第十九話「右腕の火焔」
「……あれから、何年経ったんでしたかしら?」
我の目の前で一つ目の球状――我が主人ティルダ様――が憂鬱に呟いた。
「そうですね、あと一ヶ月であれから二千年となります。私達の封印された時から、丁度二千年……」
ティルダ様の隣に立つ一本角の魔獣、シンシアは切ない表情で囁いた。
それを聞いてティルダ様は玉座から立ち上がり、細めた目を潤ませていた。
「封印されたことなんてどうでもいいですわ……ですが、考えないようにしていますのに、どうしても過ってしまいますの……」
そう言ってうつむいてしまったティルダ様はため息を吐き、黙り込んでしまった。
重く苦しい空気が部屋中を包み込み、何も言えなくなってしまう。
その中でただ一人、我の横に居たガタルバーが、触手を揺らめかせる。
そして呆れたように、力強いため息を吐き出した。
「ああ、どうせその考えないようにしてるのって、どうせあのアクシアのガキのことだろ? ひょろっちい身体してたし、今頃腹空かせて死……」
へらへらと笑いながら、余計なことをべらべらと話していく。
その柔らかい脳天に我が手刀をかまし、ぎりぎりのところで黙らせる。
そして首をがっしりと掴み、宙に持ち上げて睨み付ける。
ガタルバーはそんな状況でも笑い、気にも留めていないようだった。
次の瞬間にはぬるりと触手の首をくねらせて、我の手から抜け出していった。
そのまま地面へと降りると、部屋から飛び出していってしまった。
「すみません、我がいながら奴の減らず口を止める事ができなくて……」
腕をだらんと下ろすと、ティルダ様の方を向いて頭を下げる。
するとティルダ様はこちらへと近付いて、我の頭を優しく撫でてくれた。
「大丈夫ですわよ、あなたの忠誠心は一流ですわ。彼にはそれが少し足りないのが難ですがね」
我の顔を見て微笑んだティルダ様は、再び玉座へと戻っていった。
何と声をかければいいのか、我にはわからなかった。
だが何とかしなくてはいけない、それだけは理解できた。
ティルダ様に遣える身として、この身を捧げようとも……
「……どうやら、随分と困っているようですね。魔物の姫、いや魔神姫ティルダ様?」
部屋の入り口から聞こえてくる、聞き慣れない男の声。
「全く、ガタルバーは何をしていたのだ……さて侵入者よ、ここまでやって来たということは、それなりの目的があってのことなのだろうな?」
我はゆっくりと振り返り、扉の方をキッと睨み付ける。
扉にもたれかかるように立っていたフードの侵入者は、不気味に笑って部屋の中に入ってきた。
「おい、室内にまでよくも堂々と入ってこれるものだな……今すぐ止まらなければ、この場で叩き斬る!」
我は爪を床に食い込ませながら、低く押し潰した声で吠える。
しかし男は我の脅迫にも応じず、ゆらゆらと進んできた。
我は後ろ足で床を蹴り、勢いよく男へと飛び掛かる。
そして爪を男の首筋へと突き立て、横向きに素早く薙ぎ払った。
すると男の姿は爪の元から歪み、掻き消えていった。
我は呆気に取られ、勢いのままに床へと滑り込んだ。
「魔物風情が、俺に攻撃などと生意気な。否定してくれようか?」
男の声が我の後ろから聞こえ、そして足音が響いた。
後ろを振り向くと、我に背を向けた男がそこに居た。
男は笑いながら、ゆっくりとティルダ様へ近づいてゆく。
我は再び男へと攻撃しようとするも、寸前でぴたりと止まってしまった。
男の纏う禍々しい魔力に、我が爪が受け止められてしまった。
身体が動かない、恐怖なんてものではない、何も考えられなくなっていく。
我はただ、男がティルダ様の元へと行くのを見ているしかなかった。
「ゴルトスを止めるなんて、よほどの強者のようですわね……わたくしの命が目当てなのでしょうか、それともこの立場でしょうか?」
