外伝 優花(?)編
今回の主人公は優花(?)です。後ろに(?)をつけていますが最後まで名前が出てくることはありません(笑)
私は二人がこの世界から去っていくのを見て少し昔のことを思い出していた。
「私は・・・・・・・・」
思わず漏れる言葉、その先に続く言葉を飲み込み私は後ろを振り返る。
「あっ・・・・・・・」
そこには倒れ付した汐が転がっていた。
「彼を帰すのを忘れていたわね・・・・・・・」
そう呟いてから私は指を弾き、彼を元の世界に帰らせる。
「これで・・・・・また一人か・・・・」
私は自分がいつも寝床としている場所へと向かう。
もう、何百回繰り返しただろうか?
私たちと同じように悲恋の後に死を迎えたカップルがここに送られその結末を見守り、見送り、また一人となり、一人眠る。
そして、いつも悪夢にうなされる。夢の中では彼が私の本当の名をよび、いつも「どうしてなんだ?」と怒鳴りながら私を壊していく。それを唖然として見る私。その光景が何回も、何十回も、何百回も繰り返されるのだ。次のカップルがこの世界に来るまで。
そして
「どうして私はこんなことをしているんだろう?」
いつもそんなことを考える。そして何時も同じ結論にたどり着く。ここではそれ以外やることが無いからだ。この世界では死ぬこともできず特にやることも無い。そんなことを考えていたせいか、前回の終わりでは加藤を帰すのを忘れてしまっていたのだ。そのせいで彼らには迷惑をかけてしまった。
「そろそろ・・・・・・潮時かな・・・・・・」
もう、疲れてしまった。
さっき、死ぬことは出来ないと言ったけれど例外はあるのだ。私を殺した彼は死語も私を追いかけて来て私とは反対の道を選んだのだ。私はここに来てしまったカップルを救うために記憶の鍵を用いて彼らの手助けをする。しかし、彼は自分たちと同じような境遇のカップルを助けるのではなくここに永遠にとどめておくために記憶を奪い、人形とすることを選んだ。そのなれの果ての姿が図書室の怪物である。そのせいで彼は図書室から出ることができなくなってしまった。そして、私が先程言った例外とは彼の存在である。
私という存在を形作っている記憶を彼に奪ってもらい私は消える。前から気づいていたのだが実行する勇気がわかなかったのだ。私は彼に2度も殺されたくは無かったのだ。しかし、もう、全てがどうでもよくなってしまった。
私は図書室の扉を開けると彼の名前を呼んだ。
「こんにちは、もう、終わりにしましょ。」
私が図書室に足を踏み込むと無数の影が私に向かって滑ってきた。




