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新生活を異世界で。  作者: 凍々
式終わって……また一難あった時のお話……です。
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心の準備は整ってないけど……頑張るのです!

 はい、只今龍騎車に乗って移動中なう。

 どうやら私達と同じく、叩き起こされたらしいロゥジさんとアリーナちゃんがお迎えに来てくれたよ。

 アリーナちゃんは出番が来たといつも通りに元気一杯な感じだけど、ロゥジさんは正直今にも寝そうな感じでしたよ……運転大丈夫なのかな……?

「おはようございます!きょうもいちにち、ありーながんばります!」

 うん、アリーナちゃんの笑顔はとても良いね……癒されるわ~。

「……っ!お、おはようございます!バクゥ様、ヒカゲ様!」

 えっと……今立ったまま寝てたよね?寝てたよね??

 まあ、アリーナちゃんさえ無事なら龍騎車は飛ぶらしいから、とりあえずは大丈夫みたいだけど。

「安心して!いざとなったらひぃちゃんだけでも抱いて飛ぶから!」

 ……だって。

 いざ、って時がないように祈るばかりですわ……。


 獏くん曰く、今の時刻は朝の6時ぐらいだそうです。

 通りでまだ眠気が残るわけだわ……もう少し寝たかったなぁ……。

 とりあえず、今は二人で並んで朝食タイムなのです。

 この間貰ったカボ国のお野菜を使ったコーンスープ的なのをゴクゴクしながらパンもムシャっております。

 起き抜けの胃にとっても優しい、まろやかな甘味のあるお味ですわ……。

 こちらでいうトウモロコシのモココの擦り下ろしたものをベースに、ハウカという動物の乳を混ぜ合わせて少し煮込んで、ちょっと塩味の利いたベーコンの角切りを入れてあるんだって。

 付け合わせのパンと凄く合うんだよね……今は3杯目だけどまだまだいけちゃうよ……!

「ごめんね……簡単なものしか用意出来てなくて……」

 獏くんは申し訳なさそうにそう言うけど、私は朝御飯を作ってもらえるだけでもとっっってもありがたいのよ……。

 むしろ私が作れなくって申し訳ない……!


 そんな事を思いつつ、隣の獏くんをちらり。

 やっぱり彼も何処と無く眠そうな感がある。

 何かね……目が若干とろんとしてるような……。

 いつもシャッキリな獏くんにしては珍しい光景だわ。

 ふわぁ……とあくびが二人でハモったりして、ちょっと笑えた。

「ごめんね……ひぃちゃん朝苦手なのに出掛ける事になっちゃってさ……」

 ううん、と私は首を横に振る。

 昨日の夜から待機している人もいるんだって話だし、獏くんはともかく私に会っても嬉しくはないと思うけど……。

 頑張ってみる、と改めて伝えてみた。

 私の様子に少し不安そうな表情を浮かべた彼。

「本当に大丈夫かい……?無理はさせないつもりだけど……遠慮しないですぐに言ってね……」

 ひぃちゃんは我慢したりすぐ無理しちゃうからさ、と獏くんは少し微笑んでそう言ってくれた。


 朝食を食べ終わる頃に、ロゥジさんのアナウンスが流れた。

 話ではゴルディの街に間も無く到着するとか。

 それじゃあ降りる準備を……と思ったけど、獏くんはそのままで良いって。

 なんでかって聞いてみたら、安全面から、らしい。

「何があっても俺はひぃちゃんを守るし、フラロウスのドレスの加護もある。それにロゥジやアリーナもいるから手出しして来ても敵う奴等はいないと思うんだけど……念の為にね」

 あともう一つ懸念される事もあるらしいけど、それは行けば分かるって言ってた。

 龍騎車の一側面が一枚大きな窓になっている訳だけど、そこから挨拶をするような流れになるんだって。

 ちなみに、今は分厚いカーテンが掛かってるから外の様子は見えてない。

 とりあえず笑顔で手を振ってれば大丈夫って獏くんは言ってるけど、その光景を思い浮かべると、日本のお正月恒例のあれを思い出してしまったよ。

 行った事もないし、テレビ中継でしか見た事ないけどさ、まさか自分がその立場になるとは思ってなかったなぁ……。

 人生って不思議よね。


 何となくそんな事に思いを馳せていると、車両の動きが一旦止まって徐々に下がっていくような感覚があった。

 今度はフリーフォール的なのじゃなくてね?ゆっくりね?

 そして地面についたのか、軽く衝撃を感じた。

「……バクゥ様、ヒカゲ様、ゴルディへ到着致しました……カーテンを開きますが……ご準備は宜しいですか?」

 ロゥジさんのアナウンスが再度流れる。

 それを聞いて、いよいよか……と緊張感が高まってきた私。

 何かね……車両越しでも分かったけど、結構外がざわついているみたいなのですよ……。

 どれだけ今外に人がいるのかは分からないけど、多分結構集まっているような感じだよね……ひぇぇぇぇ……!

 公衆の面前に出るなんて……考えただけでも身体が震える……。

 まだ始まってもいないのに、完璧に腰が引けてしまっている私の肩をそっと獏くんが抱いてくれた。

 横を見れば穏やかな笑顔の彼がこちらを見ていた。

「……怖がらなくて大丈夫だよ、ひぃちゃん。君はこの世界で一番綺麗で、可愛くて、一番愛されるべき人だ。それに、どの国に行っても創造者は君を受け入れてくれていたし、俺だけじゃなくて、創造者からもお墨付きをもらっているんだよ?それは誰にでも出来る事じゃない。ひぃちゃんだから出来たんだよ。誰に何を言われても、邪な目線も気にしなくていい。ひぃちゃんの事は俺が絶対に守るから……!」

 ゆっくりと宥めるように獏くんはそう話してくれた。

 もう……世界一綺麗とか可愛いとか……そんな恥ずかしい事普通に言っちゃうんだもんな……。

 かなり恥ずかしいけど……真っ直ぐな気持ちが嬉しいよね。

 彼の言葉を聞いてたら、不思議と心が落ち着いてきて、身体の震えもいつの間にか止まっていた。

「……落ち着いた……かな?」

 うん、と返せば、獏くんも安心したように笑っていた。

 その後ロゥジさんに合図を出したのかな、目の前のカーテンが開く動きを見せた。


 いよいよ御披露目なのです……!

 獏くんも付いてくれてるし……もう出たとこ勝負……だね!

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