記憶
前回書きましたように女の子目線での話となります。
私が真君と合流してから10分後。私たちは保健室に来ていた。
「これからどうしよっか?」
私は隣で座っている黒髪で長身の男の子、真君に聞いた。
「とりあえず鍵を探そう。鍵を見つけないと記憶も戻らないんだし。」
そこまできて、すました顔でいた真君の顔が少し赤くなる。
「ところでなんで保健室なの?」
なんでって・・・・・・そりゃあ・・・・・・
「私が目覚めたところだったから。」
「それは聞いたけど、なんで、保健室で2人きりなのか?ということを聞きたいのでして・・・・・・」
真君はどうやら見た目よりもウブなようだ。少し悪戯心が芽生えてきた。
「真君・・・・・・気にならないの?」
「きっ、気にならないの?とは!?」
案の定あわてふためいている。思わず吹き出してしまった。
「あはははははははは!」
そこまできてようやくからかわれたことに気がついたようで、真君はまた少し赤くなって
「かっ、からかうなよ!」
と言ってきた。
「ごめんごめん。あまりにも反応が面白かったものだから・・・・・・それで、本当に気にならないの?」
「気にならないの?って何が?」
「『私たちが話すことができている』という事実が・・・・よ・・・・」
「そんなこと人間なんだから当たり前だろ?」
「じゃあその人間っていうのは誰に教えてもらったの?」
「そんなの教えてもらうことなく・・・・・・!」
そこまで言って真君は口をつぐんだ。
「気づいたみたいね。私たちは『記憶を無くしてしまった。』または『記憶を奪われてしまった』状態にあるんだから私たち『自分は人間であることがわかる』とか、『言葉を理解することができる』のはおかしいはずなのよ。記憶が失われているならそんなこともわからなくなっているはずなんだから。」
「じゃあ、僕たちはなんで、それがわかるんだ?」
真君が怪訝そうな顔をする。
「そこまではわからない。」
沈黙が空間を満たす。そして、その沈黙を初めて破ったのは真君だった。
「こうは考えられないか?僕たちは全ての記憶を失ったわけではなく、個人に関する記憶のみを無くしたって。」
「・・・・・・・・?」
どういうことだろう?全然意味がわからない。それを察したのか真君が言い直す。
「つまりだよ?僕の名前や住所、年齢や通っていた学校とか、僕に関する記憶は無くなっているけど、生きる方法とか言語、自分が人間であることとかは別に僕個人を形作っているものではないから・・・・・・・えーっと・・・・・何て言ったらいいんだろう?」
何となくわかった気がする。
「つまり、私たちを作っている私たちという存在の記憶は消えているけど、人間としての記憶は消えていないってことね?」
それを聞いた真君が目を輝かせる。
「そう!そういうこと!」
なるほど・・・・・・確かに説明としては間違えてはいないかもしれない。
「まだ、良くわからないから100%とは言えないけどあり得る話ね。」
「それにしても・・・・・」
真君が腑に落ちないような顔で言った。
「ここは、一体どこなんだ?」
そういえば・・・・・・
「じゃあ次は職員室にでも行ってみる?職員室なら多分・・・・・」
「この校舎とやらの名前もわかるかもしれないってことだな。」
真君が手を叩く
「よし!じゃあ行こうぜ!」
こうして私たちは次に職員室に向かうことになった。
次からはまた真君の視点で書きます。一日一回って意外ときついですね(笑)頑張って書いていくので感想などドシドシ書いてほしいです。