義父襲来!?です!その2
パワフルお義父さんの笑い声はまだ続いている。肺活量が凄いのか、余程ツボに入ったのか分からないけど、良く笑う人だなぁ。
ただね、お義父さんが笑えば笑う程、隣にいる獏くんの機嫌が下がっていくんだけど。イライラしてるのか眉間の皺は深くなってるし、歯軋りの音まで聞こえてきたよ?折角のイケメンが歪む、歪んじゃうよ!
な、何て温度差のある空間なの……。南極と赤道直下ぐらいの差が見えるよ。その間にいる私はいずらい事この上ないんだけど、残念ながら逃げ場もなく、その温度差に震えるばかりですが。
このままではいけない、と私は思っていた。折角の親子なのに、拗れた原因が何かも分かってないけど、理想像を押し付けるのも違うと思うけど、出来れば少しでも仲良くして欲しいって。
嫁として、義理の娘として、何か出来る事ってないのかな……?色々考えてみたものの上手く答えが出ない。私に家族がいなくて、お父さんもお母さんもいないから……?
「……ん?ちょ、ひぃちゃん!?」
「……え?」
何やら私の顔を見て獏くんが慌てている。お義父さんも笑うのを止めて心配そうな表情でこちらを見ていた。
優しい獏くんがハンカチで目元を拭ってくれて初めて分かった。私、いつの間にか泣いてたみたい。さっき家族について思う所あったからかな……、まるで子供みたいだ、私って。慰めるように獏くんが肩を抱いてよしよししてくれた。うん、落ち着く。
「……ほうほう?お前さん達、中々見せ付けてくれるのう!」
私達を見ながら、お義父さんは意地悪く笑った。
はっ!?お義父さんが目の前にいたのを忘れてた……!真っ赤になってすすっと距離を取る私、名残惜しそうな獏くん。そんな目で見ないで!心が痛いから!
……なんやかんやあって、冷戦状態は解除されたようです。まぁ、良しとしよう。
獏くんがお茶を淹れて来てくれた。今日はミルクティー、甘味もあってホッと落ち着けるものだった。気遣いが本当にまめで尊敬する。
「落ち着いた?もしかして怖がらせちゃったかな?本当にごめんね……」
獏くんは悪くない。私がつい昔の事なんか思い出しちゃっただけなんだから。あと、自分の不甲斐なさにね。
とりあえず彼と目を合わせて笑ってみる。上手く笑えてるか分からなかったけど、獏くんはいつもの穏やかな表情で笑ってくれた。少しは安心してくれたかな?
「あー、仲良くやってる所悪いが、聞きたい事があるんじゃが……?」
置いてきぼりを食ったお義父さんが間に割って入った。獏くんが聞こえるぐらいの舌打ちをしている。怖い怖い!
「そう睨むな、聞きたいのはその娘子についてじゃよ、いいかね?」
私に?そう言えばさっき聞きたい事があるとか言ってた気がする。驚きながらもおずおずと頷く。
「ふむ、娘子よ、ヒィとか言ったかな?お前さん、何処から来たね?」
「!!」
ドキリとした。鼓動が大きくなって、目の前が暗くなる。
今まで何も聞かれなかったから、大丈夫なのかなって思っていたけどどうやら違ったみたい。
……やっぱり、話さなきゃいけないよね。
だけど、分かってもらえるんだろうか。私がこの世界の人じゃないって。




