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stage,21 第五話④

 真っ白だった機界人が再び立ち上がる頃には真っ赤に染まっていた。あれが機界人の本気モードらしいが、ただ色が変わっただけじゃなさそうだ。

 機界人が「オオオッ……」とうなり声のような音を出すと、体中から炎があふれだした。


「な、何する気だよ……」

「広範囲火炎攻撃――〈紅焔プロミネンス〉。この部屋の広さじゃ回避は不可能じゃ!」


 奥まで百メートルはあるこの部屋ですら避けられないって、どういう攻撃だ。


「不可能って、どうすんだよ!」

「まあ、見といてみ!」


 機界人を中心に広がる炎の波が迫る中、オージンはまっすぐ前に右手を伸ばして叫ぶ。


「〈ダメージ・キャンセラー〉!」


 直後、オレ達は炎にのまれるが、焼かれるどころか熱ささえ感じなかった。

 炎の中でオレ達は自分の体を確かめながら困惑する。


「こ……これはどうなっているのだ……」

「〈ダメージ・キャンセラー〉は味方全員の受けるダメージを一定量まで遮断しゃだんする技。わしぐらいになりゃ、この程度ノーダメージじゃ」

「すごいです。鬼さ……オージンさんが敵のままだったら本当に何も通じませんでしたね」

「仲間にしといてよかったじゃろ? じゃが、のんきにしとられんで。このまま攻撃をぶつけ続ければ奴は白に戻って〈紅焔〉を使えなくなる。そうなりゃ儂が魔法で捕まえられるはずじゃ。ただし、三百秒後、つまり『五分後』には再び〈紅焔〉が来る。その前に白に戻すんじゃ!」

「五分以内にもう一度白に戻せばいいんだな。いくぜ、皆!」


 〈紅焔〉以外の攻撃パターンは変わっていないのか、再び〈霧幻ミラージュ〉で姿を消す機界人。リゼはこれまで通り、瞬間移動で攻撃をするが機界人はひるむことなく再び消えた。


「なんダ。怯みにくくなっテル……?」

「ガウル。与えるダメージも減ってるみたいよ。赤い状態だと今まで通りにはいかないようだわ」

「楽にはいかないってことか」


 リゼの攻撃も回避されはじめ、思うように攻撃が通らなくなってからも時間は刻一刻こくいっこくと進んでいく。

 すると、オージンがオレを呼び止める。


「ちょい待て。こりゃあ間に合わん……」

「間に合わんって、まだ四分はあるだろ! 皆だってまだあきらめてないのに!」

「このペースじゃ無理じゃ! DPSディーピーエスて言うてな、秒間で与えとるダメージが全然足りとらん。いけると思ったんじゃが、やっぱりあんたらのレベルは低すぎじゃ。機界人を相手にするんは早すぎたんじゃ……」

「じゃあ、さっきのダメージなんとかって技で無効化しちゃえば?」


 軽い口調でアスカはそう言うが、オージンは頭を抱える。


「アスカ、儂のステータス見えとるんじゃろ?〈ダメージ・キャンセラー〉の『再装填時間リロードタイム』は六百秒――十分じゅっぷんじゃ」

「リロードタイム?」


 オレが顔をしかめると、オージンは頭をかきむしる。


「そんなんも教わっとらんのんか! もう一度技が使えるようになる時間じゃ! アスカは説明書とか読まんのん!?」

「うん。電子説明書とかどうやって見るのかすらわかんないし。でも、雑誌は読んだわよ?」

「理解できとらんがったら意味ないわ!」


 謎単語でアスカと会話できてるオージンがすごい。内容は理解できてないけど、悪びれることなくアスカが言った一言はオージンを完全に呆れ果てさせたことは察したぞ。

 オージンよ、さあ震えるがいい。それがアスカだ!


