私、お料理します!その2
まず探すのは……お肉だね!
近くに食材百科を置いて、一つ一つ、指差し確認しながら、探してみる。
確か、この辺りに……あった!
私が手に取ったのは、油紙に包まれていたお肉。そっと包みを開けると、若干青味がかった食欲をそそらない色のお肉が現れた。
これはギャークっていう生物のもので、テラリアンでいう所の鶏なんだって。繁殖させやすいのと適応力が高いから、結構全域で食べられてるらしいよ。ただ、体長が小さいものでも2mぐらいあるらしいけど。怖い怖い。
色に目を瞑れば、普通の売ってる鶏モモ肉なんだけどな。新鮮な張りもあるし、皮も油がのってるし、結構美味しいと思う。
衣を付けて揚げるとはいえ、ちょっと出来上がりは想像出来ないけど……。
違和感を抑えつつ、お肉は一旦置いて、次を探す事にする。
次に探したのは、肉の臭み消し兼味付けに使う生姜にあたるもの。これも野菜がいる辺りをさっきと同じく、指差し確認しつつ探していく。
ちょっと奥にあったけど、何とか見つけられた。
手に取ったのはラグビーボール状の黒い塊。大きさもそれくらいなんだけど、見た目よりはずっと軽くて驚いた。
これはザシュっていう果物。テラリアンの香味として使われているんだって。熱を加えるとより香りが立つらしい。
こんなには使わないので、端から2㎝ちょっとを切り取ってから戻しておいた。ほんのちょっとの欠片でも生姜っぽい香りがしてた。うん、良い香り。
後は付け合わせに使えそうなヒーリャっていうキャベツに似てる葉野菜を選んで、材料は準備終わり。
さてと、多分もう30分は経ってるはず。
そろそろ作り始めないと、朝ごはんの時間に間に合わないね。
後ろを振り返って、ベッドの様子を伺うけど、獏くんが起きている素振りはない……かな?
視線を戻して料理開始ですよ。
何しろ久しぶりに料理らしい事をするので、大変緊張しております!でも、包丁持ってる手が震えてるのは気のせいだよ?
まずは味付けのタレを作ろう。醤油っぽいソース、塩と胡椒を少々と擦り下ろしたザシュの絞り汁、少しばかりのお酒をボウルに入れて良くかき混ぜる。本当はちょっとコンソメを足すと良いんだけど、残念ながら見つけられなかったので今回はなし。それからちょっとだけ小指に付けて味見してみる。
……うん、大丈夫そう。思った通りにはなってる。
次はギャークの肉を切り分けていく作業です。切る前に味が染み込みやすくなるように、表裏を包丁で少し刺しておいた。筋とか余計な脂分も取った方が良いんだろうけど、私がそれをやると食べる分まで削ってしまいそうなので、そのまま切っていきます。一口大のつもりが大小様々の乱切りになってしまったのは内緒。
ともあれ、切り分けた肉をタレに入れて、味が染み込むように良く揉み込んでからちょっと置いておく。
その間に揚げる準備。オリーブオイルみたいな薄い緑色をした油をコンロに置いた鍋に注いで、火を付けた。火加減は中火ぐらいにして、温まるのを待つ。
ちなみに、コンロっぽいそれは獏くんが用意してくれたもの。鍋を据える場所には魔法陣みたいのが書かれていて、そこから火が出てる。箱みたいな外見なんだけど、中に動力になる魔力を込めた魔石が入ってるんだって。スイッチを入れると、魔法陣が作動する仕組みなので、魔法が使えない私でも使えるのです。元の世界とはちょっと作りが違うけど、ほぼ同じように使えるので助かってる。
タレからお肉を引き上げて、粉を付けていると、油の温度が適温になってきたのか、パチパチと静かに弾ける音が聞こえた。
よし、揚げよう!
粉の付いたお肉を鍋の縁に沿うように静かに入れると、ジュワジュワとお肉の揚がっていく良い音がした。
音だけでも美味しそう。今ならそれだけでもご飯食べれる。
涎が出そうなのとつまみ食いをしたくなる気持ちを必死に抑えて、一生懸命揚げるのに注力する私でありました。
「……出来た!」
数十分後、唐揚げが出来上がりました!
大皿の上にヒーリャを引いて、こんがり色の唐揚げを山盛りに積んでみました。彩りも良さげ。熱々出来立てですよ。
そういえば、揚げたらお肉の青みがなくなったけど、代わりに若干緑がかったのは何故なんだろう……。不思議だねー。
頑張ったよ私!形は不揃いだし、ちょっとだけ揚げ過ぎた感もあるけど、それでもやりきったよ!
私は出来上がった料理を前にグッとガッツポーズを決めた。
私もやる時はやれるんだぞ!やれば出来る子ですから!




