表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生活を異世界で。  作者: 凍々
六大陸(内1国は見送り)を巡った時のお話……です。
71/114

挨拶前に襲撃あり……です!

 本日3つ目の訪問国、タイタン国に到着した直後の事だった。

 突如、車体が大きく揺れた。

 何かがぶつかってきたような激しい揺れだった。

 それは一度ではなく、何回も同じような揺れが立て続けに起こっている。

 車内は揺れに伴って、物が倒れたり、落ちてきたりと、大分危なっかしくなっていた。

 幸い、私を庇って獏くんが咄嗟に覆い被さって守ってくれたので怪我したりする事はなかったけど、彼の背には強かに何かがぶつかったようで、少々痛そうな表情を浮かべていた。

「獏くん!!」

「くっ……俺は平気さ……!それより、ひぃちゃんは大丈夫!?」

 彼の言葉に返事は出来なかったけど、数回首を縦に振る私を見て、良かったと彼は少し笑った。

 こんな状況で思うのはあれなんだけど、その体勢のままは正直恥ずかしいな……。だ、だって、色々と近いんだもの!

 守ってもらえて嬉しい反面、どうにも居た堪れない恥ずかしさで身動きが取れない私。

 揺れは激しさを増し、ミシミシとどこかから軋む音までしてきた。ここ……壊れかけてるのでは……??

 そんな中、耳を澄ますと、外で咆哮が響いているのに気付いた。

 あの咆哮は……アリーナちゃんのだ!!

 この間聞いたものより低音だし激しい気がする……多分、彼女は怒ってる??

 でも……彼女のだけじゃない咆哮が聞こえる……一体誰なの……?

 ど、ど、どういう事なの!?攻撃されてるって事!?

 車内がこうなんだから、外はもっと激しい事になってるのでは……!?

 アリーナちゃんとかロゥジさんは大丈夫なの……??

 混乱MAXの私。怖くなって思わず獏くんの胸にしがみついた。

 落ち着かせようとしてくれたのか、獏くんがそっと私の背中を撫でながら、耳元でそっと囁いてくれた。

「……ひぃちゃん……大丈夫、大丈夫だからね。俺がいるから、君は絶対に傷付けさせはしないから……!」

 獏くんの言葉は暖かくて落ち着くものだけど、それに増して不安や恐怖が勝ってしまっている。

 さっきから身体の震えが止まらない。鼓動が激しくて、胸が苦しい。目眩までしてきた。気絶しないようにするので精一杯だよ……!


 どうにも攻撃は止まらないみたいです……。

 私はただただ震えるばかりだったけど、どうやら獏くんの堪忍袋の緒が切れたみたい。

「ちっ……相変わらず頭の悪い……手荒い歓迎だな……!ひぃちゃん、ちょっと行ってくるよ……」

 そう静かに呟きながら、しがみついていた私をそっと躱すと、立ち上がる獏くん。

 背後に黒いオーラが立ち上ってたのは見間違いじゃないはず……。

 ……え?ちょっと……ど、どこに行くつもりなの!?

 私が聞く間もなく、獏くんはサッと空間転移してしまって、車内に一人残されてしまったのです。

 顔は見えなかったけど……珍しく舌打ちなんかしてたし、かなりお怒りだよ……怖い怖い!!


 ……獏くんがいなくなって車内の揺れと響いていた咆哮が収まった。

 助かった……?とほんの少し安心した直後、空間を裂いて獏くんが帰ってきた。

「ただいまー!帰ってきたよー!」

 声は物凄く弾んで明るいんだけどね、顔が……まるで般若よ!?

 ロゥジさんとアリーナちゃんにガチ説教かましてた時のあれよ!?激おこです……!

 ……帰ってきたついでに、片手に何やら人も連れているようですが。

 5~6才ぐらいなのかな、結構小さな男の子みたいだけど……。

 短い茶色の猫っ毛に熊のような丸い耳が頭にひょっこりしてる。服装は赤地に豪華な金色の刺繍が施されたチャイナ服に近いものに見える。不機嫌なのか、猫のような尻尾は逆立ったままだ。真ん丸のパッチリした瞳に、柔らかそうな頬っぺたには数本細い髭が生えてるみたい。子猫を擬人化したらこんな感じなるかもだわ…。

 ……ん?え??誰なのこのショタボーイは???

 はっ!も、もしかして……獏くんってそういう趣味が……?!

 私の引き気味の視線に気付いたのか、慌てて訂正に入る彼。

「ひ、ひぃちゃん!?ち、違うからね!?俺はひぃちゃん一筋!!ノーマルだから……じゃなくて、コイツがさっきから俺達に攻撃してきてた奴なんだよ!!」

 ……ノーマルだからって所は若干引っ掛かる所があるけど……まあ、そこは置いておこうか。

 え?そうなの!?こんな可愛らしい子が……?

 ちょっと遠巻きに見てたら、シャー!!っと威嚇されたよ……ますます猫っぽいね。

「は、離せえ!!この鬼!!悪魔ぁぁぁ!!」

 先程から、首根っこをがっちり獏くんに捕まれて、宙に浮いたまま、あどけない声色の大声で叫びながら、長い袖を振り回して必死の形相で激しく抵抗し続けるその子であります。

 ……あれぇー?つい最近だけど、こんな光景見た事あるなー??

「あ、あの?その?獏くん?そ、その子は……?」

 恐る恐る訪ねてみた私に、彼は平然とこう言ったのです。

「あ、()()?コイツはタイタン国の王子だよ?」

 ……獏くんの言葉を理解するのに、ちょっと掛かった。

 えぇぇぇぇ……!!超VIPじゃん!!

 貴方……相手国の王子をひっ捕まえて、これて……!!

 また戦とかなったりするんじゃ……止めてぇぇぇぇ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