表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新生活を異世界で。  作者: 凍々
異世界に来る事になったお話……です。
26/114

私、お料理します!その1

 はい、何度目かの朝です!

 お腹の虫さんが騒ぎだす気配を感じて、その前に目を覚ました私。すかさず体を起こしつつ、グッとお腹を押さえた。

 全く……油断も隙もない……!とりあえず今は黙ってて……!

 私の()()思いが伝わったのか、お腹の虫さんはすっと息を潜めてくれたようで。うん、出来るならいつもそうしてくれるとありがたいかなー。


 まあ……()()()()は早く起きるつもりでいたんだけど。

 眼鏡を掛けて、隣を見ると、獏くんがいる。すぅすぅと静かに寝息を立ててまだ夢の中です。

 良かった、起こしてないや、と一旦胸を撫で下ろす。

 獏くんがいる理由は2つ。先日の件があったから。それで私がほんのちょっぴりキレたから。……ちょっぴりだよ?

 聞けばね、私が寝ついてから、ほぼ毎日深夜から朝まで作業してたんだって。目の下の隈も酷くなるわけだよ。

 気持ちはとても嬉しいけど、睡眠時間削ってまでの無理はしないで欲しい、と強く言ったら、分かった……ってしょんぼりした様子だったけど納得してくれた。

 私の事を思ってやってくれた事だって分かってるけど、大事な人がそれで倒れたりしたらなんて考えたくない。そんな事になったら、私は私が嫌になるもの。


 さて、回想も終わって戻ります。

 いつもは獏くんが早く起きてご飯とか作ってくれて、起こしてくれるんだけど、今日は特別。逆に起こしてあげるのです!

 え?普段からやれって?うっ……ご、ごもっとも……!

 昔から朝が弱くて、どうにも起きられないのを直さなくちゃ。

 今日を機にこれから頑張ります……!


 見えない世間からのご指摘に、内心大いに取り乱しつつも目的を達するべく動き出す私。

 その途中で再び獏くんの寝顔が目に入った。

 ふと、眺めながら色々と思う。

 ……あ、ちょっと笑った。良い夢でも見てるのかな?

 しかし、羨ましいくらい肌綺麗だし、睫毛長いなぁ。

 イケメンは寝てても絵になるよね……。

 こんなイケメンが私の旦那様で本当に大丈夫なのかなぁ……。

 おっと、つい見入ってしまった。いけないいけない……!


 獏くんはまだ起きそうにない。

 起こさないようにそっとあったかベッドを抜け出して、寒いとか思いつつ、向かったのはミニキッチンの区画。

 え?料理できないのに何でって?

 理由は……獏くんの誕生日だからですよ!

 実は彼の誕生日って私の誕生日からそんなに離れてないのです。なので、獏くんがお祝いしてくれた日から、私も数えてみて、それが今日って訳。

 この間サプライズで色々としてくれたじゃない?

 その時から決めてたのですよ……!私もサプライズでお祝いしてあげようってね!

 料理ベタで定評のある私だけど、唯一作れる料理があるのです。

 ふふふ……それはね、鳥の唐揚げ!!

 おばあちゃん直伝のメニューで、小さい頃からずっと親しんできて、それだけは上手く作れるようになったものなのです。

 実は獏くんも昔食べてくれた事があったけど、結構好評だったので、今回はチャレンジしてみようと思います!

 あんまりお誕生日っぽくはないけど、自信持って作れるのはこれしかないし、それ以外を作った所でダークマターを生み出してしまう未来しか見えない。そう自分で言い切っちゃうと中々悲しいけど……。


 ……さあ、気を取り直して掛かろうかな!!

 腕まくりをして、エプロン装着で気合いを入れてみた。獏くんも着けてたけど、フリル付きのピンクのエプロンって……趣味じゃないけど仕方ない。

 因縁の冷蔵庫を横目でちらり、すっと一息つく。

 先日はどうにも怖じ気づいてしまったけど、今回は心強い味方がいるんだなー!

 ふふふ、取り出したるは……この本ですよ。

 それは《テラリアン食材百科》、この世界で食べられている食材が挿し絵と調理法付きで詳しく載っているのです!

 この間、久々のお勉強ついでに見つけて、それからちょこちょこ読んでみてたら、色々と発見があった。

 獏くんが以前言ってた事だけど、こちらの世界には元の世界で食べられていた料理や調理法が多く伝わっている事と、それに使える食材があるって話。その話の通りで、この本には色々なレシピと一緒に書かれていた。

 明らかに元の世界ではお目にかからない、食べようとも思わない見た目の食材が、普段振る舞ってくれる様々な料理になるっていうんだから、凄いの一言に尽きますよ……。

 百科ってあるぐらいなので、結構分厚くて重い本だったけど、少しずつ読み進めていく内に、とあるページに目が釘付けになった。

 そこには、唐揚げ、とこちらの世界の言葉で書かれているではありませんか!久々の単語に嬉しくなって、そのページだけ穴が開くほど読んでしまったよ。

 いや……先人は偉大やね。


 はい!という訳で、今回は唐揚げを作ってみたいと思いますー。

 数日前からある程度、食材や器具の目当ては付けてあって、準備は上々。少しばっかりだけど試作と、イメトレもしてきたし。

 よし、始めるぞー!

 まな板と包丁、ボウルと揚げる鍋、油と小麦粉と調味料を用意してから、材料集めに進みますよ。

 ……さあさあ、久しぶりの冷蔵庫。御開帳でございます。

 開いてみると……、ひんやりした空気と共に、以前見た通りに中々カオスな光景が広がってる。前より悪化してる感じあるわ……。

 「うわぁぁぁ……!!」

 開けて早々、目玉っぽい何かと目が合っちゃったよ……!夢に出てきそう……。こら!団体様で見んなぁぁ!!

 ……ある程度知識は持ったし、とりあえずの気合いは入れてきたけど、やっぱり戸惑いは隠せないよね。は心臓にも悪いよね。思わず引いちゃったし、目を反らしちゃったもの。


 ……でも、今日はめげない!

 てか、こんな所で引いてたらこの先もこの世界でやっていけない!

 頭にかかった不安と弱気を払うように、強目に顔を振った。

 それから、気付け代わりに、バチっと頬っぺたを叩いて、いざ!!

 「……よし!頑張る!!」

 

 ……まだ料理してないけどね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