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新生活を異世界で。  作者: 凍々
待ちに待った式当日のお話……です。
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宴の始まりです!

 獏くんのご馳走が食べられると聞いて、俄然やる気が出てきた私であります。

 ……ぐぅぅぅぅぅ………。

 そして、つられてお腹の虫くんもやる気が出てきたみたいです……。

 久々の登場だね!呼んでないのに来てくれたのね!嬉しくないったらないね!

 静寂を切り裂くような場違いな重低音であります……。

 恥ずかしさから、すかさずその場でしゃがみこむ私。

 くっ……君までやる気出さんでいいんですけどぉぉぉ……!

 もう何回目か分からないけど、空気読んでくれないかなぁ……!!

 自分の食いしん坊加減に項垂れる私であります。うぅ……。

「あらあらぁ~、可愛いわね~」

 私を見て、ふふふと穏やかに笑うフェンさん。

「はは……じゃ、じゃあ俺達も移動しようか……ね?」

 それと若干苦笑い気味の獏くんであります。

 も、もう……本当に申し訳ないよ……。


 さあ、と手を引かれて、獏くんの開いた転移の門をくぐった。

 視界が一瞬揺らいで、次に見えたのは、開けた場所。

 ふと見上げたら空が見えるから……ここは外って事かな??

 少し遠くにお城が見えた。普段暮らしている所だよね。

 考えると多分……クロム国内の何処か違う浮き島に来ているみたい。

 目の前には草原。だだっ広い絨毯が敷かれていて、その上には大きな円卓が幾つか。それぞれに豪勢な料理が用意されているみたいだった。

 ……ざっと見て40~50人分ぐらいかな?

 洋食、中華、エスニック、フランス料理的なのとか、目移りしちゃうぐらい種類が多いのです!

 中心にはお待ちかねの大きな大きなケーキもそびえているっぽい!

 あれは恒例の……夫婦の初の共同作業に必須なあれだよね??

 こ、こんな量を獏くんは一人で作ったの……!?

「うん!あれも食べて欲しい、これもひぃちゃんの好物だよねとかひぃちゃんの事を思って作ってたら、いつの間にかこんな量になっちゃってね……」

 俺の愛が詰まってるから、どれも沢山食べてね!と満面の笑みで獏くんはそう答えてくれた。

 おお……愛情がマシマシで来たわ……嬉しいけども、ちょーっと量が多いかなぁ……??

「あらあら~。皆楽しそうだわね~。私も~御馳走になってこようかしら~?」

「ええ、先生もどうぞ!色々と取り揃えていますので!」

「ふふふ~ありがとう~!バクゥ様の料理は美味しいから~、遠慮なく頂かせてもらうわね~」

 ふふふと穏やかに笑いながら、フェンさんはゆったりとした足取りで進んで行って、私達と離れた。

 彼女の大きな背中を見送りながら、獏くんはふと呟いた。

「……今日の式、先生の協力なしでは出来なかったな……本当に感謝しかないよ……」

 彼の言葉に、私も同じ思いを抱いていた。

 だってさ、私みたいな見ず知らずの人間にも気さくに接してくれた上に、元の世界のやり方に合わせてくれて、祝福もしてくれたんだもの。

 本当におおらかで、心の広い、優しい人なんだね。

 獏くんが尊敬するのも分かる。

 自然と、私は離れていく彼女に向かって頭を下げていた。

 ……今日はありがとうございます、フェンさん。

 ……私、まだこの世界に慣れてはいないけど、きっと幸せになります。

 ……獏くんと、精一杯幸せになります!!

 そんな事を考えながら、ゆっくり顔を上げると、獏くんも同じく顔を上げている所だった。

 本当に、似た者夫婦だね、なんて私達は顔を見合わせて、ちょっと笑った。


 フェンさんを見送った後、私達も移動する事にした。

 私達が来る前に、参列の方々はもうすっかり出来上がっちゃっていたみたいで、あちらこちらで賑やかな声が上がっている。

 特に席は決まっていないのか、思い思いの辺りで楽しんでるみたいだね。

 その中で一際賑やかな集団があって、その中心にいたのは、誰であろうお義父さんだった。

 ちなみに、回りにいるのはアリーナちゃんとか、フラロウスさんとかロゥジさんとかみたい。

 先程の式で身に付けていた鎧は脱いでしまったようで、上半身裸の非常にラフな格好になってるようです……。

 どの世界でも酔っぱらうと脱ぐ人っているんだねぇ……。

 まるで宴会で見るテンプレのような光景だよ。

 私達の顔を見つけると、遠くからでも分かる赤ら顔で、こちらに向かって大きく手を振って呼んでいるみたいだった。

「げっ……親父……!!」

 と、呼ばれた獏くんは明らかに嫌そうな表情を浮かべている。

 晴れ(ニコニコ)から急激な豪雨(不機嫌)状態だわよ……!

 あらら……獏くんのお義父さん嫌いも深刻だよね……。

 ま、まあ、折角のお祝いの席だし……。

 今日ぐらいは……我慢っていうか、妥協っていうか……、仲良くしてて欲しいかな……表面上だけでも。

 そう思った私は、ジト目で獏くんを見つめてみる事にした。

 ……目は口ほどに物を言う、って話です。

「獏くん……」

 私の視線に気づいた獏くんは慌てて表情を戻した。

 けど、それでも構わず無言でじっと彼を見つめる私。

「ひ、ひぃちゃん……!?」

 視線からか私の言いたい事が伝わったみたいで、

「……わ、分かった!分かったよ、ひぃちゃん!お、お願いだから……機嫌直してくれないかな……?」

 と、慌ててつつもわりかしすぐに折れてくれた。

 最後の方はちょっぴり涙目だったし……やり過ぎたかな……?

 まあ、でも分かってくれたらそれで良いのですよ。

 折角の日なんだから、今日ぐらいは休戦でお願いします!

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