あの人は一回殴ってもいいでしょうか……?!
気が付くと龍騎車内のベットの上でした。
何度目かしらこの展開……。
ここに寝かされているって事は、詰まる所気絶したって事よね私……!!
ああ……もうこの天井も見慣れてきちゃった感じがする……。
アガリ過ぎて気絶とか……もう恥ずかし過ぎる……!!
最後に覚えているのは獏くんからのいきなりのキスシーン。
フラッシュバックしてきた恥ずかしさやらで思わず顔を覆いながら悶える私です。
ベッドの上でゴロンゴロンしてまあ青春かよ!!
「……あ!ひぃちゃん起きたかい??」
すぐ近くから聞こえてきたのは獏くんの声だった。
……ん?すぐ近く??
転がるのを止めて、恐る恐る手を退けてみると……バッチリ近距離に彼の顔があった。10センチもないくらいの接近度よ??
目が合うとニッコリ笑顔。あらやだイケメン。知ってるけど。
んと、彼の顔も横になってるって事は、つまり……そ、添い寝してくれてたって事!?
「……!!!?」
驚きから声も上がらず、ずざざざっとベッドの上を器用に後退した後……案の定落っこちますた。
「ぶへ!?」
ベッドがそんなに高くなかったから、ほんの少し身体を打っただけだったけどさ。
ぶへて。我ながら色気のない声だこと……恥ずい!!
「ちょちょ!?ひぃちゃん!?」
慌ててベッドから飛び降りて、私を抱き起こす獏くん。
「……ご、ごめんよ!心配だったから側で見てただけなんだけど……そんなに驚くとは思わなかったんだ……」
しゅんと落ち込む様子の彼を見て、私は酷く後悔した。
大好きな旦那様が心配で看ててくれたのに、私ってばなんて酷い態度を……!!
そそくさと体勢を戻して獏くんと向かい合う。
お互いに正座になっちゃって、何だかお見合いしてるみたいだなって思ったら秘かに笑えてきたけど、そこは我慢で!
「こっちこそ、ご、ごめんね……!看ててくれて……ありがとう、獏くん」
「ありがとうだなんて……そんな……夫として当然の事だよー!」
私の言葉にぱぁぁぁっと笑顔に戻ってデレる獏くん。さっきのしょんぼりが嘘みたいだね!
ある意味扱いやすいとも言えるけど……言わないでおこう。
「ああ!そうだ、良かったらこれでも飲んでみて!」
と、彼が持って来てくれた飲み物をくぴり。
温めただけのミルクみたいに見えたんだけど、一口で目を見開く私。
ミルクをベースにスッキリした甘さと柔らかい口当たり、後味にほんのりとコーヒーのような香りの残る、上品なカフェオレを飲んだようなそんな感じのものだった。
お、美味しい……!そして心の落ち着く味だわ……!!
一口飲む度に思わずほぇぇぇ……と声が出ちゃったよね。
その様子を見てた獏くんはふふと微笑んでた。
「どうかな……?昔俺の母さんがよく作ってくれた飲み物なんだよ。眠れない時や何だか落ち着かない時に飲むと凄くリラックスできるんだ。今のひぃちゃんには合ってるかなって思って作ってみたよ」
彼曰く、隠し味にクロム国の祭祀の場名物のアレが入ってるんだって。
あれだけでもとっても美味しいのに、ミルクと合わさるとこんなに素敵な味になるんだ……お義母様に感謝です!
獏くんからの素敵な差し入れもあって、すっかり落ち着いた私。
落ち着いたのはいいんだけど……何か忘れてはいませんかね……?
えっと……御披露目だかの途中だったのでは……はっっっ!!?
「ば、ば、獏くん!?その……」
「あ、おかわりかな?持ってくるねー!」
「違っ!?」
……とりあえずおかわりも貰ったけど!そうじゃなくて!!
慌てる私を前に平然と微笑む彼だったけど、ああ!と思い出したらしい。
「御披露目の儀の事?大丈夫大丈夫!もう終わったからさ」
え……!?もう終わったって……わ、私が気絶とかしたせい!?
あんな大事な席でやらかしたせい……だよね……うう……。
「あ!ち、違うよ!違うんだ!ひぃちゃんには何にも悪い所はないんだ、本当に!」
自分の仕出かした事でと泣きそうな位にどんより落ち込んだ私を見て、慌ててフォローに入る獏くん。
「そんな顔しないで、ひぃちゃん……。元々あんなに大々的にするつもりもなかったし、長引かせるつもりもなかったんだよ。それなのにあのナナヤが妙に頑張ったせいであんな大事になっちゃったのさ……」
彼の話を聞くと、彼女の出したと思われる今回の御披露目の儀の告知を見て各街からあんなに人が来てしまったんだとか。
ちなみにこんなのだよ、と見せてもらったんだけど……結構な長文で読むのに苦労したわ!!
まあ……要約するとこんな感じみたい。
〖御披露目の儀は予定通り婚姻の儀の翌日に執り行う事とする!〗
〖国を上げてお二方を盛大に祝福せよ!〗
〖此度はゴルディの祭祀の場において開催される!〗
〖国王と正妃の御前であるからして、何人も粗相のない服装で来るように!〗
〖もしもお二方のどちらか、お眼鏡に叶った者には王家より後日使いが来るだろう……!〗
……だってさ。
この書き方なら確かに人は来るよね!
柳の下のドジョウ的な、棚からぼた餅的な、もしかしたら……を狙うよね……特に最後の文はね!!!
呆れを通り越してため息しか出ないよ……全くもう……!!
拙い文章ですが……今年一年閲覧ありがとうございました!
来年も頑張って参りますので、良ければお付き合い下さい。