ティルダ様は苦笑いを浮かべて、男へと恐る恐る尋ねた。
そんな言葉なんて聞きたくない、それなのに身体が動かない。
無力な自分が恨めしく、不快に思えた。
すると男は大笑いをして、フードを脱ぎ払った。
黒く渦巻く闇、それとしか言えないものがその中にはあった。
「いえ、命を奪おうなどと、そんな大それたことは考えておりませんよ。俺の目的はティルダ様、あなたに協力することです」
闇はぐねぐねと形を歪めながら、ティルダ様へと語りかける。
するとティルダ様は、いつもの業務用の笑顔に変わった。
「協力、ですか? 一体何の協力をしに来てくださったのでしょうか?」
至って真面目にそう言ったティルダ様は、玉座から立ち上がり男の頭をじっと見る。
男の頭は歪みを丸く整え、口を作り出して歪めさらに笑う。
「この封印を解き放ち、あの王子様にまた会いたいとは思わないかな? 俺は封印の解き方を知っている、君を自由の身にすることができるんだ、さて聞いていくかい?」
男は手を横に伸ばし、魔力の塊を作り出して見せてきた。
魔力の塊は形を薄く広げていくと、その中心に青い点が見える。
その青い点に男が指を入れると、ぐるりと魔力の中で回した。
すると青い点は渦を描いて、魔力を塗り潰していった。
ティルダ様はそれを興味深そうに見ると、驚いた顔になる。
「これは、まるで外の世界ですわ……それに、懐かしい風が吹いてきていますわ!」
そう喜びの声を上げたティルダ様は、男の顔とその魔力の輪を交互に見る。
そしてティルダ様は、その輪の中に飛び込んでいこうとした。
「駄目です、そんなに簡単に出ていっては! この男の罠かもしれないのですよ!?」
シンシアがティルダ様の腕を掴み、首を横に振った。
すると男はそれを見て不満げに口を歪めて、ため息を吐き出した。
そしてつかつかと歩いてゆくと、シンシアの腕に軽く触れる。
目を見開いたシンシアは、ガクリと俯き膝を地面に突いた。
「さあティルダ様、邪魔者はいなくなりましたよ。懐かしの外の世界を楽しんできてはいかがでしょうか?」
不敵に笑いながら男は、ティルダ様をその輪へと誘導しようとした。
しかしティルダ様は少し切ない顔を浮かべ、目を閉じて首を横に振った。
「……確かに、外の世界はわたくしが長年望んでいたものでしたわ。しかしそのために、大切な仲間を見捨てるわけにはいきませんわ! わたくしは魔物の姫であり、魔物の長ティルダですわ!」
ティルダ様は魔力を手に集め、長い槍を作り出した。
その槍の先を男へ向けると、目を鋭く細めて睨み付けた。
男はそれが予想外だったようで、少し退くと頭を押さえた。
そして少し考えたように静止すると、高笑いを上げながらゆっくりと拍手した。
「はははっ、流石は魔物達をまとめ上げているだけはある! だが安心していい、この二人に攻撃したわけではないのでね。俺が指を一発鳴らすだけで、ほら!」
男は笑いながら、天高く腕を上げて指を鳴らした。
すると強張って動かなくなっていた我の身体は支えを失い地面に倒れ込んでしまった。
シンシアもどうやら動けるようになったようで、その場に立ち上がった。
ティルダ様はそれを見て、槍を下ろして床に突き立てた。
「さて、これで完全に信じて頂けたでしょうかね? 俺の空間を切り開く技術をティルダ様に捧げましょう。そして今、外の世界ではどういうことになっているのかの情報も提供しましょう」
我からするといまいち信用に欠ける男は、手にもう一つ魔力の玉を作り出す。
それを手のひらの上で少し転がしてから、急にシンシアへと投げ付ける。
突然のことに全員が動けない中、魔力はシンシアの身体に当たった。
そして身体の中に沈み込んで、きれいに消えていった。
