表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生活を異世界で。  作者: 凍々
六大陸(内1国は見送り)を巡った時のお話……です。
66/114

ちょっとご挨拶に行く事になったようです。

 うふふ、えへへなどとうわ言のように呟きつつ、さっきの幸せの余韻に浸っていた私だったけど、急遽戻ってきた獏くんによって現実に引き戻されたのでした。残念です……。

 息も切らして、そこそこ慌てている様子だったので、何があったのか聞いてみると、

「ひぃちゃん……俺さ、式の前にやる事があったのを思い出したんだ……!!」

 式の前にやる事?

 えーと……婚約はこの世界に来る前からしてるし、式場は獏くんが頑張って作ってくれたし、ドレスはもう仕上がってるし(というか着たままだし)、招待状も配ってるって話だったし、結納は……申し訳ないけど家族がいないし、残るのは……挨拶回りとか……?

 でも……この間色々と回ったりしなかったっけ……?

 なんて、考えていたら、少し落ち着いた様子で彼が話始めた。

「実はね……この世界で王族が結婚する時には、()()()()()にも挨拶しなければいけない習わしがあるんだ。式の事ばかり気にしていたからすっかり忘れてて……」

 ええ?そうなの??初耳過ぎるんですが……!?

 やっぱり王族ともなると他の国にも面通ししとかなきゃ的な感じのやつなのかな……?

 てか、それは結構重要な事なのでは……?

 獏くんは思い込んだら一直線な所あるから……仕方ないかも。

 そうなると、また獏くんが出掛けるって事なのか……寂しいな……。

 寂しいと思う気持ちを抑えて、いってらっしゃいと声を掛けようとしたら、すかさず抱き上げられる私。何故に!?

 戸惑う私に向かって、獏くんは申し訳なさそうな表情と声で言うのですよ。

「……それでね、急で申し訳ないけど……ひぃちゃんにも一緒に来てほしいんだ……」

 ……え!?私も一緒に行くの……!?

 こんな格好だし、王族のマナーとかそもそも何にも分かってない人間なんですけど!?

 急にそんな事無理無理!!と、いつもの如くもがいてみるも、安定のホールド力で逃げられる訳もなく……そのまま連行される私でした。

 見れば、獏くんは先程の申し訳ない顔はしていなくて、笑顔だけど、冷静さも感じられる、凛とした表情になっていた。

 これは……もしかして、王様モードの獏くんになったとか?

 普段と違う彼の横顔に、思わず胸が高鳴る。グッときたわ……!

 同じ彼のはずなのに、纏っているオーラ的なものが違うように感じる。

 別人とまでは言わないけど、何だか獏くんが遠くなってしまったようでちょっと切ない気分だわ……。

 これが王家の風格ってものなのかもしれない。

 やっぱり、生まれついて持ったものの差を感じてしまう。

 この後が本当に不安でしかないんですが……うう。

「……大丈夫さ、相手との話は俺がするし、ひぃちゃんは側に居てくれたら良いから……安心していいよ」

 不安に思っているのを察してくれたのか、獏くんは少し普段の笑顔に戻って笑ってくれた。

 そうだよね、獏くんに着いていけば間違いはないよね!

 今から緊張しっぱなしだけど……頑張るよ、私!


 ……と、言う訳で、三度目の龍騎車に搭乗中の私達であります。

 今日はもう出番がないと思っていたアリーナちゃんが、出立の命が来た途端に飛んできて、軽くパニックになったのはさておき。

 時間的にはお昼時だったらしくて、獏くんが車内でお昼ご飯を作ってくれて、食べつつ向かっております。

 今日のお昼は、野菜とお肉がたっぷり入ったスープパスタ的な感じのものだった。これはネオン族の郷土料理なんだって。

 角切りにした野菜の食感も良いし、麺も喉ごし抜群だし、それらに会う絶妙な塩味のスープも美味しかった。

 スープパスタというかタンメンに近かったかもだけど、とにかく美味しかったのですよ……!

 食後のデザートも作ってくれてて、デネっていう果物の砂糖煮を食べさせてもらったのです。

 デネはカボ族の特産品で、見た目は林檎みたいなんだけど、味はオレンジに近い、少し酸味がある果物らしいんだけど、お砂糖と煮込んであったから、とても甘くてとろけてて、これも美味しかったのです!

 こんな時でも作ってくれるなんて……獏くん優しい……!

 朝ごはんがあまり良く覚えてない分、味わって食べた私でした。


 食べ終わった後に、獏くんがこれから回る国の事を話してくれた。

「まずはクロム国の隣国、ネオン国に向かってるよ。それから、カボ国、タイタン国、アルギ国って感じに時計回りに向かう予定かな。少し強行軍ではあるんだけど、今日中に回るつもりでいるけど……疲れた時は遠慮なく言ってね、ひぃちゃん!」

 あれ?フロン国は?と思ったけど、この間ので挨拶した事にするんだって。

 焦っていたようだったから、てっきり転移魔法で行くのかと思っていたんだけど、急いでいても時間を掛けて訪ねる事が大事なんだって。

「転移魔法は瞬時に目的地に行けるのが利点ではあるけど、転移先の距離によっては魔力を膨大に使うからあんまり多用はできないんだよ……。あと、急に現れたら相手先の都合を駄目にしてしまう事もあるし、準備なんかも間に合わなかったりするからね。それに龍騎車で向かう事で、王家としての来訪って箔も付く訳さ」

 なるほど……相手先の事も考えての事なんだね……!

 私だったら即行かなきゃって思っちゃうけど。小心者だからね。


 えっと……まず行くのはネオン族の国だっけ。

 確かネオン族の人にはまだ会った事がなかったんだよね。

 昆虫みたいな見た目だって話なんだけど……仲良く出来るかな……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