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新生活を異世界で。  作者: 凍々
異世界に来る事になったお話……です。
3/114

ここは何処でしょうか…?

 ☆


 またも暫くの後。

 抱きついたもののこのあとどうしたら良いのか分からず、お互いに喋る事もなく、途方にくれつつあったその時。

 ぐぅぅぅぅぅ。

 静寂を切り裂いたのは他でもない私のお腹の音でした。雰囲気が台無しやん……。ある意味タイミング良いけども!

 「あ……、えっと……」

 「……と、とりあえず、ひいちゃんは安静にしてて。何か食べれそうな物持ってくるから。すぐ戻ってくるから!」

 「う、うん。宜しくね、貘くん……」

 背中から回した腕を名残惜しくも解くと、貘くんはすっくと立ち上がって駆け出して行ってしまった。ほんの少しだけ横顔が見えたけど、耳まで真っ赤だった。

 それからぱたり、と少し遠くで扉の閉まる音がして、わたしは一人になった。

 一人になり、途端に先程の事態を思い出す。寝起きの正拳突きとか、いきなり抱きつくとか、それなりの事が出来そうな雰囲気な時にお腹が鳴るとか……。もうね……。

 「は、は、恥ずかしすぎる……!!穴があったら入りたい……!」

 顔を手で覆ってベッドの上で左右にゴロゴロと悶える。ついでに近くにあった枕なんかをバシバシしてみたりとか。まるでラブコメの1シーンみたいとか自惚れたりして。

 でも、青春真っ盛りのJKとかがやればとてもほっこりする場面だと思いますが、残念ながらアラサー女子がやっても虚しいだけでした、はい。

 ……現実を見よう。

 ある程度落ち着いたので状況の把握をしようと試みる。

 まずは自分の身体を手でそっと触って確かめた。確か…怪我をしてたって聞いたけど何処にも痛みはない。手足も動くし大丈夫そう。拳も振るえるので問題なしと。服も以前着ていた血塗れのではなくてシンプルな無地の白のワンピースになっていた。やけにスースーすると思ったら下着がないのに気付いて再び赤面。

 あれ……?結構気合い入れた下着があったはず……。気を失ってた間に着替えさせられたと……。

 て事は?貘くんに……見られた……だと……?あのネットで○万した下着を!明らかに期待してましたのアレを!

 さらに顔が熱くなってきた。顔から火が出るとはこの事か……!今なら目玉焼きが頬っぺたで焼ける自信ある。そのくらい恥ずかしくて死にそう。

 で、でも結婚まで約束してくれた人だし?それなりの展開にはならざるを得ないだろうし?むしろそうならないと困るし?

 ……そうだ!動揺している場合ではない!夫婦になるなら当たり前のことだよね!出来れば意識のある時にそうなってほしかった感は否めないけど。

 と思ったらちょっと落ち着いてきたかも。深呼吸、深呼吸……。

 ……気を取り直して回りを見てみよう。

 と、思ったけどよく見えない。視界がぼんやりしてる。そっか、眼鏡がないんだ。

 私はど近眼の上、乱視が入っているので眼鏡もしくはコンタクトがないと生活に支障をきたすレベルである。ちなみに、貘くんが眼鏡の方が好きって話だったのでつい最近は眼鏡生活でした、へへ。

 辺りを手探りで探してみる。……少なくとも近くにはないみたい。

 目を細めて回りを見回すとベッドサイドに棚みたいなものが見えた。近づいてみると眼鏡発見!何だか妙に埃っぽく汚れていたので、上着の端っこでふきふきっと。

 よし、とりあえず綺麗になったかな。眼鏡を装着してクリアになった視界で改めて周囲を見てみると……。

 部屋の中は比較的黒系統で纏まっていた。その中でも深紅の布地に豪華な金刺繍のされたカーテンが目を引いた。その側の窓にはステンドグラスが嵌まっていてドラゴンの様な生き物がデザインされていた。外からの光を通して床に模様を写し出している。床には凄く高級そうな豪華な絨毯が一面に引かれている。

 私が今腰掛けているベッドもシングルではなく、ダブルでもなく、クィーンもしくはキングサイズです。それより大きいかも?しかも見上げれば女子憧れのレースのフリルの天蓋付き。こんな大きなの寝たことない。自分の家だったらそれだけで部屋が埋まっちゃうよ?

 引いてある上掛けが毛皮なのか何かの織物なのか分からないけど、フカフカで暖かいし手触り最高です。思わず頬擦りしてしまう。マットレスもフッカフカでスプリングも適度に効いてて寝心地良すぎです。シーツすら手触りが自宅のと違う……だと!

 壁には鹿の首だけの剥製……かと思ったけど何かよく分からない獣の剥製が飾ってありました。角がめっちゃ刺々しいし目が真っ赤で恐い。何あの生き物…。夜見たら泣くレベルです。

 あと、大きな盾に西洋風な剣が交差して飾ってあった。よく中世のお城とかにありそうな内装っぽい。

 高めの天井にも何か模様が入ってる。魔方陣みたい。あとお城とかにありそうな豪華なシャンデリアが設置してあって部屋を明るくしている。スワロフスキーみたいなキラキラのガラスが何本も下がっている。キラキラしてて凄く綺麗なのに全然眩しくない。

 ……と、ここまでお部屋を拝見して思った事は。

 「知らない場所だ……確実に」

 分かったのはそれだけです。語彙力が足りなさすぎてレポーターには向いてない事もはっきりしましたが。

 分かった途端に込み上げてくる不安と震え。両腕を掴んで震えを止めようとしたけど無理だった。自然とベッドの上で小さくなって堪えた。

 私は私で間違いない。多分貘くんも格好が違うだけで同じはず。だけど、意識を失う前に見たあの景色は?見たことないものばかり並んでるこの部屋は?

 頭の中がぐるぐるしてきた。サプライズだっていうなら正直勘弁してほしい。

 とりあえず、貘くん……早く戻ってきて!!

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