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新生活を異世界で。  作者: 凍々
異世界に来る事になったお話……です。
27/114

私、お料理します!その2

 まず探すのは……お肉だね!

 近くに食材百科を置いて、一つ一つ、指差し確認しながら、探してみる。

 確か、この辺りに……あった!

 私が手に取ったのは、油紙に包まれていたお肉。そっと包みを開けると、若干青味がかった食欲をそそらない色のお肉が現れた。

 これはギャークっていう生物のもので、テラリアンでいう所の鶏なんだって。繁殖させやすいのと適応力が高いから、結構全域で食べられてるらしいよ。ただ、体長が小さいものでも2mぐらいあるらしいけど。怖い怖い。

 色に目を瞑れば、普通の売ってる鶏モモ肉なんだけどな。新鮮な張りもあるし、皮も油がのってるし、結構美味しいと思う。

 衣を付けて揚げるとはいえ、ちょっと出来上がりは想像出来ないけど……。

 違和感を抑えつつ、お肉は一旦置いて、次を探す事にする。

 次に探したのは、肉の臭み消し兼味付けに使う生姜にあたるもの。これも野菜がいる辺りをさっきと同じく、指差し確認しつつ探していく。

 ちょっと奥にあったけど、何とか見つけられた。

 手に取ったのはラグビーボール状の黒い塊。大きさもそれくらいなんだけど、見た目よりはずっと軽くて驚いた。

 これはザシュっていう果物。テラリアンの香味として使われているんだって。熱を加えるとより香りが立つらしい。

 こんなには使わないので、端から2㎝ちょっとを切り取ってから戻しておいた。ほんのちょっとの欠片でも生姜っぽい香りがしてた。うん、良い香り。

 後は付け合わせに使えそうなヒーリャっていうキャベツに似てる葉野菜を選んで、材料は準備終わり。


 さてと、多分もう30分は経ってるはず。

 そろそろ作り始めないと、朝ごはんの時間に間に合わないね。

 後ろを振り返って、ベッドの様子を伺うけど、獏くんが起きている素振りはない……かな?


 視線を戻して料理開始ですよ。

 何しろ久しぶりに料理らしい事をするので、大変緊張しております!でも、包丁持ってる手が震えてるのは気のせいだよ?

 まずは味付けのタレを作ろう。醤油っぽいソース、塩と胡椒を少々と擦り下ろしたザシュの絞り汁、少しばかりのお酒をボウルに入れて良くかき混ぜる。本当はちょっとコンソメを足すと良いんだけど、残念ながら見つけられなかったので今回はなし。それからちょっとだけ小指に付けて味見してみる。

 ……うん、大丈夫そう。思った通りにはなってる。

 次はギャークの肉を切り分けていく作業です。切る前に味が染み込みやすくなるように、表裏を包丁で少し刺しておいた。筋とか余計な脂分も取った方が良いんだろうけど、私がそれをやると食べる分まで削ってしまいそうなので、そのまま切っていきます。一口大のつもりが大小様々の乱切りになってしまったのは内緒。

 ともあれ、切り分けた肉をタレに入れて、味が染み込むように良く揉み込んでからちょっと置いておく。

 その間に揚げる準備。オリーブオイルみたいな薄い緑色をした油をコンロに置いた鍋に注いで、火を付けた。火加減は中火ぐらいにして、温まるのを待つ。

 ちなみに、コンロっぽいそれは獏くんが用意してくれたもの。鍋を据える場所には魔法陣みたいのが書かれていて、そこから火が出てる。箱みたいな外見なんだけど、中に動力になる魔力を込めた魔石が入ってるんだって。スイッチを入れると、魔法陣が作動する仕組みなので、魔法が使えない私でも使えるのです。元の世界とはちょっと作りが違うけど、ほぼ同じように使えるので助かってる。

 タレからお肉を引き上げて、粉を付けていると、油の温度が適温になってきたのか、パチパチと静かに弾ける音が聞こえた。

 よし、揚げよう!

 粉の付いたお肉を鍋の縁に沿うように静かに入れると、ジュワジュワとお肉の揚がっていく良い音がした。

 音だけでも美味しそう。今ならそれだけでもご飯食べれる。

 涎が出そうなのとつまみ食いをしたくなる気持ちを必死に抑えて、一生懸命揚げるのに注力する私でありました。


「……出来た!」

 数十分後、唐揚げが出来上がりました!

 大皿の上にヒーリャを引いて、こんがり色の唐揚げを山盛りに積んでみました。彩りも良さげ。熱々出来立てですよ。

 そういえば、揚げたらお肉の青みがなくなったけど、代わりに若干緑がかったのは何故なんだろう……。不思議だねー。

 頑張ったよ私!形は不揃いだし、ちょっとだけ揚げ過ぎた感もあるけど、それでもやりきったよ!

 私は出来上がった料理を前にグッとガッツポーズを決めた。

 私もやる時はやれるんだぞ!やれば出来る子ですから!

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