表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生活を異世界で。  作者: 凍々
街へ連れて行って貰った時のお話……です。
51/114

素敵な贈り物です……!

 デザートまで食べ終わって満足感に浸っていると、アサさんが奥から何か平たく長い包みを持ってきた。お土産かな?

 布に包まれたそれをそっと私達の前に置いて、居ずまいを直すアサさん。

「ん?これは何だい?アサ爺?」

 てっきり獏くんが頼んだのかと思ったけれど、疑問を浮かべている所を見ると、どうやら彼も知らないらしい。

「ほほ、これは私からの心ばかりの品でございますわい。ご成婚のお祝いに、どうぞお納め下さい……」

 そう言って、アサさんは頭を深々と下げて、その包みをスッとこちらに寄せた。

 そんな……お祝いだなんて……!

 嬉しいけど、あれだけ食べて迷惑掛けた後に受け取りにくいなぁ……。

 しかし……中身は気になるよね……。

 ウズウズする私の気持ちを察したのか、獏くんが声を掛けてくれた。

「……いつも気遣いすまないね、アサ爺。痛み入るよ。そんなつもりで来た訳ではなかったけど、折角お祝いだって言ってくれたのなら貰っていこうか、ねぇ、ひぃちゃん?」

 獏くんがそう切り出してくれたので、私はおずおず頷いた。

「……彼女も喜んでいるみたいだ。では、これはありがたく頂戴するよ。……ちなみにどんなものなのかな?」

 では、失礼して、とアサさんがずいっと前に来ると、包みをそっと開いてくれた。

 そこには綺麗に畳まれた服が入っていた。

「これって……着物……ですか?」

 見えたのは、濃淡のある青色の生地に、淡桃色の花弁が舞っているような柄。花は恐らく桜だろうか。風に吹かれて桜の花弁が青空を舞う春みたいな風景が感じられる。

 え?これは結構お高いやつでは……!?

「ええ、そうです!これは昔、知り合いから人間界の土産だと頂いたものなのですがの……私では着るに着れませんで……」

 笑顔の中に少し残念そうな表情を浮かべて、アサさんはそう言った。

 着物の着付けって結構難しいんだよね。私も着たのは成人式の時に着付けてもらった限りだし……。亡くなったお祖母ちゃんは出来たんだけど……。

 ましてや女物の柄だし、幾ら小柄で細身のアサさんでも着る事は難しいよね……。

 アサさんが言うには、お店の中に時々装飾として飾る事はあったけど、普段はしまいっぱなしで出す事はなかったらしい。それと保存の魔術を掛けてあるから汚れは付かないし、ほぼ新品のものなんだって。

 確かに長い間しまわれていたとはいえ、虫食いも埃の一つもついていない綺麗なままだ。

 えぇぇぇぇ……こ、こんな素敵なもの、私が貰っちゃ不味いのでは……!?豚に真珠状態ですけど……!?

 受け取ると言ってしまったものの、物を目の前にしてしまうと、手を出すのがおこがましくなってしまう私がいます。

「ねぇ、獏くん……?」

 どうしようと相談しようと彼の方を見ると、着物を一点に見つめて微動だにしない。

 聞こえていないのかと思って、再度声を掛けたけど返答なし。

 驚いたように目を大きく見開き、口元は僅かに震えている。

 え?え??何か起きてるの??

 随分とただならぬ様子に具合でも悪いのかと、声を掛けようとしたその時だった。


 突如、獏くんが勢い良く立ち上がった。

 思わず出した手を引っ込めた。

 立ち上がった獏くんは、恍惚とした表情を浮かべて、ハアハアと息も荒い。

 え?ええ??な、何事が起きてるの??

「……良いよ……とても良い……!!!」

「は??」

「アサ爺……何て素敵なものを……!!心から感謝するよ!!」

 アサさんの近くまで寄って豪快に握手をきめる獏くん。

 相手が飛んできそうな勢いで握手した手をブンブン振ってる。

「よ、喜んで頂けたようで……な、何よりですわい……」

 明らかに引かれてるのもお構いなしで、獏くんは満面の笑みで高笑いであります。

 王様としての威厳って何だろうか……?少なくとも、アサさんの中の獏くんのイメージが変わっただろうという事は想像に難くない……。

「こ、これをひぃちゃんに……ふふふ……!!」

 笑い方に狂気を感じるのは私だけだろうか……?

 もしかして……私が着た所を想像して一人で盛り上がっちゃった系かな……?どんな想像をしてたかは……聞かないでおこう……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