「とにもかくにも十分後じゃどうやっても奴の〈紅焔〉が先に来る!」

「じゃあ〈紅焔〉をくらってから、さっきの全体回復魔法で回復するのは!?」

「無理じゃ。HPたいりょく的に召喚士嬢ちゃんと……()()即死する」

「おい! お前が死んだらどう頑張ったって手詰まりじゃねぇか!」


 機界人を捕縛するにはオージンの力が必要だ。なのにオージンが死んでは、もうどうしようもない。


「なんだよ、お前! さっきまであんなに強かったのに、なんで仲間になった途端に弱くなってるんだよ!」

「あー……あるある。敵だった時は無茶苦茶強いのに、仲間になったらステータス下がってるの。逆もまたしかり」

「あるあるなのかよ!」


 作為的さくいてきな何かを感じるんだが、それ……


「それもこれもあんたらが儂の〈鬼人の鋼肌(オーガ・スキン)〉を破ったせいじゃ! あのスキルはでぇれぇ強力じゃが、破られるとペナルティでステータスがぼっけぇ低下するんじゃ。それに見ての通り儂は裸じゃ。あんなんくらって生き残れりゃあせんわ!」

「オレ達のせいかよ……。じゃあ、どうしろっていうんだ!」


 オレの問いにオージンはぽつりと一言だけ言い返した。


「……覚悟決めんさい」

「か、覚悟だと?」

「儂らは負けるんじゃ。今さら言うても仕方ないことじゃろうが、あんたとアスカは『キセキの力』を使いそこのうたんじゃ」

「私達が……、力を使い損なった……?」


 アスカの声が震えている……気がした。オレだって言葉が出てこない。

 さっきからオージンは、敵に与えてるダメージや味方のHPが見えてるような言い回しだった。なんでアスカみたいな能力を持ってるのかはわからないが、適当な判断ではない。オージンにはもう未来が予測できてしまっている。


「『キセキの力』は、そりゃあ奇跡を呼べる。いいことすりゃ世界だって救える。じゃが、それは同時にやろうと思えば――いや、思わんでも、世界を滅ぼすことだってできることを知っとけ。過ぎた力は身を滅ぼす。儂はそれを言いたかっただけじゃ……」


 そこまで真剣に語ったオージンはヘラヘラと笑いだす。


「さぁて、ここで儂が死ぬればどうなるんじゃろうか? 時間が巻き戻って死なんのんじゃろうか。それとも、もう機界人は解放されたまんまになるんじゃろうか。とにかく、アスカ。次はレベル上げとかちゃんとして、しくじるなよ?」

「い、嫌よ! だって、私――」


 アスカは反論しようとした。それに気付いたオレは思わず声をあららげて割り込んだ。


「オレはあきらめてねぇ! オージンにはここであいつを捕縛してもらう!」

「何言うとんじゃ! 無理じゃ言うとろうが!」

「あいつを野放しにして街の中で〈紅焔〉を使われたらどうなる! オレは絶対にそんなことさせない! 皆を守るんだ!」

「じゃから、どうやって!」

「オレが〈ヒロイック・ディフェンダー〉でオージン達を守る。そうすれば次の〈紅焔〉までまた五分。その頃にはまた〈ダメージ・キャンセラー〉が使えるだろ? 時間は充分、勝てるはずだ」

「ちょっと待ちなさいよ!」


 オレの提案にアスカがにわかに慌てだす。理由はわかっていた。この提案には大きな問題がある。


「そんなのダメよ!〈ディフェンダー〉は皆が受けるダメージをガウル一人で引き受ける技。そんなことしたらガウルが死んじゃうわ!」

「そりゃいけんわ。お前が死ぬれば戦闘はその時点で敗北。結局は同じことじゃ!」

「オレが英雄剣を持った主人公だから……か? だったら、英雄剣は()()()持てよ、オージン」


 オレの言葉にオージンは目を丸め、泳がせる。

 そう、オージンはオレと同じ境遇にある。だったら、英雄剣だって持てるはず――オレはそう思った。


「な、何言うとるんじゃ……儂にはそんなこと……」

「目を覚ました時のお前、においじゃなくて英雄剣を見てアスカの正体に気付いたんだろ? この剣を見たことあるような様子だったからな」

「ちゃ、ちゃう! あれは……」


 オージンは何か言いたそうだが、オレはそれを無視する。もう時間がないのだ。


「この剣は、アスカみたいなプレイヤーが使えるようにしてくれる剣なんだろ。おかしいと思ったんだよ。小さな村のしがない自警団員が英雄だなんてさ。オレはお前にこの剣を届けるため()()()英雄だったんだよ。ここで主人公チェンジだ」

