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stage,42 シェルティ編⑥

「それで、害獣駆除の目的地はどこなんだ?」

「ここから南東方向に王国が新たな農場を建設中なのですが、最近モンスターに襲われることが増えてしまって、工事も中断中なのです」


 この前サアルと行ったのは東の農場か。南にも拡大しようとしてるのか。


「害獣駆除っていうか、普通にモンスター討伐依頼だな、それ」

「どういったモンスターなんですか?」

「主に『カーキ・ゴーレム』ですので、そこまで手こずるモンスターではないと思います」

「カーキ・ゴーレム?」


 初めて聞く名前だ。ゴーレムってことは魔動人形系のモンスターなんだろうけども。


「別名、土人形つちにんぎょう。魔動人形ですけど、体は土でできているので簡単に崩せて倒せますよ」

「主に、ってことは別のモンスターもいるんじゃないか?」

「いるとは思いますけど……詳しくは聞いていませんでした」


 真面目にモンスターの説明をしてくれていたのに、最後にテヘッと舌を出してごまかすフルール。


「おいおい。行き当たりばったりで大丈夫なのか?」


 あまり問題に感じてなさそうなフルールにつっこむと、やっぱり眠そうなシェルティが口を開く。


「わたくしもフルールさんも四大属性魔法が使える召喚士です。どんなモンスターが出てきても攻撃属性を変えて対処できますから」

「なるほど。だからフルールに駆除依頼がきたのか」

「──でもさ、ガウル。ふたりとも回復魔法は使えないわよ。大丈夫?」


 はっ、そういえばそうだ! アスカの今さらすぎるツッコミ!

 オレは顔を引きつらせてシェルティとフルールに話しかける。


「そ、そういえば、今のオレ達って回復魔法は使えないんだな……」

「ご安心ください。ガウル様! あたしは回復効果を持った召喚魔法が使えるんですっ!」


 と、いきなり胸を張って叫ぶフルール。「お、おう……」としか反応できないオレに、フルールは詰め寄ってくる。


「もしケガをされたら、あたしがその魔法──〈アイヴィ・インジェクション〉を使って差し上げます!」

「アイヴィ? どんな魔法なんだ……?」

「傷口にとがったツタを()()()()()、その先端から回復液を流し込むという魔法です!」

「待て待て。聞いてるだけで痛いわ! つーか、回復される前に刺された瞬間にショック死するわ、そんなのっ!」


 魔法と言いながら、なんて物理的な。召喚魔法って全部こうなのか……

 恐ろしいことをにこやかに言うフルールに全力でつっこむと、彼女はオレの目の前でモジモジし始める。


「大丈夫ですよぉ。ちょっとチクッとするだけですから、一回試してみます?」

「なぜ、嬉しそうに言う。ちょっとチクッとで済む気がしないぞ。刺したいだけだろ……」


 なんか怖いフルールにドン引きしてると、シェルティがあることに気付く。


「ところで、フルールさん。そんなにガウルさんに近付いて平気なんですか?」

『あ……』


 そろってまぬけな声をもらして、今になって詰め寄られたことに気付くオレと、詰め寄ったことに気付くフルール。もちろん、オレ達の体はかつてないほど急接近していた。


「いっやぁぁっ!」

「ごふっ──」


 直後、フルールにアッパーカットされたオレは地面に倒れた。

 そうして仰向けになって曇天どんてんを見上げて改めて思う。ああ、なんて今日は天気が悪いんだ。気分も悪いけど……


「──って、こんなの理不尽だっ!」

「ご……ごめんなさい……」


 ったく、男性恐怖症だって自覚してるんだったら自分から近付かないように心がけてくれよ……

 すると、シェルティは倒れたオレには目もくれず、ポケットから何かを取り出した。


「ちなみに、わたくしはオージンさんから〈回復石かいふくせき〉をいただいているので、ご安心ください」

「なんでオレにはくれなかったのっ!? オージンの奴!」


 オレっておとしいれられてるじゃないかって思う今日この頃……

 軽く絶望しながらゆっくり起き上がるオレを、隣でいつものように笑いながら見守るアスカ。


「毎度毎度、大変ねぇ」

「アスカに笑われてるのが一番腹立つんだが」

「で、どうするの? フルールも仲間にするの?」

「は? 今、その話かよ……」


 なんで急にそんな話……。アスカはフルールも仲間に加えたいのだろうか。オレが近付かなければいいことだが、フルールのこの性格はちょっと面倒だ。


「仲間はひとりでも多い方がいいってのはわかるけど、オレの体がもたないぞ……」

「いや、フルールを仲間にするなら誰かを仲間から外さないとダメよ?」

「は……?」


 アスカが言ってることの意味がわからない。今まで仲間はどんどん増やしてきたのに、なぜ今回はそういう話になるのだろうか。


「どういうことだよ。それじゃまるで仲間に『人数制限』があるみたいじゃねぇか」

「あるみたい──じゃなくて、本当にあるのよ。一度に戦闘に参加できるのは、私を含めて『六人』までよ」

「六人? なんで六人なんだよ?」

「知らないわよ。ゲーム機の処理能力の限界とかじゃないの?」


 六人で行動することに何の処理が必要なのか。能力の限界とは!?

