彼等には秘密があったようです……!?
タイタン国での騒ぎには若干関わっている自覚はあるし、代表って訳じゃないけど、少しは謝った方がいいのかな……とさっきから不安な私。小心者なんでね。
こそっと獏くんに相談してみたら、そんなの気にしなくて良いのに、と笑われてしまったのです。
「仕掛けてきたのは向こう側なんだから、ひぃちゃんは一切気に病む事はないんだよ?でも……ひぃちゃんたら……何て慈悲深い嫁なんだ……!!」
最後の方はうっすら涙ぐんでたんですが……そこまでかな!?
とりあえず、遅れてしまった事の顛末をお二人に話してくれた獏くん。
「まあ……そういった事情があったなら仕方あるまい……。だが……連絡の一つはよこせ」
「そうだねー、でも怪我もないみたいだし良かったねえ!タイタン国の喧嘩っ早さは有名だけど、事もあろうにバクゥ王にちょっかい出すとか、命知らずだねー!あはは!」
各々に頷いて納得したようですわ。
二人の表情を見る限り……怒ってはいない……?
どうやら水に流してくれたみたい……だね?良かった……!
「そういえば……さっきから随分とご機嫌斜めだね、ソーマ?」
悪戯っぽい笑顔を浮かべて、そう語りかけるリーン王。
その言葉に驚いたように眼を見開くソーマ王。
「む……別段、そんな、事は、無いが?」
「そうー?もしかして……バクゥ王のお嫁さんに嫉妬してるの?僕がさっき彼女に可愛いお嫁さん、って言ったからかい?」
「し、嫉妬など……」
何かを誤魔化すように、ふいっと顔を背けてしまったソーマ王。
そんな彼を目掛けて、大きな水飛沫を上げながら、水面から飛び出したリーン王は、そのままの勢いでソーマ王に抱き付いた。
「もうー!他の女の子がいると、すぐ拗ねるんだからー。僕が世界で一番可愛いと思ってるのはソーマだよー!」
そう言いながら、ニコニコ笑顔でソーマ王にじゃれつくリーン王。
鮫かシャチのような立派な尾びれをふりふりして、嬉しそうな様子で、ソーマ王の胸元にすっぽり収まっている。
小声で、止めないか……!、と拒否している割には離れない所を見ると、ソーマ王も満更でもないのかな……??
二人のその光景に微笑ましさも感じていた私だけど、はたと思い返す。
……って!?え?ええ??
わ、私は何を見ているの……!?
だ、だ、だって、二人って男の人同士……だよね!?
つ、つ、つ、つまり……只ならぬ関係だって事なの……!?
あんまり知識はないけど、あれが腐女子と呼ばれる方々の大好物との噂の……!?
そう考えたら、友達同士のじゃれあいというか、どちらかといえば、恋人とかもっと仲睦まじい光景にも見えてきてしまったのだけど……??
ど、ど、どうしたらいいかな!?み、見ちゃいけないよね!?あばばば……!!
色々とテンパり過ぎた結果、フリーズしてしまった私。
そんな私の肩にそっと手を置く獏くん。驚いてそちらを向くと顔を赤らめながら、小声で話し掛けてきた。
「……い、言い忘れてたんだけど……アルギ族は雌雄同体なんだよ。便宜上、さっきは二人を王と言ったけど、彼等はお互いに女性でもある訳で……その、二人は恋人関係なんだよね……」
何処と無く歯切れの悪い獏くんの言葉に、私は何となくだけど、事情を察する事が出来た。
つまり、この光景は恋人同士の仲睦まじいという結果であると。
獏くんとしても、分かってはいたものの、実際目のやり場に困っていると。私もだけど。
カボ族のウィードル国王夫妻もなかなかラブラブだったけれど、彼等はその上を行く感じですわよ……!
もう20分ぐらいイチャついてるんですけど……!?
しかもね……だいぶ濃厚な感じなんだけど……!?
その……このまま本番に突入とかなりそうな雰囲気になってませんかね……!?
獏くんなんて、さっきから後ろ向いちゃって、顔も真っ赤で明らかに動揺してるし……。
私も流石に見てられなくて、大変失礼だとは思いつつ、背を向けてしまってるんだけどさ。
時折、チラチラっと背後を振り返って、様子を見てるんだけど……睦まじ過ぎて……もう……ね??
「……あー、ごめんごめん!ソーマが可愛い所見せたからさー!ついついもっと見たくなっちゃってさー!」
彼等も私達の様子に漸く気付いてくれたのか、スキンシップのお時間が終わったみたい……だね。
バシャリという水音を合図にするように、私達は振り返って、改めて二人に向き直った。
そこには屈託のないすっきりとした笑顔を浮かべるリーン王が水面に、どこか気まずい雰囲気を漂わせるソーマ王が玉座に戻っていた。
「全く……他人の面前だと言うのに……す、少しは自重してもらいたいものだな……」
少し乱れた様子の身だしなみを整えながらソーマ王は恥ずかしそうにぼそりと呟いていた。
ふ、深くは考えない事にしよう……うん。
わ、私にはまだ耐性のないイベントだったわ……。




