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新生活を異世界で。  作者: 凍々
式終わって……また一難あった時のお話……です。
95/114

慌てん坊のメイドさんでした。

 いきなりの激しいドアノックの後、勢い余って飛び込んで来た上、見事な前転からの顔面からの見事な着地でノックもダウンされた、そんな彼女のお名前はナナヤと言うらしい。

 クロム族特有の黒髪と控えめな角が一対、背中には小さな蝙蝠の羽みたいのが生えている。顔は見えないけど、さっきちらっと見えたのは結構美人さんだったよ。

 そして予想に違わず、やっぱりこの城に仕えるメイドさんらしい。ちなみにこっちの世界では、アーゼって言うんだって。

 彼女は獏くんの身の回りの世話と秘書的な立場にあるみたいなんだけど、彼が言うには……。

「色々とやる気は認めるけど、正直空回っている事が多い」

 ……だって。

 まあ獏くんは大体自分で何でも出来ちゃう人だから、彼女がどうにかする前に終っちゃったりしてたみたい。もしくはやってみたけど大事になっちゃう的な展開もあったとか。

 えっと……つまりドジっ娘属性って事でよろしいのかしら……?

 開幕から随分とぶっ込んで来たねぇ……またキャラが濃そうな感じだわ……。


「はっ!?ここは……??」

「おはよう、ナナヤ」

「バ、バクゥ様ぁぁ!?それにお妃様もぉ!?」

 目が覚めた彼女は、目の前の私達に対してかなり驚いた様子で、勢い良く後ろに後ずさっていた。

 ベタな驚き方をした後に、彼女はいそいそと居ずまいを正しつつ、

「ええと……お見苦しい所をお見せして大変申し訳ございませんでした!!」

 その場で平身低頭、土下座スタイルにて謝る彼女でした。

 スッと王様モードに戻った獏くんが、頭を下げ続ける彼女に向かって落ち着いた様子で語りかけた。

「朝から随分と騒がしくしているようだが……何をそんなに慌てているのだ?私と妃の眠りを妨げる余程の理由があっての事だろうな?」

 獏くんの言葉にえ!?と驚いた様に顔を上げた彼女。

「も、申し訳ございません!ただ、バ、バクゥ様……ま、まさか今日の執務をお忘れですか……?今日は、今日はお二人様揃って御披露目のパレードの日ですよ……!?」

 え!?となったのは今度は私よ。

 何と……パレードとか聞いてないんだけど……!?

 元の世界でも高貴な方々ってそういうのがあったけど、やっぱりこっちの世界でもあるのね……!

 ……いや、薄々は思ってはいたんだけどね。薄々だけど。

 だって獏くん王様だし。そこに嫁いだ私はお妃様って事だし。

 アラサーになってからこんなに波瀾万丈な事ばかり起きるとは……人生って何が起こるか分かんないもんだね……。

 こういうの何て言うっけ……シンデレラストーリーだっけ?

 お祖母ちゃん……孫は異世界で元気に幸せにやってますよ。


 少々感傷に浸っていた私ですけども、目の前はちょっと修羅場になりつつあるようで……。

「と、ともかく!早くご準備を!!」

 慌てるナナヤさんとは対照的に、獏くんは冷静そのもの。

 若干呆れたような、落胆したような様子で、大きく溜め息をついていた。

「……そのパレードだが、式の翌日で定めてはいたが、彼女が疲れているだろうと思って前もって公示を出したのだよ……。日付としては()()()に変更したのだが……まさか確認出来ていないのか……?」

「へ!?」

 獏くんの言葉に彼女は慌てた様子で腰元に下げてあった結晶を手に取った。

 えっと……あれは、記録石……だったよね。以前見たものより大きめな気がするけど……?

「彼女が持っているのは記録石は特別製でね、今までに出した公示や予定なんかを記録する事が出来るものなんだよ」

 通常の記録石は一つにつき、一つの映像を記録する事が出来るけど、上書きは出来ない。

 魔術で加工すると送受信が出来たり、上書きが出来たりとより便利になるみたいなんだけど、彼女の持っているそれはもっともっと高性能なもので、送受信も出来て、上書きする事なく収めておける情報が多いんだって。

 つまり……スマホみたいな感じって思えばいい?なるほどなるほど!

 ……で、彼女は獏くんの出したって言う公示とやらを確認している最中って事ね。大変そうだわ……。

 目まぐるしく映像が切り替わっていき、一生懸命に追いかけているみたい。ちょっとしてピッタリと彼女の目が止まり、そして彼女の顔からスゥっと血の気が引いていくのが分かった。

 震える手からカタリと記録石が落ちた。

 あー……例の公示を見つけちゃった感じかな……?


「え、え、え……!?」

「その顔は……まるで確認出来ていなかった、と言う事で良いのだな……?」

 青ざめた顔で恐々頷くナナヤさんであります。

「ほうほう……王側付きのアーゼである君が、把握していなかったと……。この城内で()()私の予定を把握していなければいけない君がか……!」

 部屋の中が一瞬で冷えたような感覚。

 獏くんを見れば、涼やかな笑顔を浮かべているけど、口元がひくついてるのと、髪が静々と逆立っていってるみたい……。

 あ、これはお怒りです……久々に見たガチでお怒りのヤツです……!!

 これはあれだわ、ロゥジさん達にお怒りになった時と同じ展開だ……!!

「あの……その……」

「ひぃちゃん……ちょっと出掛けてくるよ。何、()()帰ってくるから、待っててね♪」

 そう言うと、ナナヤさんの首根っこを掴んで、瞬時に空間転移でいなくなってしまった。

 彼女をどうするつもりなのかな……女性相手だからそんなに手荒な事はしないはず……だよね?

 ともかく、言えるのは一つです。

 ナナヤさん……御愁傷様です……!!

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