 アスカの言うことって、時々ホントに意味不明かつ理解不能なのはどうにかならないのか……


「って、それってまさか! 強敵相手に十人や二十人がかりで戦うってこともできないってことかよ!」

「当たり前でしょ。さっきから六人までだって言ってるじゃない。仲間に入れてないと戦いに参加できないんだから」


 言われてみれば──シューレイドの街で魔人に襲われた時も、あれだけ大勢の住人が逃げ回っていたのに、魔人のもとにたどり着いた途端、まるで消えたように誰もいなくなって、結局オレとシェルティとリゼの三人で戦う羽目はめになったが……


「嘘だろ……。そういう場合、多勢たぜい無勢ぶぜいで押し通すのが一番だってのに!」

「それじゃあ私がつまらないじゃない!」


 ……アスカがつまらないって理由にどこまで付き合わないといけないの。オレ達……


「というか、敵からしてみれば六人でも充分、多勢に無勢じゃない?」


 ぐぬぅ……何も言い返せぬ。


「ただ、仲間から外しても二度と会えなくなるわけじゃなくて、街に残って控え選手のような扱いになるみたいだから安心しなさいよ」

「随分とスポーツ感覚だな、おい……」

「とにかく、フルールを仲間にするかどうかはガウルの判断に任せたわ」

「な、なんという気まずい取捨選択をオレにゆだねるんだ……」


 オレがムダに頭を悩ませていると、小声で話すシェルティとフルールの声が聞こえた。


「ガウル様って、独り言が多くありませんか?」

「わたくし達には見えない戦女神様がおそばにいらっしゃるようです。わたくしも最初は驚きましたが、ガウルさんは普通じゃないってだけで変質者ではありませんよ」


 普通じゃない、が一番心に突き刺さるんだけど……

 もうやだ。家に引きこもりたい……






 ──面倒くさい責任ばかり押しつけられてトボトボ歩くこと十数分。オレ達は木の柵で囲われた場所に到着した。

 柵には『農場予定地』と看板が掲げられていたが所々が壊されていて、その向こうに広がる敷地もそこら中がデコボコで荒れ地にしか見えない。


「確かに荒らされてるけど、ゴーレムの姿はないみたいだが……」

「そうですね。ゴーレムの体は大きくて目立つのですが、ここには隠れる場所も見当たりませんし……」


 オレとシェルティは周囲を見回す。ここは荒れてはいるが広大な平地。背丈の低い草はたくさん生えているが、ゴーレムがいる様子はない。

 すると、地面にしゃがみ込んだフルールが、手のひらサイズの石を拾い上げた。その瞬間、石は砂になってサラサラと地面に流れ落ちた。


「フルール、それは?」

「これは……カーキ・ゴーレムの体の残骸ざんがい?」

()()ってことは、もうゴーレムは倒されてるってことか?」

「ええ。しかもまだ新しい残骸です。倒されてからそれほど時間は経っていないと思います」


 オレ達が来る前に誰かがゴーレムを倒した? しかし、今ここにオレ達以外の人影はなく、ここに来るまでの間も誰とも会っていない。


「誰が──」


 オレが口を開いた瞬間、前方から突風がオレ達に吹きつけた。その風に混ざって悪臭がオレ達を襲う。


「きゃっ……なんですか。このにおい……」

「このにおいはっ!」


 そのにおいにオレは覚えがあった。そして、もう一度周囲を見回すと、元々見えていた背丈の低い草の頭から赤い花が開いた。


「ちょっと、ガウル。あのモンスターって!」

「ああ。前にサアルと一緒に戦った未確認アンノウンモンスターだ!」


 オレの発言にシェルティとフルールも身構える。


「オージンさんの絵とそっくりです。王都の魔法石の保管庫を襲ったモンスターがどうしてこんな所に!?」


 大きさは小さい。サアルと行った農場の時とは違う。しかもただの草に擬態ぎたいしていたそれはワラワラと増えている。どうやら保管庫を襲撃した方と同じ種類のようだ。


「まさか、ゴーレムを倒したのは、あのモンスターなんでしょうか?」


 オレ達と違って、いまいち状況を把握はあくしきれていないフルールがうろたえつつも察した。

 そうしている間にも、モンスター達はツタをウネウネと動かしてこちらに向かってきている。


「たぶんそうだろう。なんでそんなことになったのかわからないけど、とにかく今は戦うぞ! みんな!」


 迫り来るモンスターの大群にオレ達は武器を構えた。

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