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クレイジーフルムーン  作者: もやし騎士ヴェーゼ
第一章 魔神姫の乱
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第十話「目覚めの海」

 その日は、朝から空が澄んでいて、絶好の外出日和だった。

 村には早い時間がゆえに、人っ子一人出歩いていなかった。

 あたしは最高におめかしをして、レクスと出会った場所に来ていた。

 そこには、既に切り株に座って待っているレクスの姿があった。

「レクス、こんな朝早くから待っててくれてるなんて、さすがね」

 あたしはレクスにばれないように、背後から忍び寄って、話しかけた。

 するとレクスは、ゆっくりと振り向いて、立ち上がった。

「もちろん、女の子を待たせるのは、まずいかなと思って、早めに来たつもりだったんですが、十分も経たずに合流できるとはね」

 レクスは頭を掻きながら、そう言ってあたしの手を掴んだ。

 そういえば予定をまだ決めていなかったことを思い出した。

「あれ、目的地とかは決まってるの?」

 急に動き出したレクスに、あたしはそう質問した。

「少し話しておきたい重要なことがありますので、私の家に来てもらおうかと」

 レクスはそう言って、あたしを引っ張って、歩いていく。

 彼氏の家に行くなんて、ほんのちょっと憧れていたことだったので嬉しかった。

 でも、重要な話って何なのだろうか、ここでは話せないようなことなのだろうか。


 レクスの家は、村の端の人通りが少ない場所にあった。

 レクスがドアを叩いて、少し待っていると、口に髭を蓄えた老人が出てきた。

「レクス様、早いお帰りで。んん、そちらのお嬢様はどちら様ですかな?」

 老人は眼鏡を指で上げながら、あたしの顔を見てくる。

「あたしはリッカ、こう言うのは少し恥ずかしいけど、レクスの恋人よ」

 あたしがそう言ってレクスの顔を見ると、微笑み返してきた。

「おお、リッカ様でしたか。我が主人、レクス様から話は聞いておりましたが、ここまで可愛らしいとは。では、中へお入り下さい」

 老人はあたしの機嫌を取って、ただ優しく笑いながら、家の中へ案内しようとする。

「ではリッカ、家の中に入りましょう」

 レクスに手を引かれながら、あたしは家の中へと進んでいく。

 中は外から見た時よりも大きく思え、それは不安になってくるほどだった。

 あたしはその中の一室、書斎まで案内された。

「ではお茶を入れて参りますので、ごゆっくりと」

 老人はそう言って、すぐに書斎から立ち去ろうとした。

「待て、ヘルド。お前もがいると、話をするのに都合がいいからな。リッカはそのソファーに座っていてくれ」

 レクスはヘルドと呼ばれた老人を引き止めてあたしをソファーに座らせる。

「ねえレクス、話って何なの? ここなら隠すことないでしょ?」

 あたしは耐えられなくなり、レクスに質問した。

「私の目の能力についてです。一度見たから、少しぐらいはわかっているんじゃないですかね?」

 レクスはそう言いながら、包帯をほどいていく。

 レクスの灰色の鋭い目は、あたしとヘルドを睨んだ。

 その瞬間、あたしの体はまるで石のように動かなくなってしまう。

 ヘルドも同じように、全く動かなくなっているようだった。

「私の目の能力、生物を支配し、操る忌まわしい力。あの時、魔物の透明化が解けて、気絶していた理由がわかりましたね」

 レクスはそう言って、ぐちゃぐちゃな包帯を巻き直そうとする。

「ああ、待って! あたしが巻きたいわ!」

 あたしがそう言った瞬間、石が崩れるかのように動けるようになった。

 そうしてあたしは、レクスから包帯を取り上げる。

「えっ、まだ能力を解除できてないはずなのに、動けるんですか!?」

 レクスは驚いた様子で、あたしの肩を掴んできた。

 そう言われると、あたし何で動けてるんだろうか?

