個性的な人がまた増えました……!
アサさんの店を離れ、また街中に戻って参りました!
時間が経ったせいもあるのかもしれないけど、人通りが少し減ったように思える。開いてるお店も先程よりは減ってる感じがするね。
獏くんに聞いたら、時間的に夕方近いんだって。空がいつでも夕焼け色だからいまいち分かりづらいんだよね……。
「この辺りでは夕方を過ぎると、店仕舞いする事が多いんだ。生鮮品を売ってる店は特にかな……。代わりに居酒屋とかが開いたりするよ」
鮮度や状態を保つ魔術、固定っていうのもあるらしいけど、魔力の消費量の割に効果時間が長くはないから、あまり使用されないとか。
あと、元の世界と違って24時間開いてるコンビニみたいなのはないんだって。それはそうだよね……。
嗚呼、懐かしいなぁ……コンビニスイーツ……!
あれが良いよね、真ん中にクリームたっぷりのロールケーキ……何個でもいけるやつ!
……いけないいけない、話が逸れてしまったわ。
えっと、次の目的地の話だわ。
まあ……今まで食べる系の所に連れていってもらったから、流石に次は違うよね……?まだ食べれるけどね?
と思って獏くんに聞いてみると、
「ふふ……ひぃちゃん……次もきっと驚くよ??」
おお?自らハードル上げてきたよ??期待して良いのかしら?
まあ、私はこの世界の初心者なので、基本的に何見ても新鮮だし、驚くんだけどね。
ともあれ、楽しみは楽しみだからね。次は何が出るのかな……?
少し歩いて着いたのは綺麗目の外見で、遠目から見るとカフェ的なお店だった。
看板が外に出ていて、《フラロウス》と書いてあるのが読めた。勿論こちらの言葉でだけど、綺麗な字だなぁ……羨ましい。
外から見えるショーウィンドウには、この国で着られている普段着の他に、魔法使いが着てそうな長めのローブ、綺麗な刺繍がされたワンピースみたいのとか、ほとんど紐じゃんっていう水着だか下着等が飾られていた。
お店のコンセプトが測りかねるけど……とりあえず洋服を売るお店だって事は分かった。
ま、まさかとは思うけど……私にあの水着だか下着だかを着せる気ではないよね?
ハッとして獏くんを見るけど、明らかにその方向から目を反らして顔を赤くしている所をみるにそれはないみたい。
そうだよね、獏くんだからね!変な所で大胆だけど、そんな事はしないか。まあ、良かったわ。
扉を押して開けると、カランカランと小さく鐘の音がなった。
その音を合図に、店の奥から現れる人影が。
「はいはい……いらっしゃいませ……ってあら!バクゥ様!!」
その人は獏くんの顔を見るなり、驚いて口を手で覆ってみせた。
現れたのは、夜会巻きのもっと盛ってる感じの髪型の人だった。髪型のせいもあるかもだけど、獏くんより背が高く見える。角は立派なのが一本、額に着いているけど、金色の装飾がされてるみたい。
少し野太い声とか褐色肌で筋肉質な体格の感じを見ると、多分男性なんだろうけど、格好はキラキラのスパンコール増し増しの黒のヒラヒラした胸元もがっつり開いたドレスを着て、濃いめの化粧もバッチリ。スリットもかなり深くて、なかなか逞しいおみ足がこんにちはしてるよ?履いてるのはピンヒールで踏まれたらかなり痛そう。
あ、あれかな、ドラッグクィーンみたいな人なのかな?
な、なかなかパンチ強い人が来たよ……?これまでに会った人の中では一番の衝撃だよ……?
「もうやだぁ~!!バクゥ様が来るなら、もっとバッチリメイクしておいたのに~!!」
頬に手を添え、困ったように体をくねらせながら鏡で顔をチェックする彼……いや彼女?
おおぅ……凄い絵面になってる……!離れてても圧が凄いわ……!
届くはずもないけど、心の中で強く思う。
大丈夫です……もうメイクは十分決まってますよ……!それ以上どこを盛るつもりなのかな……?
「……ああ、久方ぶりだね、スオゥ。この間、頼んでいたものが出来てるかと思って寄ってみたよ」
彼か彼女かは知り合いなんだろう、特に驚く素振りもなく、獏くんはいつも通りの笑顔で挨拶していた。
呼んでた所を聞く限り、この人はスオゥさんって言うのかな?
内心戸惑いつつ思った。
獏くんの知り合いって、何かと個性的な人が多いよね……。
王様と付き合うにはそれなりに個性がないと付き合っていけないって事かなぁ……?
そういえば……今獏くんが頼んでるものがって言ってたけど……?
一体何を頼んだんだろ……?多分、服関連だよね…?
怖いような、楽しみのような……ちょっと複雑……。