「ガウル……。何を言ってるのよ……」


 アスカがオレをにらむ。

 オレが言っていることは自分勝手だ。この考えが真実なのか間違いなのか、誰にもわからない無謀な賭けだ。

 絶対に無茶をしないで――初めて会った日に交わしたアスカとの約束だって破ることになる。そんなことはわかってる。だけど……


「主人公が変われば負けじゃない。方法はこれしかないんだ。まあ、これでオレも本物の英雄になれるってもんだ。英雄の最期さいごは派手に散る。これもあるあるだろ?」

「ガウルッ!」


 アスカの怒鳴り声をさえぎって機界人が再び「オオオッ」と叫ぶ。〈紅焔〉を発動するサインだ。

 その瞬間だった。オレの近くから声が響く。


「――〈ライトニング・ウェッヂ〉!」


 サアルの手から放たれた五条ごじょうの稲妻が、機界人の手足を貫いて動きを止めた。そんな光の束縛魔法を発動させたままサアルもオレを怒鳴る。


「貴様はどこまで無様ぶざまなのだ! 俺はそんな貴様を英雄だと認めてはいない。今、死ねば貴様は英雄扱いされるどころか犬死いぬじにだ。ざまぁみろだ!」


 ひどい罵声ばせいが飛んでくる。が、サアルは真剣な眼差しをオレに向けている。


「笑いものにされたくなければ、俺に英雄だと認められるまで死なぬことだ! まあ、俺は一生貴様を英雄だとは認めぬがなっ!」

「サ、サアル……」


 素直に死んじゃダメだって言ってくれよ……

 そして、リゼは瞬間移動で隣まで来るとオレに微笑みかける。


「リゼもあきらめナイ。リゼはガウルに認めてもらわないトナ。リゼはまだ妻になるにはガウルに相応ふさわしくナイ。だから、死なせないッ!」


 そう言ってリゼはフッと姿を消して、動けないままの機界人を攻撃し続ける。


「おえんわ。あんな糸みたいな束縛魔法じゃ時間稼ぎにもならん! 魔法が解けりゃあ、すぐさま〈紅焔〉を発動させてくるで!」

「それでもあきらめませんよ! 皆さんの中ではわたくしが一番ガウルさんと一緒にいるんです。ガウルさんに一番助けてもらってるんです。まだ出会ったばかりですけど、それでもわかります! 誰かを守ろうと頑張るガウルさんは、誰かに守られるべきです! 死んじゃダメなんです!」

「リゼ……シェルティも……」


 ――そう。オレは皆とまだ一緒にいたいんだ。英雄としてじゃなくオレとしてここにいたい。だから本当はこんな別れは嫌だ。何よりも、誰よりも別れたくない人がいるから。

 真っ先にあきらめようとしたオレは本当に情けない。さっき知ったばかりじゃないか。オレはもっとアスカと――


「――私はもっとガウルと一緒にいたいわ」


 アスカが言った。オレが思っていたことと全く同じことを。

 そういえば、初めてアスカと出会った日にもこういうことがあったな。ライドを死なせたくなかった時だ。なんか変な感じだったけど、今はなんか嬉しいかもな……


「ガウル! やっぱりダメよ。私達はまだこれからも一緒に旅を続けましょう。続けたいのよ! だってまだ旅は始まったばかりじゃないっ!」

「アスカ。そりゃ、オレだって……」

「お、おい! あんたら、体が光っとるぞ!」

「へ……?」


 オージンに言われて初めて気付いた。オレとアスカの体が白く輝きだしたのだ。


「あ。超必殺技、覚えたみたい」

「い、今かよ!」


 ということは、なぜか上がらないと言ってたコミュレベルが上がったのか? 結局、きっかけはなんだったんだ?


