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新生活を異世界で。  作者: 凍々
街へ連れて行って貰った時のお話……です。
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今一度、外へ。その2

 出掛ける事は決まったけど、獏くんの都合は大丈夫なのか聞いてみた。

 いつでも何処にでもって言ってたけど、そんなにホイホイ出歩いてたら、国のトップとして不味いんじゃないかと思ったので。

「え?俺の仕事が大丈夫かって?ひぃちゃんは心配しなくて大丈夫なのに……。そんな……俺の心配までしてくれるなんて……!」

 嬉しいよ!と涙ながらに抱き付かれましたよ。もはやテンプレに近いよね、この展開。

 獏くんが言うには、今日の分は危急のものを終わらせてあって、それ以外は特に急ぎのものではないから問題ないって。そうでなくとも、私といつでも出掛けられるように、毎日少し先まで仕事を終わらせてあるんだとか。それに、優秀な部下がいるから任せて大丈夫なんだって。

 おお……出来る男は先まで見越してるのか……凄いなぁ。

「本当は今、他国から若干喧嘩吹っ掛けられてるんだけどね……。でも、俺の一番は勿論、ひぃちゃんだからさ!」

 ……今、さらっと物騒なワードが聞こえたね?

 いやいや!国の命運と嫁さんを秤にかけちゃ不味いよ……!

 別にね、「仕事と私、どっちが大事なのよ!!」なんて、ドラマでありそうな台詞を考えもしないし、言う気もない。

 側に居てくれるだけでも嬉しいし、居なければいないで寂しいとは思うけどね。


 そんな重要な事柄があるなら、別の機会でも……と、そっと断りに入ったら、獏くんが表情を変え、ガッと私の両肩を掴み、とても必死な様子で語り掛けてくる。

 あ、圧が……!目力が半端なく強い!背後から何かオーラ出てる!怖い、怖いって!

「何言ってるのひぃちゃん!折角、折角出掛ける気になってくれたのに!!」

「え?だって……」

「ひぃちゃんがやりたいって事が俺のやりたい事なんだ!だから……ひぃちゃんは我慢しなくて良いんだよ?もう、ひぃちゃんは本当に控え目なんだから……」

 獏くんは途中から穏やかな口調に戻って、いつもの微笑みを湛えながら、私の頭をよしよししてくれた。

 えぇぇぇぇぇ……。

 言ってる事はまともっぽく聞こえるけど、何か違う、ずれてるよ……!

 他国から喧嘩売られてるって、つまる所侵略されそうって事だと思うんだけど。その話を聞いてなかったらなー、多分嬉しかったなー。

 その気になれば一人で殲滅出来るから!と笑顔で言われたよ。

 相手がどれだけの規模で攻めるつもりかは全く想像がつかないけど、この彼ならやりかねない……!とその時思ってしまった。

 本当に大丈夫なのかと、念を押して聞いてみると、スッと目を反らされてしまった。あ、これは何かあるよー?

 そして、半ば強引に、引きずられるようにして部屋を出る事になったのであります。解せぬ。


 お決まりの転移で、気づけば部屋から外に出されてしまった。

 空は相変わらずの夕焼けのような色だった。時間はちょっと分からない。空気は冷えていて、少し肌寒く感じた。

 一面の草原の遠く向こうに城のような大きい建物が見える。もしかして、私達が住んでるのはあのお城なんだろうか。かなり離れた位置でも大きいって分かる。凄いなー!

 そんなワクワクしていた私を余所に、獏くんが私の頭にそっと手を翳すと、その手からキラキラと光が砂のように降り注いできた。

 光の砂は私の体の周りをゆっくりと取り囲むように流れ、繭のように私を包んだ後に一つ大きく光って、サラサラと霧散していった。

 ……うう、眩しい!何が起きてるの?

 急な光に目が眩んでしまったけど、次第に視界が戻ってきた。

 目の前には、笑顔の獏くん。いつもの神父さんが着るような服ではなく、軍服の様な固い感じの服装に変わっていた。黒を基調に、詰襟、胸に勲章、腰には帯剣してる。軍帽がないのが残念。

 ふ、服が変わってる!いつの間に着替えたの!?

「ふふふ……こんな事もあろうかと、準備しておいてよかったよ。まあ、ひぃちゃんは何着ても似合うんだけどね!」

 何着ても?私は普段の格好のはずじゃ……?

 ん?そう言えば、肌寒さが無くなったのと、服がちょっと重くなったような……?

 はたと気付いて、自分を見た。そして、驚く。

「な、何で!?」

 私の服も変わってましたよ。

 こっちの世界に来てから普段主に着ていた白無地のワンピースじゃなくて、黒で襟つき長袖のシャツワンピースに、袖丈がゆったりした腰元ぐらいまでの丈の灰色のファーコートって言う感じの服装にね!パッと見喪服っぽいと思ってしまった私。

 ただの黒だけじゃなくて、銀色がかった黒の糸で花のような刺繍至るところにしてあって、思わず見とれてしまった。足元まであるスカートの丈からは黒のエナメルっぽい靴も見える。

 え?つまりさっきの光の演出は……変身シーン的なあれか!

 今までこんな格好した事ないから……恥ずかしいんですが!

 戸惑いと気恥ずかしさにオロオロする私。獏くんはそんな様子を見て、嬉しそうに笑っていた。

「……さぁ、行こうか!」

 手を取られて歩き出す私。

 え?この服装で行くの?本気で?

 一面何処見ても草原しか見えないんだけど……ここから何処に行くのさ……?


 もしかして?ただのお出掛けじゃないのかもしれない……!

 とりあえず、何があっても大丈夫なように、秘かに気合いを入れて望む事にした私でありました。

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