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新生活を異世界で。  作者: 凍々
街へ連れて行って貰った時のお話……です。
44/114

獏くんが……お怒りでございます……!

 久々に目を疑ってしまったよ。

 だってさ、今ここで獏くんに吊られてる少女が、あのアリーナっていうドラゴンだなんてさ……信じられないよ……。

 あの見上げるほどの巨体がこんなに小さな子になるなんて、どんなトリックがあったらそうなるのって話で……。

 でも、ロゥジさんもそう呼んでた所をみると、多分間違いないんだよね。

 異世界って本当不思議で一杯だよ……。


 戸惑う私に、いつも通りに獏くんが教えてくれた。

 ドラゴンという種族は、テラリアンに存在する6種族とは別に存在する種族で、個体差はあるけれど、総じて知能が高く、身体も頑強、寿命も長く、あらゆる環境に耐えうる適応性の高さから、各地で見ることが出来るんだそう。魔力も多いので、教えれば魔術を使う事も出来るんだって。

 ただ、あまり繁殖能力は高くないのか、個体数は多くなくて、結構レアな種族なんだって。地方によっては崇められるほど強大な力を持った個体もいるらしい。大体は各国の王家に仕える事が多くて、アリーナちゃんのように龍騎車を牽いたり、国防に携わったりしているんだってさ。

 彼等の主な生息地は特定されていないけど、数十年に一度、この世界の中心にあるミトラの奈落が大きく吹き上がり、各国に降り注ぐ事があるんだって。その直後で各地にドラゴンが増える事から、学者さんの見解では、ミトラの奈落付近にドラゴンの里みたいなのがあるのではないか、って話になってるそうです。

 んで、何でアリーナちゃんは人の姿を取れるか、って話だけど、レアな中でもさらにレアな部類、ドラゴニアって呼ばれているらしいけど、その彼等はドラゴンの身体と人形の身体と両方を持っていて、彼女もそのドラゴニアにあたるんだって。

 飛行能力と魔力の一部と引き換えに自由に身体の変化が出来て、姿は住む地域の住民に準拠して変化、言葉も話せるようになるんだとか。


 獏くんの説明があって、漸く目の前の少女をアリーナちゃんと認識する事が出来た私。出来たというか、するしかないと言った方が正しいかもだけど、そんな感じ。

 とりあえず往来でこれ以上騒ぎになってはと、大通りから外れて噴水広場まで移動してからの続きになってます。

 そして、目の前には正座しているロゥジさんとアリーナちゃん。その前に仁王立ちの獏くんと隣に私がいる体制でございます。

 二人の表情は、青ざめ震え、絶望感に満ちている。獏くんの顔にもう笑顔はなく、般若のような表情で二人を見ている。

 傍目から見てもなかなか修羅場な状況だとお分かり頂けますでしょうか……!巻き込まれた私の身の置き所がない状況も伝わっていると幸いですが……!

「ロゥジ……これはどういう事だ……?お前達には待機と伝えたはずだが……?」

 ……おっと、まだ獏くんお怒りでした。目が蛇みたいに見えるのはきっと気のせいじゃないよ?背後にメラメラと黒いオーラ的なものが見えるのも気のせいじゃないよ?

 獏くんの言葉に震え上がる二人。

「そ、それは……!」

「……あ、ありーながわるいのです……!あるじさまはわるくないのです……」

 アリーナちゃんとロゥジさんの話では、待機中につい居眠りをしてしまったロゥジさんの隙を見計らって、アリーナちゃんがこっそり人形に変化して脱走、それに気付いたロゥジさんが追っかけてきて今に至る……と。

 何故脱走してしまったかと獏くんが彼女に問えば、

「そのう……まっているのがたいくつになってしまったのと……ひかげさまともあそんでみたかったのです……」

 ちなみに、私をママと呼んだのは、ちょっとした悪戯心からだったらしい。本気ではなかったって言われて、それはそれでショックは受けてるんだけども……複雑な心境ですわ。

 私が思った以上に戸惑ってしまったので、彼女としても悪いとは思っていたらしい。

「……なるほど……事情は分かった……が、私の指示はそんなに軽いものと取ったという事でいいか?」

 必死の表情で即座に首を降る二人。まさか、こんなに獏くんが怒るなんて想像してなかったんだろうな……私もだけど。

 ああ……アリーナちゃんもう泣きそうになってるよ……。ロゥジさんも死にそうなくらい憔悴してるし……

 何だか見ていて辛くなってきたよ……!

 声を掛け辛かったので、そっと隣の獏くんの袖をちょいちょいと引っ張った。

 ばっと鬼気迫る顔のままでこちらを見られたので、思わず泣きそうになったけど、グッと堪えて……!

「ね、ねぇ……獏くん……その辺りで……もう……」

 気迫に押されてしまって、上手く言えなかったけど、獏くんには伝わったみたい。

 はっと気付いたように、彼はすぐに表情をいつもの穏やかな笑顔に戻して、

「ああ……ごめんね、ひぃちゃん……!怖がらせちゃったね……」

 よしよしと慰めるように、私の頭を撫でてくれた。

 獏くんのあまりの切り替えの早さに、二人はポカーンと呆気に取られているようだった。うん、私もだけど。

 獏くんに、私もう気にしてないよ、大丈夫と伝えると、

「……そう?ひぃちゃんたら優しいんだから……!まあひぃちゃんがそう言うならいいんだけど……へへ」

 先程までの鬼気迫る顔はどこへ行ったのか……?でれモードの獏くんを見ると、この人二重人格じゃないのかと疑いたくなっちゃうよね。

 でれていた獏くんがパッとまた二人へ視線を向ける。

 先程よりは落ち着いたのだろうか、怒りはあるものの、表情は和らいでいるように見えた。怖いは怖いけどね。

「……今回は、彼女の恩情に免じて不問とする!ただし……二度はない!心に刻んでおけ……!!」

 獏くんの言葉に、はっと我に返った二人は、同時に土下座していた。

「「はい!ご恩情心より感謝いたします!!」」

 ふう……終わり良ければそれで良しという事かな……?

 でも、言っていいかな。

 何なの、この終わり方……!

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