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新生活を異世界で。  作者: 凍々
六大陸(内1国は見送り)を巡った時のお話……です。
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長い1日でありました……!

 水に潜るってのは覚えている限りの記憶では、生まれて初めての体験だと思う。

 わりかし真っ直ぐ下へ進んでいるみたいだから、エレベーターに乗ってるような気軽さはあるけども。

 ……泳げないのに潜るなんておっかない事出来ないしね!

 深さを増す度に青はより暗い蒼へ様子を変えていった。

 目印もないのに、リーン王とフフドさんはどんどんと下へ、深い所へと進んでいく。

 ふと上を見れば、入り口は遠くに小さくなってしまっていた。

 獏くんは安全だと言ってくれてたけど、やっぱり不安はある。

 このガラスがどこかでヒビがいって、砕けてしまうんじゃないかとか。

 魔術が上手く作用しなくて、窒息してしまったりしないかとか。

 リーン王達を信用してない訳じゃないし、こんな考えは失礼だとは思うけど、フフドさんが鎖を離したら最後、私達はどこまで落ちてしまうんだろうとか。

 そんな後ろ向きな考えばかり頭を巡っていく。

 知らず知らずの内に体が震え始めていたみたいで、獏くんがそっと後ろから抱き締めてくれていた。

 私が不安に思っているのを察してくれたんだろうと思う。

 特に言葉はなかったけど、背中越しの温かさが今はとても嬉しかった。

 獏くんのお陰で、体の震えも不安な気持ちもどこか行っちゃったみたい。

 その様子を見ていたのか、リーン王が外からニヤニヤとしながら話しているのが見えた。

 声は聞こえなかったけど、口パクで分かったよ……。

 二人共、お熱いね……だって!!

 そう言えば……ガラス張りだった事を忘れてた……恥ずかしい!!

 そんなこんなで暫く潜っていった底に、こんこんと涌き出る泉というか、源泉みたいのがあって、そこが御神体?なんだって獏くんが教えてくれた。

 水の創造者の力が宿るそこからは止めどなく水が湧き続けていて、彼ら(アルギ)の大陸を支え、生み出しているんだって。

 深く暗い水の中に、薄青く光るその場所は、とても神秘的で、見てて凄く癒されたのです。

 癒されたけど……静かすぎて物悲しい感じもする場所だと思ったのですよ。

 さっきの笑顔もなく、リーン王の顔もどこか悲しい感じだったし……。

 あと、どことなくミトラの奈落を見た時の感覚に似てると思ったんだけど、獏くんの話では、ミトラ様の兄に当たるのがリュート様なんだって。

 リュート様はそれはそれは妹のミトラ様を可愛がっていたみたいで、遥か昔に起こった創造者達の戦いには兄として妹を守るべく戦ったんだって話らしい。

 結果、残念ながらミトラ様は守りきれず、彼女は命の創造者として、自らを世界に捧げてしまった訳だけど、その後の彼女を守る為に、リュート様はその身を分けて、アルギ族の大陸とミトラの奈落を守っていると伝えられているらしい。

 その話を聞いた後は、止めどなく溢れる水は、リュート様の涙なんじゃないかとか思えてきた。

 そんな思いがあると、獏くんに伝えてみると、少し複雑そうな表情になった彼。

「そうか……多分、ひぃちゃんは感受性が高いから、リュート様の思いを感じられたんじゃないかな。もしくは……リュート様がひぃちゃんを見て、その姿に(ミトラ)を重ねてるのを感じ取った……とかね」

 時が過ぎて、形を変えてなお、大切な妹を喪った悲しみは続いているって事なのかな……切ないね。


 最後はしんみりしてしまったけど、祭祀の場での挨拶も終わり、私達はまた地上に戻ることが出来た。

 ゴンドラから出た時の開放感が凄かったわ。

 やっぱり地上は落ち着く……地に足が付く間隔って安心よね。

 あ、フフドさんは私達を送った後、静々と水中へ帰っていったよ。また祭祀の場の守りに戻ったんだって。

 気付けば大分良い時間だったらしくて、泊まっていけばとリーン王達に引き留められたみたいだけど、獏くんは断ったみたい。

「気遣ってもらったのに申し訳ない……。今はあまり国を空けたくはないんだ……フロン国の動向も気になるしね。また今度お邪魔する事にするよ」

 獏くんの言葉に少し寂しそうな様子の二人だったけど、それならとお土産をたんまり用意してくれた。

 いつか食べたあのお魚とかも含めた魚介類山盛りですよ!中には跳ねたり、うごうごしてるのもいるから、本当に捕りたてほやほや、新鮮そのものって感じだね。

 嬉しい反面……量が凄いのですが……!?

 だってさ、私の背丈より山が高い……だと!?

 どうやらソーマ王が私達がいない間に捕ってきてくれたんだって。離れていたのは多分一時間もないと思うんだけど、どれだけ頑張っちゃったのって話ですよ。

「む……こればかりでは足らんかもしれんが……持っていくといい……」

 いやいや……こればかりって量でないんですけども…!?

 足ります!むしろ余るし!!

 唖然とする私の隣で、流石の獏くんも苦笑いしてたわ……当然だわよ。


 二人にそれぞれお礼を言って、お土産もしっかり収納(インベントリ)にしまった後、また龍騎車に戻った私達はアルギ国を後にしたのでした。

 いや……思い返すと、色々とイベントの多い、長い濃密な1日だったなぁ……。

 今日はぐっすり眠れそう……てかもう眠い……。

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