６：取材されちゃった！
ある日のこと。俺は超絶カッコいい表情でスポーツカーを走らせていた。
普段だったらアニソン流しながら『飛ばすぜブンブンッ！』とかアホなこと言ってるところだけど、今日は別だ。
なにせ俺の隣には、カメラを回したインタビュワーさんが座ってるんだからな！
「それで白木警部、今の日本の現状についてどう思われていますか？」
マイクを向けながら問いかけてくるインタビュワーさん。
そう、ついに俺はテレビデビューを果たすことになったのである！
たしか『密着・日本警察２２時』とかいう番組だったかな？ そこが俺を特集してくれるんだとか。
いや～俺も出世したもんだ。
最初は『俺みたいな人間轢きまくってる奴テレビに映しちゃダメーッ！』って思ってたけど、いざカメラを向けられるとめっちゃテンション上がって来るぜッ！
俺は超絶カッコイイ表情で前を向いたまま、超絶カッコいい声を出して応える。
「――愛していますよ、俺はこの国を。多くの人たちが笑顔で暮らし、大変な時も支えあって生きている。そんな人々のためにも、俺はこの国を守っていくつもりです」
「い、意外ですね……っ！ てっきりけしからんと一喝するかと……」
「フッ、もちろん議員の汚職などについてはあってはならない事態だと思っていますよ。民衆のために使われる税金で悪事を働くなど、もってのほかだ。
だがしかし――そうした輩は、俺が全て一掃する。俺はこの国を、そして人々を愛しているからこそ、全ての悪を駆逐すると誓ったのです」
「カッ、カッケ～～～～～～～ッ！ い、今のシーンは絶対にテレビで流しておきますッ！ 視聴率増加間違いなしッ！」
大興奮するインタビュワーに俺はやれやれと肩をすくめる。
“まったく、喜ばせるために言ったわけではないんだが”――というポーズをしつつサービスする気満々で言ったんだよなぁこれがッ！！！
ウフフッ、今のセリフを思いつくのに三日かかっちゃった！
運転中も考えていたせいでウッカリ人を撥ねちゃったけど、相手が指名手配犯だったおかげで助かったってばよ……！
そうして俺が、いや～あのときはビビッたな～と思い返していた時だ。
突如、インタビュワーが「あ、前っ、詰めすぎですよ前ッ！」と騒ぎ始めた。
え、前がどうした――ってあああああああああああッ！？ 前を走ってた黒い車とぶつかりそうになってるーーー！？
駄目だ、もう間に合わねぇ！
そして、ドォォオオオオーーーーーーンッという激しい音と衝撃が俺とインタビュワーを襲った！
幸い俺のスポーツカーは海外産の無駄に装甲が厚いやつだ。
へこむことで衝撃を減らす日本の車の仕組みと違い、とにかく勝つことを優先したアメリカンモデルであるため、俺たちに怪我はなかった。
……だがしかし、相手の車のほうは悲惨だ。
思いっきりケツからぶつけられたことで地面を何度もスリップし、乗っていた人たちが外に投げ出されて倒れていた。
……う、うわああああああーーーーーーーー！ やっちまったーーー！？
取材中に大事故起こしちゃったよぉ～～～～っ！
「ちょっ、白木さん何やってるんですかッ！？」
当然騒ぐインタビュワー。もうこんなの取材どころではない。
あぁ、終わったな俺の人生……流石にこれは酷すぎる。
俺は絶望に打ちひしがれながらも、とにかく被害者たちを救護するために車を降りた。
そして倒れている何人かに近づくと……って、アレ、こいつらの顔見たことあるぞ？
親戚のおじさんかな～と首を捻る俺をよそに、インタビュワーが騒ぎ始めた。
「あッ、あああああああああーーーーーーッ！？ この人、国会議員の小金 光次ですよ！ それに隣で倒れている男は、暴力団・熊尻組の組長ですよッッッ！
げ、現職の国会議員と暴力団が同じ車に乗っていたなんて、これどう見ても汚職ですやんけーーーーッ！ 白木さんっ、これをわかっての突撃だったんですね！！？ うおおおおおおおーーーーーーーー！」
“さすが『純白の執行者』ッ、視聴率爆増間違いなし！”とインタビュワーは万歳しながら叫ぶのだった。
はっ、はははは……とてもじゃないが言えるわけがない。
事故っちゃったことを思い出してたらさらに事故っちゃったなんてゴミみたいな真実、絶対に言えないよぉーーーーーー！
「――フッ、言ったでしょう？ 全ての悪は、俺が裁くと」
俺は泣きそうになっているのを堪えながら、カッコいい表情でカメラに向かって呟くのだった。
そんで後日、俺が汚職議員を車でぶっ飛ばす執行シーンは全国に流れることとなり、番組は視聴率５０％越えというとんでもない記録を作ることになったのだった……！
それ、ただの事故映像だからーーーーーー！？
・全国放送で汚職議員を裁いたことで、信者がさらに増えました……！
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