思ったより大事でした……。
ティータイムはまだ継続してますが、丁度話のキリが良さそうなので、獏くんに思いきって聞いてみた。
「私も魔法使ってみたいんだけど……教えてくれる?」
私の言葉に驚いた表情を見せる彼。てか、ちょっとお茶吹いた。
「え?ひぃちゃんも魔術使ってみたいの?」
うんうんと頷く私。
少しでも獏くんの力になりたいし、身を守る術が欲しいし!
あとちょっとの憧れがあるし!女子としての!
言葉足らずだったけど、私の気持ちは獏くんに伝わったみたい。
「そっかぁ……気持ちは嬉しいんだけど……うーん……」
あれ?獏くんはあまり乗り気じゃないみたい。ちょっと困った顔してるなぁ……。私の予想と違うぞ……!
もしかして……というか、やっぱりというか、私が人間だから?
「……私、じゃ使えない、かな……?」
期待が外れたと思った私はガックリと肩を落とし、顔を伏せた。
「……いや?多分大丈夫だよ?」
「え?」
ガバッと顔を上げた私。まだ望みあったみたい!
「だってひぃちゃんには俺の魂が入ってるからさ、魔力に関しては問題ないよ。俺は別の事で心配があってね……」
心配?暴発させちゃうとか?確かに不器用さには定評のある私ですけども!
「……前にも話したと思うけど、この世界では魔力の枯渇=死に繋がる訳だ。本来人間であるひぃちゃんは魔力がないからこの世界では生きていけないんだけど、そこは俺の魂があるのと以前からの供給があったから大丈夫なんだって所までは話したよね?」
うん。確か、この世界に来た時に教えてくれた事だね。
「魔力を使う事で死んじゃうかもって事だよね……?」
真剣な顔で獏くんは頷く。
今、私にあるっていう魔力は獏くんから貸してもらっているようなものだけど、その魔力はこの世界から私を守る盾のようなものだ。私が魔力を使うって事はその盾を自分から削る行為に近いって事。つまり、死に急いでるのと同じって事だ。
……そこまでは全く考えてなかったわ。考えが浅かった。
「それとね、今までにこの世界にも人間はいたって話もしたよね?けど、彼等には魔力の耐性はあっても魔術を行使できた人はいなかったんだよ」
「……と、いう事はやっぱり……?」
「各種族で違うけど、魔術っていうのはこっちの世界で作られて行使されるものだから、ひぃちゃんにその魔術が合うかどうかが分からないのと、行使した事で体に予想外の負担がかかるかもしれないんだよね……」
えっと、つまり、使えるはずだけど、前例がないから何が起こるか分からない、って事で合ってるのかな??
「そう。教える分には問題ないけど、もしひぃちゃんに何かあったらって思うと……俺は不安でしょうがないんだ……」
悲しそうな、苦しそうな表情で語る獏くん。
それは本当に私の事を思って言ってくれている事だって、痛いほど伝わってくる。
軽い気持ちで言ったのを私は凄く後悔した。もっと考えてから話せば良かったなって……。
その後はお互いに言葉もなく、時間が過ぎていった。
私はさっきの後悔から立ち直れず、獏くんは何か悩んでいるような難しい表情で目を閉じている。
何か決めたのか、目を開きつつ、彼は一つ大きな溜め息をついてから、
「でも……使ってみたい?」
と私に静かに問いかけた。
え?いいの?
……ちょっとでも使えたら嬉しい。そしたら、獏くんのお手伝い出来るかもだし。
おずおず頷く私。彼はうんと軽く頷き返した。
「もう……ひいちゃんがそこまで思ってるなら、ちょっとだけ教えてあげるね」
危なくなくて、魔力をあんまり使わずに使える簡単なのをね、と獏くんはにっこり微笑んで言った。
獏くんありがとう!の前にお腹がぐぅぅぅぅとお返事してくれたよ!
また君か……!元気になって良かったね!