それと同時にティルダ様は、男の首に再度槍を突き付ける。
男はそれでも動じずに、笑いながら話しを続けた。
「さあこれで、空間ぐらいなら切り開けるようになったはずだ。試しにこの穴のように、どこかに繋げてみてはどうだい?」
男がシンシアを指差して、首を少し傾げてみせた。
ティルダ様はその指先をなぞり、シンシアの方を見る。
すると唖然としていたシンシアは、腕を伸ばして指を横に向けた。
指先には魔力が光を放ち、ぐるぐると渦を巻いていた。
そして指で素早く宙をなぞって、直線を描いた。
その直後空間は縦に割けて、青い空をその隙間から覗かせた。
男はにやりと笑いを浮かべ、ティルダ様と我はあっけにとられていた。
「……なっ、私の身体が勝手に動いて、空間を切り開いた?」
シンシアは自分でも理解できていないようで、口を開けて目をぱちくりとさせていた。
男はそれに拍手をして、シンシアの肩をぽんと叩いた。
「おめでとう、これで君もこの封印を突破できるようになったわけだ。練習すれば狙った地点に穴を開けるようになるだろう。さて次は外の状況について説明していこうかね……」
男は床にどっと座り込み、顎を掻きながら軽く唸った。
そして懐から本を取り出すと、ぱらぱらとめくりはじめる。
我ら三人はその様子をただ立ちながら見ていた。
すると男はページをめくる手を止め、王城の写真を見せてくる。
「王国の場所、大体の地形はこの二千年ほどでもさほど変化していません。会いに行こうものならば、辿り着くことは簡単にできるでしょうね、ただし……」
男はそこで言葉を止めると、ティルダ様の顔をちらりと見た。
その意味を察したか、ティルダ様は深く頷いてため息を吐いた。
「魔物が国内に入ろうものならば、即刻殺しにかかってくる、そういうことでしょうね。わたくしもその事は重々わかっているつもりですわ……」
ティルダ様はそこで再びため息を溢して、玉座へぽんと座った。
男はページを変え、今度は何やら祭りの様子を出してきた。
「はい、侵入するためには隙を突く必要がありますね。そこで今から丁度一ヶ月後、王国では終戦二千年記念祭があります。そのタイミングならば、警備は手薄になっていますよ」
ティルダ様はそれを聞いて、険しい顔をしながら唸る。
「ですが忍び込んで会ったところで相手は王子様、きっと誰かにバレてしまいますわ。何か他に手段はないのでしょうか?」
男はくくくと笑っていたが、堪えきれずに吹き出した。
「そんなもの、実に簡単なことではないですか。邪魔する者は皆殺し、シンプルで簡単、すばらしいではないですか?」
唐突に豹変する男の口振りに、我は警戒をさらに強めていく。
次に不用意な言葉を放とうものならば、すぐにでも飛び掛かるつもりだった。
「皆殺しなんて、そんなガルス君に嫌われてしまうようなこと、できるわけがありませんわっ! 人間達に魔物が大丈夫なものだと理解してもらえる方法はないものでしょうか?」
頭を抱えて悩むティルダ様に、それを見て口を歪める男。
おそらく男の方も、ここまで悩まれるとは思っていなかったのだろう。
数分間の静寂がこの場を包み込み、誰一人として口を開こうとはしなかった。
そんな中で男は何かを閃くと、指を鳴らして笑い出した。
「そうだ、国民全員を誘拐なんていうのはどうだい? それぞれが人質になって反発への抑止力となる。ティルダ様の魔力ならば、王国に張ってある結界を叩き割り、国民全員に催眠をかける事ぐらい容易じゃないでしょうか?」
滅茶苦茶な作戦、正直に言ってそんなこと遂行できるわけがない。
だが男は真剣に、そしてさも可能かのように言い放った。
そんな男に同意するように、ティルダ様は深く頷いた。
「それぐらいの魔法なら、確かに使うことができます。なのでその作戦、使わせてもらいますわ。さて、後は考えられる妨害の可能性を考えていきましょうか……」
