義父襲来!?です!
☆前回までのあらすじ☆
優しくて奥手で純粋な彼氏とようやく結婚までこぎ着けた私!入籍しようと役場まで仲良く向かっていた矢先、謎の大爆発!!気づけば異世界に転移しちゃった!?彼氏も見た目は素朴系男子からV系イケメンに大変身でビックリ!彼氏もとい旦那様は実は異世界のある国の王様で……、って事は私王妃様になっちゃうの!?
驚きの連続でキャパオーバー起こしまくり!思わず気絶の連続で旦那様もビックリ!ついでに鉄拳も振るっちゃった☆
そんなこんなで慣れてきた矢先にお風呂場に侵入者!?火事場の馬鹿力でつい撃退したその人は……な、なんと!お義父様!?
……どうなる!?私!?でも、愛があればどうにかなる、よね!!
……はっ!?思わず妙な脳内ナレーションが流れた?わぁ、続きが気になっちゃうね!
でも、随分とアニメかラノベみたいな夢だったなぁ。どっちかと言えば少女漫画だったね。……疲れてるのかしら?
うん、夢じゃないからね!現実逃避は終わりです!
「……ひぃちゃん?大丈夫?」
獏くんの声にはたと現実に返った私でした。恐らくはまたまたまた気絶してたらしい。最近多いなぁ。
私の顔を物凄く心配そうな表情で覗き込んでいた彼。覗き込んでいるという事は……私を膝枕してくれてるみたいです。
普通は逆じゃないか……!どこまで出来た人なの……!優しさに耐えられず思わず顔を覆ってしまった。
「ふふ、もう、ひぃちゃんたら……恥ずかしがらなくてもいいんだよ?その、もう、ふ、夫婦、だし、さ?」
優しいんだけども、最後の歯切れの悪さが気になっちゃう。照れが混じってるそんな感じもいいけどね、逆に恥ずかしくなっちゃうんですけども!
暫し、お互いに照れ合う時間が続きました。
そう言えば、何か忘れているような?
……あ、思い出した!
「ば、獏くん!さ、さっきの、お風呂場の!」
一気に血の気が引く感覚に私は飛び起き、さっと獏くんの胸元を掴んでしまった。余程必死の形相だったのか、彼は苦笑いをしていた。
「ひ、ひぃちゃん落ち着いて!大丈夫!ちゃんと生きてたから!寧ろあの親父にはあれくらいやってもらって平気だから!」
「へ?」
獏くんは私を宥めるようにそう言い、離れた先を指差した。そちらへ視線を向けると、私達に背を向けて座る誰かが見えた。
「親父、彼女が目を覚ましたぞ!」
獏くんが声を掛けると、その人物はこちらを徐に振り返り、ニヤリと笑った。あれは間違いない、さっきの人だ!
彼はその場から急に姿を消すと、直ぐ様私達の目の前に現れた。空間を飛んできたみたいに。あれは獏くんが使ってたのと同じ魔法かな……?
目の前に現れたのは先程思わずアッパーを食らわせてしまったその人。獏くんの話では親父、つまりは義理のお父様。ご挨拶する前に拳で語ってしまうとは何という嫁なんでしょう……。
身長は獏くんよりやや低めだけど褐色の肌に筋肉質な体格。刺青と黒い瞳、山羊みたいな角は獏くんと同じだけど、角は片方が少し欠けてしまっている。銀色の髪は床まで届きそうな位に長め。髭もあるし、獏くんをワイルドにした感じに見えた。雰囲気は好々爺って感じの人だ。見た目は全然若く見えるんだけど。
改めて見てみると、確かに親子だと思うけど、どちらかと言えば兄弟みたいにも見えてしまう。確かクロム族は肉体的な老化がゆっくりだったはずだから、実際は結構年は離れてるんだろうなぁ。
「ほう!さっきの娘子だの?さっきは驚かしたみたいで悪かったなぁ」
と、開口一番いきなり謝られた。何故に。
いやいや、謝るのはこっちです……!
と、いざ土下座の体勢を取ろうと構えたその時、
「ひぃちゃん、この親父に謝る事はないからね。自業自得だから」
今までの獏くんとは思えない冷たい言葉が飛んだ。
あれ?謝るのを止められた。何故に?
「ガハハハ!バクゥの言う通りじゃ!さっきのはワシの不注意でな!まさかお前さんが来るとは思わんだ、ついつい悪い癖が出てしもうたわ!しかし、お前さん、いい拳を持っとるなぁ!」
顎を擦りながら、豪快な笑いと共にお義父さんはそう言う。
いい拳って……、しっかり覚えてらっしゃるんですね!もう、穴があったら入りたい!
「んで?何しに来たの、親父は」
「……ふぅと、笑い過ぎたわい。ほれ、この間手紙を出したじゃろ?様子を見に来ただけじゃが?」
やっぱり。あの時の手紙の件で来たって事なんだ。
「じゃあもう見れたろ?とっとと帰れ」
「いやいや、折角だからもう少しいるぞ?その娘子の話も聞きたいでな」
お義父さんの言葉にあからさまに嫌そうな顔の獏くん。仲が悪いとは聞いていたけど、予想以上に拗れてるなぁ。
お義父さん的には普通に接してるけど、獏くんが拒否してる感じかな。何だか思春期の親子みたい。微笑ましくもなくもない。
「……ひぃちゃん?」
ってそんな考えをしてたら笑顔で釘を刺された。目が笑ってないよー。ワタシ、ナニモ、オモッテ、ナイヨ?
獏くんの気迫に思わず片言になってしまった。目力が凄かったの、本当に!
「……彼女に何もなかったから今回は許してやるけど、指一本でも触れてみろ、いくら親でも容赦しねぇからな」
おお、ブラック獏くんになってる。黒いオーラを隠しもせず、お義父さんと向き合ってるよ。あら、テーブルに片足まで乗せて、完璧にメンチ切っちゃってる!ヤンキーっぽい!
こんな獏くんも格好いいなぁ……、何て後ろから見ていたら、振り返った彼の顔は物凄くにやけきっていた。あ、中身はいつもの獏くんだね。安心安心。
「ハッハ!言うようになったのぉ!見違えたわい!」
獏くんの威嚇もどこ吹く風でお義父さんはまた豪快に笑い出した。やっぱり、元国王様ってだけあって器が大きい。
……けど、お義父さん、さっきからめっちゃ唾飛んでます。