「待てよ、それ打開策になるかも! 効果は!?」

「『一回の戦闘で一度だけ、あらゆる攻撃をHP残量(いち)で耐える技』――その名も〈エンジェリック・レクイエム〉!」


 天使の鎮魂歌エンジェリック・レクイエム? すごい縁起えんぎが悪そうな技名だ。耐えられる気がしないぞ。でも、その効果は――


「それだ!〈ディフェンダー〉とそれを使えば!」

「わかったわ!」


 サアルの束縛魔法を破り、機界人は再び吠えて炎を放つ。〈紅焔〉の発動だ。

 それに合わせてオレとアスカの声が重なる。


「〈ヒロイック・ディフェンダー〉!」

「〈エンジェリック・レクイエム〉!」


 オレが張ったバリアが皆を炎から守る。その分、オレの体が焼ける。熱くて痛くて死にそうだ……

 でも、数値化された体力で一だけ残って耐えるってどういう状態になるんだ? 死ぬのと変わらない気がするが。もう痛みさえ感じないよ……?


「あ……川の向こうで……死んだ父さんと母さんが……呼んでる……ぜ」

「ガウル!? やだ、ちょっと! 意地で生きなさい!」


 んな無茶な――と思ってると、炎は収まり、オレは熱せられた金属の床にうつ伏せに倒れていた。

 今ならわかる。朝食時、フライパンで焼かれる目玉焼きとベーコンのキモチが。ソースとケチャップでお召し上がりください……


「ようやったガウル、しっかりしんさい。こいつは褒美ほうびじゃ! 単体大回復魔法――〈キュア・エンブレイス〉!」


 ソースとケチャップが――じゃなくて、優しい癒しの輝きがオレの体を包む。それがオレの意識を引き戻す。


「――ハッ! 機界人は!?」

「皆が助けてくれたガウルのために追撃してるわよ。皆の顔見てみなさいよ、とっても嬉しそうじゃない?」


 シェルティもリゼもサアルも、真剣に、でも笑顔で機界人を攻撃し続けていた。


「……オレ、よかったよ。皆を守れて」

「私もよ? ガウル」


 そして、オレの隣にはいつもの笑顔のアスカいてくれた。


「機界人の体が白に戻りかけとるな。最後は二人で決めんさい。ガウル、アスカ!」

「わかった。いくぜ、アスカ!」

「もちろんよ、ガウル!」


 オレ達は機界人の前に立ち、英雄剣を構えた。

 オレとアスカの旅はまだ終わらない。それを宣言するようにオレは叫ぶ。


「――〈ヒロイック・スラーッシュ〉!」





 ――静まりかえった部屋の床にゴトリと四角い石が落ちた。なんとか片手で拾い上げられるくらいの大きさそれを、オージンが軽々と持ち上げた。


「まさかホンマにやっちまうとはなぁ」


 オレ達の攻撃の末に色が白に戻った機界人にオージンが何か魔法をかけたと思うと、機界人はその四角い石になってしまったのだ。


「捕縛……できたのか?」

「そうじゃ。あとは封印の首飾りを作り直しゃあ、また封印できる」


 そのオージンの言葉に、ようやくオレ達は勝ったことを自覚する。それくらい呆然としていたんだ。


「ガウル、よかったわね。ホントにどうなるかと思ったわ、私」

「アスカ……。本当に勝てたんだな!」


 アスカの笑顔も勝利を告げていた。オレも自然に笑いだし、サアル達からも歓喜の声があがる。


「俺達は勝てたのだな! よしっ!」

「やればできル。いつだってそうダ!」

「随分と疲れましたけどね。本当によかったです」


 オレ達は安堵あんどの空気に包まれる。でも、これからどうするのだろうか。勝利しても問題は解決ではない。


「機界人のこともだけど、オージンはどうするんだよ?」

「それはもちろん、ウニ風呂行きだろう?」

「なしてっ!? 儂、何も悪いことしとらんじゃん!」


 サアルに激しくつっこんだあと、オージンは真顔で続ける。


「儂、あんたらについてくで?」

「いや、ついてきたってその格好はどうするんだよ」

「そうじゃな。まずは服をくれんか? そろそろカゼひきそうじゃし」

「違うだろ! 裸なのも問題だが、その角と尻尾と肌の色! 人間じゃないのにどうやってついてくるんだよ!」


