記憶が蘇りました。
New gate ~新しい扉を貴方と~
とは、某大手ゲーム会社から発売された乙女ゲームである。
人間以外の様々な種族の存在する世界で、主人公がたくさんの出会いの中恋をしていくという今までにない設定の乙女ゲームに、コアな趣味を持つお姉様方は今か今かと発売を待ち望んでいたのだが・・・。
誰もが異種間での恋愛を楽しめるものだと思い込んでいた矢先、いざ起動してみると遥か彼方へと上り詰めていた期待があっさりと砕け散った。そう、攻略対象は全て人間だったのである。
そんな期待外れの乙女ゲームでも私は期待は捨てれなかった。どうしても、どうしても獣人のもふもふに顔を埋めたかった。どうしても蟲人のグロテスクな見た目で愛を囁かれたかった。どうしても感情が分からないと嘆く機人に寄り添いたかった。どうしても魔人との禁断の恋に身を投じたかった・・・!!!
そんな私の期待が叶うことはなかった。絶望の淵に追いやられた私は、儚い夢を抱きながら一筋の涙を流し、そしてそのまま息を引き取ったのである。
「って、そこで死ぬの!?」
私の名前は月野宮 紫。
ついさっき浴室で転んだ衝撃で前世の記憶を取り戻しました。
***
状況を整理したいと思う。
頭を打った衝撃で前世の記憶が蘇ってしまった訳ですが、どうやら全て思い出した訳ではないみたいである。前世の私が何て名前でどんな生活を送っていたか、そんなことは全く覚えていない。
思い出したのは前世の私が強く思っていたもの。
そう、冒頭の乙女ゲームに対しての強い未練である。
とはいえ、いくら前世の私の記憶が1部とはいえ蘇ったとしても、正直私は私なのであんまり関係ない。
かれこれ15年ほど月野宮紫として生きてきている訳で、すっかり人格も形成されちゃってる訳で、前世の記憶が蘇ったところで遠い昔の思い出といった感覚がするだけである。
ただ一つ、非常に困ったことがある。
私の前世の記憶が本当に正しいのであれば・・・。
「ここ、Newgateの世界だーーー!!!」
自分の趣味を全てぶち込みました。
人間の男はすべてモブです。