真面目に返答しているティルダ様、明らかに騙されてしまっている。
だがティルダ様が、そんな馬鹿なことをするはずがない。
何か考えがあってのことなのだろうと信じ、我は静観を続けることになった。
「ぼおっとしているんじゃないわよ。負けちゃってもいいのかしら?」
天高くから聞こえてくる、少女の厳しい怒号。
はっと我に返ると、その方向へためらい無く火炎弾を発射する。
巨大な炎の玉は空中で爆裂し、弾幕となって少女に襲いかかった。
煙と爆風に包まれて、少女の姿は見えなくなってしまう。
するとその中から、鋭い氷の刃が煙を切り裂いて打ち出される。
それは我の身体に当たると、バラバラに砕け散った。
「この程度効かぬわ、もう一発食らうが……」
我は煙へ向かい、再度炎を吐き出そうとした。
しかし煙が消えたところには、少女の姿は見当たらなかった。
それと同時に我の横から聞こえてくる素早い足音。
我はその方向を睨み、少女を捉えると炎を吐き出そうとする。
「バレちゃったか、だけどこれなら間に合う!」
少女は我の腕へと、勢いをつけたノコギリを叩き込んだ。
しかしそのノコギリの刃は、鉄を打つような音を立てて、弾き返されてしまった。
そこに襲いかかる、我の放った炎の渦。
炎の渦は少女をあっという間に包み込み、轟音を立てて燃え盛った。
まずは一人、あとはあまり攻撃をしてこない、蝙蝠羽根の男だけだ。
我は周囲をキョロキョロと見渡し、その男を探し出そうとする。
壁のくぼみから柱の影、自身の身体の下付近に至るまで。
だが男の姿はどこにも無く、影も形も見当たらなかった。
「むぅ、これはここから逃げたのか? いや、出入口は我の身体の下だ。ティルダ様の元に行こうにも、炎の壁で遮られている。ならばどこにいるのだ?」
我は思い当たる節を探り出し、一つの答えに辿り着く。
少女の氷の魔法、それにより男の存在が隠されていると。
かつて聞いたことがある、氷を身に纏い、その屈折により姿を隠す魔法があると。
少女は色まで精巧なレベルの偽者を作り出すことができるほど、魔法の腕に長けている。
ならば氷を上手く使い、人一人ぐらい隠せてもおかしくないかもしれない。
そう思った瞬間我は飛び上がり、空中から地面へと炎を吐き出した。
炎の玉は地面へぶつかると、その形状を歪めて、平らになっていく。
そして地面を包み込み、揺らめく赤色に染め上げていった。
その赤い光に目が疲れた我は、一瞬瞬きをする。
するとその目を閉じていた瞬間、背中に凄まじい衝撃が走り、我を地面へと叩き落とす。
胸を地面へと打ち付け、手足を広げて倒れ込んだ。
その風圧で、地面を包み込んでいた炎は吹き飛び、消えていった。
一秒後には我の背中から飛び退き、目の前に着地した男の姿が見えた。
「ぐぅっ……これは、まさか天井に隠れていたのか? だがその身体のどこにそんな力が……?」
腕に力を入れ、床を爪で削りながら、その場に起き上がる。
そして一吠え男に浴びせると、歯をぐっと噛み締めて睨み付ける。
「そりゃあ仮にも、元々悪魔だしね。血の満月の力、それが合わさればそれぐらいは余裕ってとこね。というか壁に張り付いて、あたし達に不意打ちを仕掛けようとした、あなたが言えることなのかしら?」
男の横の景色が歪んでいき、その中から少女が現れる。
少女は服に着いた埃を払いながら、こちらを見上げてきた。
「氷が溶けるより早く、生成の方が追い付いてよかったわぁ……さてゴルトスとか言ったかしら、そろそろ決着を着けましょうか」
笑顔の少女は我の顔へとノコギリを向け、くるくると回していた。
我もそれには同意、上を向いて口の中に炎を蓄えていく。
「そうだな、これが最後の一撃、デストロイフレイムだ! 最高火力を食らうがよい!」
