4.天智の涙って多分何か効果ある気がするんだよな…
まだ負けるわけにはいかない。
いつかその時が来るまで、異能力者が全員消滅するかそれを乗り切って僕を殺しに来るか、それまではやられるわけにはいかない。それが君との、主様との約束だから…
「まあ、一件落着したもののどうするんだ?このまま中原さんが情報持ってくるのを待つつもりか?」
麻人は真剣な眼差しで俺に問うた。そんなこと言われていも俺にはカードが少ない、記憶が麻人のようにある人もいれば恐らくない人もいるだろう。ない人はどうするのだろうか、しかし考えたって何にも解決策が浮かばない。
「よし、まずは飯食おうぜ」
俺は物事を深く考えるのが大嫌いなんだ。
そう思ってキッチンのほうを向いた瞬間、キッチンの左の小窓がバリン、と嫌な音を立てて割れた。
「は?え?」
割れたガラスの破片をまったく気にしないでそこに平然と立つ少女、ぼさぼさだが整えれば美しくなるであろう黒髪に撫子の色をした光のない瞳、そして布切れのような汚いワンピースを着ていた。僕はあまりにきれいで一瞬息をするのを忘れた。
「あなた、中野天智、間違いない?」
あまりに片言だな…
「あぁ、俺が中野天智だけども…」
俺がそう答えると女の子は光とともにナイフを出すと俺に向かって一直線に走り続けた。
「させるかよ!!!!」
そこをすかさず止める麻人、相変わらずこういうところが持てるのだろうなあと他人事のように思っていると、女の子はいらだったようにもう片方の手から拳銃を出した。
「邪魔しないで!そいつ、殺す!じゃないと、私、やられる」
麻人に向けられる拳銃、女の子の俺をやらないと消されるという言葉、つまりこの子はもしかして誰かこのゲームの参加者に命令されて能力者を殺そうとしているというわけだ。
なんだよそれ
そんなの主にやらせろよ
おまえは、君はそれでいいのか
否、否!!!
『…か、私は一歌人です。それでも、私のことを覚えていてくださいますか。』
この声は
あの子とよく似てる
助けなきゃ
『あぁ!君が誰かに忘れられそうになったら、私が探し出して君を助けて見せよう!』
約束したじゃんか
「『右近!!!』」
気づけば俺は泣いていた。泣いて女の子のことを抱きしめていた。
「そんなことするなよ、んぐっ…き、君は、君のものだろ!誰かに自分を渡そうとなんかするなよ」
「麻人だって、こんなことで向きになる必要なんかないんだ。だ、だって僕のせいで麻人が人殺しになっちゃうのは嫌だ。あ、麻人だけじゃない、き、君だってそうだ!なんで、い、命を大切にしないんだ!」
麻人は目を丸くしてびっくりしている。それもそうか、こんなこといきなり言われても困るよな。
「…なら、助けてくれる?私を、地獄から」
女の子の目には光が戻っていた。
「もちろんだ!!!だって君はもう俺の友達なんだからな!!!!!」
俺は涙を拭いて二かっと笑って見せる。女の子は丸くしたかと思うとふっと笑って
「…変わらないな。あのね、私の名前は、右京近夏。チカって呼んで。」
『探し出すって…とても嬉しいけれどどうしてそこまでしてくれるのですか??』
『右近は当たり前のことを聞くなあ、どうしてって決まってるからだろ、』
「『今日から俺/余と君/貴殿は友達だ!!』」
そう言って太陽に負けないくらい笑う君はまぶしかった。
一年たってしまいました。新シリーズを投稿したのをきっかけにまた書いてみました。実は筆をなかなか折りたくなくて迷っていたんですが、やっと投稿できました!実はずっと昔から考えてはいた話だったので…
新シリーズ、悪役令嬢からエナドリ令嬢になるために、もぜひご覧ください~!!