表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生活を異世界で。  作者: 凍々
街へ連れて行って貰った時のお話……です。
35/114

目覚めたら……そこは?

 気絶から目を覚ますと、ベッドの上だった。

 どうやら車内にあったのに寝かされてたみたい。

 もはや恒例になりつつあるこの流れでございます……。

 えっと……私何してたんだっけ?

 確かにお出掛けに行こうってなって、おめかしもさせてくれて、獏くんと一緒にドラゴンが牽く龍騎車とかいう乗り物に乗って、お弁当食べたり、絶景を見た所までは覚えてるんだけどな……。

 でも、何で気絶したんだっけ……うっ!思い出すと頭が……!

「ひ、緋影さん……?」

 声のする方へ顔を向けると、そこには獏くんがいた。

 とてつもなく申し訳無さそうな、冷や汗ダラダラの悲痛な表情で、ちょっと離れた先で正座している。こちらの様子を伺っているようだった。

 しかし、急に何で名前呼びなの?逆にむず痒いんだけど……。

「そ、その、気分はど、どうでしょうか……?」

 ちょっと頭が痛いだけで他は何ともないって伝えるけど、獏くんの表情は代わりなかった。

 んー?何だか様子がおかしいよね?まるで何かやらかした後みたいな……。

 そこで、はたと思い出す事があった。

 獏くんが何か大事をやらかして謝りたい時に、普段はあだ名呼びなのが、名前呼びで敬語チックになる事を……!

 そして、ついでに思い出してしまった気絶の訳を……!


「……獏くん」

「は、はい!」

 私の呼び掛けに声が裏返ってるねー。確定だねー。

「私に何か言う事があったりしないかなー?」

「そ、それは……!」

 私は獏くんと目を合わせようとするけど、彼の目が泳ぐ泳ぐ。

 何も言わずじと目で見つめていると、彼が折れて、全力で土下座の体勢を取って、ごめんなさい!の一言。

「折角、ひぃちゃんの初龍騎車の搭乗だったから、ちょっとしたサプライズをと思って、ロゥジとアリーナに頼んでおいたんだけど……思ったより張り切っちゃったみたいで……」

 通常あんなスピードで降下する事はないんだって。あれは完璧にアドリブが入っていたって事だね。忖度とも言うのかな。

「ほら、ひぃちゃん絶叫系マシン好きだったから、喜んでくれるかと思ったんだけど……違ったみたい……ですね……」

 本当に申し訳ない!とまた深々と頭を床へ下げる獏くん。

 うん。獏くんが言う通りで、アトラクションとして好きな部類に入るけど、あれは絶叫系ってレベルじゃないよ?下手すれば絶命系だったよ??身の危険をありありと感じてたよ?

 はあ……何と言うか……色々と規格外な人だよね……。

 ベッドから抜けて、獏くんの側へ。獏くんはまだ頭を下げたままだった。

「もう……顔を上げてよ、獏くん」

「でも……ひぃちゃん怒ってるだろ……?がっかりもさせちゃったしさ……」

 ……もう怒りとか通り越してこっちは呆れてるの!

 とりあえず、下がったままの彼の頭をよしよししてあげた。

「……もう怒ったりはしてないよ、驚いてるだけ。私の事思って頼んでくれたんでしょ?だったらもういいよ。許す!」

 私の言葉に、がばりと顔を上げた獏くん。その目は潤んでるし、鼻は赤くなってるし、唇なんてわなわな震えてるし。

「ひぃちゃん……何て心の広い……!やっぱりひぃちゃんは俺の最愛だよ……!!」

 いつものように抱き付こうとした獏くんを掌で制止した。待て!ってな具合で。犬か。

「えぇ?そんなぁ……」

 お預けをくらった彼が悲壮な表情を浮かべている。

 こらこら、大の男がそんなに情けない声を出さないの!


 待ての姿勢のままで私は言った。

「ただし……条件付きで許してあげます」

 いつも色々としてもらってる側だし、過去の狼藉がある身としては、言っちゃいけないとは思うけど、今回ぐらいはいいよね?

「じょ、条件付きって……?」

 そこで獏くんは驚いた顔でごくりと息を飲み込む。

 そして真剣な眼差しが私に。そんなにまじまじと見られると、恥ずかしいんだけど……!

 と、言うか、その許す条件を考えてなかった!何か勢いで言っちゃった!

 待って!えっと……どうしよう!?内心で焦る私。

 ちょっとの間、考えて考え抜いた結果、口から出たのは……。

「……お、美味しいもの……沢山くれたら……で、いいよ」

 はい、考え抜いた条件がこれです。笑わないで!

 安直というか、鉄板というか、安牌というか……情けない。

 とてもアラサーの考えとは思えないよね。でも他に思い付かなかったのよ……!

「勿論だよ!ひぃちゃんの望みなら幾らでも!!」

 さっきまでの表情をがらりと変えて、満面の笑みで元気よく答える彼。すっきり憑き物が落ちたような爽やかさもプラスです。

 そして抱き付かれた。ちょ、まだ待てしてますけど!

 まあ、今回はいいや。少しは反省してるみたいだし。

 但し……次はないからね?ないよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