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異世界ギルド飯 ~最強メシでまったりスローライフ~ 作者:白石 新
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魔王とおでんと自衛隊 その2


 ――そして1か月後。

「こんなもんで良いか」
 リュックサックにはずっしりとした重量感。
 ざっと金貨が500枚程度入っている。キログラムに換算すると15キロ程度だろうか。
「お前様? それはなんじゃ?」
「金貨だよ。結構な重さだから背負いでもしないと……」
「いや……そこじゃなくて、その荷物は何なのじゃ?」
 コーネリアの言う通り、リュックサックだけじゃなくて手提げの大きなカバンを何個も両手に持っている。
 尋常ではない装備で、コーネリアが指摘するのも無理はない。
「色々と買い出ししなきゃいけねーからな」
 デニムもボロボロだから買わなきゃいけないし、店で出しているコップや皿も見たい。
 電池もしこたま買い込んどかなきゃいけねーし、灯油やガソリンも絶対に必要だ。
 ガスボンベも切れてたし……。
 なんせ、10年分だ。
 そりゃあ帰りの荷物はとんでもないことになるだろう。
 ってか、この鞄やリュックでも全然足りない。
 この上で調味料や食材となると涙目になるが、そこはご先祖様万歳と言ったところだろう。
「買い出し? ああ、買い物か。それで金貨を一杯持っていくわけじゃな。まあ、どこに行くにしろマムルランド金貨は金の含有量で名高い金貨じゃ。どこの国でも通貨として通用するじゃろう」
「馬鹿、換金しねーと使えねーよ。マムルランド金貨なんて向こうじゃ一切通用しねーぞ?」
「換金……じゃと? 世界通貨としてどこででも通用するマムルランド金貨を換金……じゃと?」
 訳が分からないという風にコーネリアは首を傾げた。
 まあ、この世界の常識からすると札束が通貨として流通している状況も意味不明なんだろうな。 
 小切手や手形のシステムなんかを見たとすると行商人のヤコブ辺りは卒倒するだろう。
「ああ、とにもかくにもまずは換金だな」
 とはいっても、換金する場所は向こうでも表の店じゃねーんだけどな。
 どこから調達してきたかも分からねーよーな、得体のしれない金貨を買い取ってくれるようなのはあの店くらいしかねーからな。
 勿論、相当ぼったくられてるのは分かっている。
 金貨を溶かして純金を取り出したりの作業代金も込々ってことで納得しているが……それでも4割中抜きは相当だと思う。
「さて、それじゃあ行くか」
 ドアノブに手をかけるたところでコーネリアが声をかけてきた。
「じゃから、そのドアノブは我がいくら力を入れてもウンともスンとも言わぬと言うに……」
 回してみると、ガチャガチャと効果音と共に特に抵抗なくノブは回った。
「……な? 開くだろ?」
「確かに……開くようじゃの」
 しばし考えてからコーネリアは俺に尋ねてきた。
「のう、お前様よ? その扉の先には何があるのじゃ?」
「前にも言ったが、この店が何なのかの答えがそこにある。お前に教えなかったのにはちゃんとした理由もあるんだ」
「理由……とな?」
「時が来ていなかったんだよ。一つは、お前を本当にこの店で受け入れるかどうかって話だな。こっちの面についてはクリアー済みだ。お前の面倒をこの先もずっと見る覚悟が俺にもできた」
「ふむ? それで?」
「もう一つの理由だが……純粋に時が来ていなかった」
「……じゃからどういう事かと聞いておろう?」
 コーネリアは不思議そうに小首を傾げている。
 まあ、俺が何を言っているのか分からないのも無理はないだろう。
「この扉は10年に1度しか開かねーんだ。俺もお袋に連れられて今まで2回しか行ったことがない。それで今回で3回目になるわけだが……」
「10年に一度……とな?」
「ああ。お前をウチで受け入れるなら、絶対に一度はあちらの世界をお前に見せる必要がある」
「あちらの世界……?」
「文明を潰すのが魔王なら……ウチで働く以上はその事についてはいつかは考えて貰わなくちゃいけねーからな」
 文明を潰すという言葉でコーネリアの顔から血の気が引いていく。
「知っておったのか? 我が悩んでいることを?」
 俺はコーネリアの頭をワシワシと乱暴に撫でた。
「お前が賄いを食わないってのは相当な事だからな」
「まあ、それはそうかもしれんな」
「お前だからこそ見せるんだぞ? いや、お前なら大丈夫だと思ったから……見せるんだ」
 真剣な俺の眼差しにコーネリアは不安げに尋ねてきた。
「お主は一体……何を見せようと?」
 ドアノブに手をかけてガチャリと扉を開く。
「これが外の世界だ」
「……外?」
「これ……は……? 森?」
「良し、ちゃんと繋がっているようだな」
 俺はコーネリアの手を引いて歩き始めた。
「ここはどこなのじゃ?」
「すぐに分かるさ」
「しかしこの森はえらく魔素が薄い……の」
 魔素ってのは魔法を使ったりステータス補正で身体能力を爆上げする為に必要となる空気中の要素だ。
 魔術師なんかはこれを体内に貯めこんでMPとして戦闘中に使用することになる。
「薄いってか、ほとんどねーんだけどな」
「魔素が無い……と?」
 何せ、この世界では魔法ってのは伝説上でしか存在しないんだからな。
「しかし、相変わらずの急坂だな」
 樹木の生い茂る坂道を上へ上へと歩いていく。
 そして坂道を登り切ったところで森が開けた。
「良し、ここが山の頂上だ」
 広がる眼下の光景を見て、コーネリアは口をポカンと広げた。
「ここは……何なのじゃ? それにこの……何かの巣のような……大地を侵食しておる灰色の何かの数々は……何なのじゃ?」
 なるほど。
 こいつにはこの光景が大地を侵食している何かの巣だと見えたのか。
 まあ、言い得て妙ってところだな。
「ここは北海道札幌市だよ。で、お前が見ているのは市の中枢の方向で――広がっているのはマンションやらビルやらの建物だ」
「サッポロ……?」
 ああと頷いて、俺はニコリと笑った。
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