 こんな奴を連れて帰ったら街中大騒ぎになってしまうだろう。しかし、オージンはヘラヘラ笑いだす。


「ああ、これな。これなら平気じゃ」


 オージンがパチンと指を鳴らすと彼の体が光に包まれ、その光が消える頃には角も尻尾もなくなり、肌の色も耳の形も人間と同じものになった。


「どえええっ!?」


 オージンの変身に変な悲鳴をあげてのけぞるオレとサアル。


「これは人間に変身する技〈化身けしん〉じゃ。これなら平気じゃろ?」

「そういえば人間に化けられる魔族がいたって……本当だったんだな」


 最初はサアルのことを人間に化けた魔族の暗殺者だって勘違いしてたっけ。今じゃ笑い話だけど。


「ほんならこれからもよろしく」

「って、待て! 人間に化けられるからといって、なぜ自然と仲間になる流れなのだ!」

「これでもダメなん?」

「ダメだ! 俺は認めんっ!」


 またサアルの強情ごうじょうっぱりが始まったか。すると、オージンは床にへたり込む。


「……ガウルに体をこんな()()()()にされたのに、一人では生きていけん体にされたのに……。ヤルことやって済んだらポイなんか。ひどいのう、鬼じゃのう」

「聞こえが悪い言い方すんな!」

「ガウルさん。オージンさんにナニしたんですか……」

「シェルティ、いたよね? 見てたよね!? オレ戦っただけだよ? なんでショック受けてるのかなっ!?」


 変態じゃないぞ。オレは! アスカはやっぱり隣で爆笑中。


「まあジョークはさておき、儂がらんと封印し直せんじゃろ。あんたらだってヒーラー無しじゃ困るはずじゃけ。儂が皆の『癒しのお兄さん』になっちゃる」

「癒しのお兄さんって、()()というかなのに……。まあ、お前がいないと困るのは確かだけどさぁ」


 なんだかんだでオレ達のために頑張ってくれたオージン。悪い人じゃないのは確かだ。そもそも人間ひとでもないけど……


「私はいいわよ。面白そうだし」

「お前な……、また面白さで決めようとする。アスカがいいなら誰も反対はしないだろうけど、ちゃんと責任持ってくれよ」


 結局、アスカがオージンの仲間入りを認めてしまったから、サアルも当然賛成に変更。シェルティとリゼは苦笑しつつも、元々反対ではなかったようでうなずいた。


「ほんなら改めまして。皆の名はなんとなく聞いたけぇ。アスカにガウルにシェルティにリゼに……えっと、そこの騎士は何じゃったかの?」

「サルだナ」

「サルか。変な名じゃの」

「違うわっ、サアルだ! リゼ、変な名をすり込むな!」


 ホントに騒がしくて緊張感がないオレ達。さっきまで死闘を繰り広げてたのに、もう忘れそう……


「じゃあ儂もしっかり自己紹介しとくかの。儂はオージン。オージン・()――」

()……?」


 名乗ろうとして体を硬直させて言葉を詰まらせるオージン。で、しばらく考え込んでから続ける。


「――オージン・ティ・ノールじゃ。よろしくの」

「ティ、ノール? なんで自分の名前を言うのに悩むんだよ……」

「気にせん気にせん! それよりさっさと大きな街に連れてってくれん? 早う封印の首飾りを作り直したいんよ」

「ならば王都に戻ろう。どのみち、陛下に報告せねばならぬしな。しかし、鬼人よ! 少しでも妙な素振そぶりを見せたら、即ウニ風呂行きだからな!」

「へいへい。角にめいじときます」


 ――こうしてオレ達は、皆の『癒しのおにぃさん』の鬼人・オージンを仲間に加えて、機界人の脅威を退しりぞけた。そして、少しアスカと仲良くなれたみたいだ。

 足取り軽やかに王都に帰還することとなったが、問題は山積み。オレの旅はまだまだ終わりそうもないようだ。

 それは辛くもあり嫌でもあり……いや、やっぱり嬉しいかな。

第五話 渡る世間に鬼は無し Clear!


 キジンの復活編 エピローグ

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