炎の色は赤から青に変わってゆき、音を強めながら燃え盛る。
すると少女は苦い顔をして、男の後ろへと下がった。
「流石にあの火力だと、生成は追い付かないだろうなぁ……ということでレクス、後はお願いねっ!」
少女の言葉に男は頷き、槍をこちらへ投げるために構える。
我は首を振り、勢いの全てを込めて炎を吐き出す。
それと同時に、男は槍をその炎へ向かい投げ付ける。
凄まじい勢いで飛んできた槍は、巨大な炎の玉の中に入り込んだ。
あまりにもあっさりと、その姿を消してしまった槍、最後の一撃にしては弱すぎた。
「さあ終わりだ、灰塵と化せ!」
二人へと向かい近づいてゆく炎の玉。
それは唐突に空中でぴたりと止まり、形を歪めはじめる。
「ミラジウムは確かに希少だけど、一つだけじゃあないのよ。不運だったわね、こちら側に二つもミラジウムが来ちゃってね!」
少女が笑い指差すと、炎はどんどんと縮小していった。
我が完全に考えていなかった可能性、ミラジウムの力を持つ槍。
その事実は我に敗北を実感させるとともに、死を感じさせた。
炎はついに槍の姿を見せるほどまでに小さくなった。
そして槍は刃先に青白い光をまとうと、こちらへ向かい加速していった。
疲れのせいか、身体が全く動いてくれない。
そんな中でも、槍は我へと向かい突き進む。
「……すみませんでしたティルダ様、我はここで終わりみたいです。幸運を祈ります、どうかご無事で!」
我は目を閉じ、ティルダ様の姿を思い浮かべる。
そして槍は我の身体へと当たった。
頬に走る痺れるような痛みと、巻き起こった疾風。
目をゆっくりと開くと、少女と男は笑顔で我を見ていた。
「これは……何故我を殺さなかった、今のが最後のチャンスかもしれなかったのだぞ?」
我は怪訝な顔をして、笑顔の二人を見おろした。
すると少女は声を立てて、笑いを浮かべた。
「いや大丈夫、少なくともチャンスはこれだけじゃ終わらないわ。それにこれであなたの方が弱いことは十分に証明できたわ」
自信満々の少女と、それに相づちを打つ男。
「ははは、結局は全てお前達の手のひらの上だったということか……」
我は苦笑いを浮かべて、力無く項垂れた。
これではあの時と、あの男に攻撃をしようとした時と同じではないか。
歯をぎりぎりと軋ませ、爪を地面に食い込ませる。
その瞬間、ティルダ様のいる玉座の間から、凄まじい魔力が放たれるのを感じた。
全身に悪寒が走り、気持ちの悪くなるような魔力。
まるであの男に攻撃しようとした時に感じた感覚と同じだった。
「……これは、あの憤怒の力、食い止めることができなかったか! このままじゃ、ハルトとゲルニカ君が危ない!」
少女は驚いたかのように目を見開き、男と顔を合わせた。
そして我の足元に近付くと、唐突に頭を下げてくる。
「おねがいゴルトス、ティルダの元に行かせて! このまま彼女に血の満月の力を使わせたら、この国も皆も大変なことになっちゃうの! それどころか、彼女自身も……」
必死に頼み込んでくる少女に、我はどうすればいいのかわからなくなってしまう。
だがこの少女からは、嘘を吐いているようには感じられなかった。
「……お前自身が証明というわけか。わかった、我が背中に乗れ!」
地面に伏せて、翼で背中までの坂を作り上げる。
「ありがとう、ゴルトス!」
ぱあっと明るい笑みに戻った少女は、男の手を掴み、翼の上を渡っていった。
そして背中にしっかり乗ったのを確認すると、翼を広げて地面を蹴った。
炎の柱を一瞬で突き抜け、玉座の間へと飛翔する。
そして勢いをつけて、扉を我の腕で突き破った。
そこには、勇ましい顔をした剣士の青年と、禍々しい魔力に包まれ、怒りの形相をしたティルダ様の姿があった。




