見る。
すると、女子高生と思わしき人影3つがこちらへ向かって手を振り近付いてきていた。
僕の苦手なもののオンパレードになっている!!?
心の中で落胆し、叫ぶ。
朝までに予兆はあった。そしてさっきの彼女うんぬんは、コレを僕に宛てがう為に……。
精神が遠のくような、そんな感覚に陥っているうちに自己紹介まがいの事が終わっていた。
「じゃあ行くぞ」
雄介君が平然とそう言って先頭を歩き、廃ビルの駐車場を横断し、敷地内に足を踏み入れてしまった。
「やめようよ!」
咄嗟に雄介君の手を引っ張り、行くのを止めさせようとする。
「何? 男なのに怖い系?」
「えー、わたしも怖いよ」
「可愛くていいじゃん」
「あーしは普通に行きたいんだけど」
「それはウチもだけど」
顔も合わせられず、僕にとってのモブでしかない女子達が何か言っているが、そんなのはどうでもよかった。
「ここはダメだって!」
僕の必死の説得も意味をなさず、雄介君はただ、
「女子が見てるぞ。お前もかっこ悪いところは見られたくないだろ」
そう言って僕の震える手を振りほどく。
「そういえば、なんで肝試しって話になったんだっけ?」
「あ? あー、なんか朝学校いく前にピーンとな。
めちゃくちゃ行きたくなって、それなら今日でしょって感じ」
「お前、いつもそれだよな」
「へへーん、まあな」
真島君は知っていたようで雄介君といつものように話している。
それだけでこの悪寒を感じるのが自分だけなんだと悟った。
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