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新生活を異世界で。  作者: 凍々
式終わって……また一難あった時のお話……です。
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事前の説明はちゃんとしてくれたらもっと嬉しいかな……?

『……もう間も無く目的地に到着致します。降下致しますので今暫くお待ち下さい……』

 食べ終わって少しして、車内にロゥジさんのアナウンスが響いた。

 そんな中、獏くんは本を片手にお茶を飲んでて、優雅な食後の時間を堪能しているみたいだった。

 うーん、相変わらず何してても絵になるよね、獏くんって……つくづく見惚れちゃうよ。

 私は特にやれる事もないから、貰ったお茶を飲みながらこの後の事をぼんやりと考えたりしてた。

 ……まあ、私がどうこう出来る事柄じゃないんだけど。

 獏くんならきっと上手くまとめてくれるだろうから、その点は安心だよね!

 急に何かを思い付いたのか、読んでた本をパタリと閉じて、スッと立ち上がった彼。

 経験上なんだけど……何か思いがけない事が起こりそうな予感がするよね……。

 その場で少し背伸びなんかをした後に、私の方に向き直って、

「……ひぃちゃん、ちょっと食後の散歩でもしないかい?」

 と、笑顔で語りかけてきたのですよ。

 へ?散歩、とな??

「俺もそうだけど、ひぃちゃんもさ、朝から気が詰まる事ばかりだったでしょ?だから気分転換にどうかなって思ったんだけど……」

 確かにね……今日も朝から色々とあって正直グロッキー気味ではあるんだけども。

 今すぐとは言わないけど、ベッドで何も考えずにぐっすりお休みしたいぐらいの感じだけども。

 だから、気分転換ってのはとってもいいお話だとも思うんだけども。

 ただね……今ここって()なんだけど!?

 獏くんの提案に返答もできず、戸惑う私を流れるように抱き上げた彼。

 当然ながら満面の笑みでございやす。

「え!?ど、ど、どうするの……!?」

「ん?大丈夫大丈夫!俺に任せてくれれば平気さ!」

 ちょいちょいちょい!?説明になってないよ!?

 展開が分からずもがいてみるも、相変わらずの獏くんホールドから逃れる事も出来ず……。

 私を抱き上げたまま、獏くんは悠々と出口の前まで歩いて何やら呪文を唱え始めた。

 するとガチャリと鍵の落ちる音が扉から聞こえてきて、すぅっと扉が外へ開いていくではないですか!?

 強めの冷たい風が入り込んで、室内を駆け巡ってますが!?

『バ、バクゥ様!?な、何をなさっているのですか!?』

 扉が開くのとほぼ同時で、珍しく慌てた様子のロゥジさんのアナウンスが後方から響いている。

 スピーカーの方を振り返りもせずに獏くんは答えた。

「ああ、ちょっと彼女と食後の散歩に行ってくる。そのまま()()()()()から後から来てくれると助かるよ……」


 そんな事を言い終わるか終わらないかぐらいだったけど、獏くんはそのまま空に向かって足を踏み出した。

 え……このままじゃ……落ちる、よね!!!?

 散歩とか言ってたけどこのまま落ちてぺしゃんこなの??それとも木っ端微塵??

 どっちにしても嫌だ!!こんな所で死んじゃうとか……嫌ぁぁぁぁぁぁ……!!!

 最悪のイメージばっかり頭を巡る。

 この後の事が恐ろし過ぎて、私は思わず目をグッと閉じて、獏くんに強くしがみついて来るであろう衝撃に備えたのだけど……。

「はは……そんなに強く抱きつかなくっても平気だよ?……抱きついてくれるのは嬉しいけどね~♪」

 ……いつまで待ってもそんな大事にはならなかった。

 勿論ならなくっていい事なんだけど、来たら来たで私は感じる事も出来ずに終了のお知らせなんだけどさ!?

 恐る恐る目を開けてみると、やっぱり空にいた。

 ああ……いつも綺麗な茜色の空よね……。

 なんて思ってたらすぅっと気が遠くなりそうだったけど、獏くんは私を抱き上げたまま悠々と空中を歩いているのに驚いてとりあえず気絶は回避できたよ。すんでの所は変わらないけどね!?

 私の心情を知ってるのか知らずなのか、ニコニコしながらまるで近所を散歩するような軽い足取りで空中を歩く獏くん。

 浮かれた彼の説明によれば、〖浮遊(グラビ)〗という魔術と〖空間固定(ステップ)〗という魔術を使っていて、本来は空中戦に使われるやり方なんだって。

 何なら私も空を歩けるらしいんだけど、丁重にお断りさせてもらったよ。

 いくら獏くんを信頼してても、心の準備も出来てない今じゃ無理だし。

「どう?少しは気分転換になった?」

 と、いつもの穏やかな調子で宣う彼であります。

 ……そうね!?気分転換にはなったよ!?

 ……もう少し説明か先にあったら、もっとすっきりしたとは思うけどね!?

 色々と話も文句の一つも言いたかったけど、驚きと混乱で上手く話せなかっただったので、気持ちを込めて一発、肘鉄しといたよ。

 ぐふっ!と若干よろめいた獏くんだったけど、すぐにいつもの調子に戻ってニコニコと笑って頬擦りしてきた。

「へへっ……ひぃちゃんたら本当に恥ずかしがり屋なんだから……そんな所も大好きさ!!」


 全く堪えてない……相変わらずだよね獏くんてば……。

 ま、まあ獏くんは良かれと思ってこうしてくれた訳だし……落ちる心配はない訳だし……久々に二人っきりだし……。

 出だしはあれだったけど、とりあえずこのまま散歩を楽しんでみる事にしようかな!!それが良いよね!!

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