「うん、よくわかってないけど、何故か動けるようになったわ……っと巻けたわよ。」

 あたしは巻く片手間にそう言って、首を傾けてウインクをした。

 すると動けるようになったヘルドが、髭を撫でながら、掠れた声で笑った。

「月の力すらも越える思いですか……儂にはわかりませんが、リッカ様には、実は凄まじい力が眠っているのでは?」

 ヘルドが言うと、レクスは怪訝そうに口を歪めて、首を傾げた。

「さあね、私にもわからない。ですが、悪魔と知ってなお、私から逃げなかった。それほど強い思いなのは事実でしょうね」

 レクスは最後には自信があるかのように言って、あたしの頭を撫でる。

「ねえ、そんなことより外へ遊びに行こうよ!」

 話の内容がわからなかったあたしは、今度はレクスの手を引っ張って、外へと駆け出していく。

「さて、どれほどまで成長するのか、楽しみじゃのう」

 あたし達の後ろから、ヘルドの呟く声が聞こえてきた。


 あたしとレクスは、昨日の骨董品屋へと来ていた。

「へへへ、これ似合うかな? ちょっと高いから、あたしでは買えないけど」

 あたしは気になっていたネックレスを見せて、わざとらしく言った。

「似合ってますね、値段は三千ディルですか。これぐらいなら、奮発すれば買えますよ」

 レクスは包帯を少しだけ上げて、あたしの姿を見て微笑んだ。

 少し覗き見るぐらいならば、能力は発動しないみたいだ。

「ありがとね、いやまだ買ってくれるとは言ってなかったね、ごめん」

 興奮しすぎたあたしは、思わず買ってくれることを前提に話してしまっていた。

 しょんぼりするあたしを見て、レクスがポケットの中から、財布を取り出す。

「……お婆さん、ネックレスを買いたいんですが、これで足りますよね」

 レクスは財布の中から、一万ディル硬貨を取り出して、お婆さんに見せる。

 するとお婆さんは、目を丸くして、お金を入れてある箱を漁りはじめる。

「……お釣りはギリギリ足りるようですじゃ。良かったですな、娘さんや」

 お婆さんはこちらに歩いてきて、ネックレスの値札を取る。

 そしてレクスの持っていた一万ディルを取って、千ディル札七枚と入れ替えた。

「それじゃ、今日はこれで用は終わりかな、ありがとうね」

 あたしはネックレスを首に巻きながら、骨董品屋の扉を開く。

 レクスもそれに続いて、扉から出る。

「では、次は何にしましょうか。お金はあるので、決めてもらえれば」

 レクスは財布の中を確認して、あたしの手を握りにきた。

「お金で解決し過ぎるのは何か嫌だよ。のんびりと釣りでもどうかな?」

 あたしは村の横に流れている川を指差して、そう言った。

 すると、レクスのテンションが肌で感じられる程度まで変わる。

「良いですね! 私の幼少期は暇さえあれば釣りに出かけてたものです。家に昔使っていた釣竿があるはずなので、取りに行きましょう」

 レクスはまるでまくし立てるかのように言って、あたしの手をぐいっと引っ張った。

 よほど楽しみなようで、提案して良かったと思えた。

「あたし、負けないからね!」

 駆けるレクスに身を任せ、あたしはそう言った。

 恋人として初めての勝負、それは釣りに決定となった。


 釣りを開始して早一時間程経過して、あたしは運良く三匹も釣り上げた。

 しかし、レクスの竿には全くかかる気配すら無かった。

「……一向に当たりませんねぇ。全部マリンに取られてるのでしょうか」

 レクスは三匹も釣れたあたしへの嫌味を込めつつ、愚痴をこぼした。

 昔はよく釣りをしていた人が、たった一時間程度で諦めるものなのだろうか。

「釣りなんて一期一会、それに時の運もあるわ。この程度で駄目なら、釣りはできないと思うんだけど」

 あたしは嫌味への仕返しも兼ねて、フォローをした。

 レクスは何も言わず黙り込んで、何やら考え事をしているようだ。

 深く考え過ぎるから、一時間でも長く感じるんだと思うんだけど。

 まあ会って一日二日程度のあたしが言うのもなんだけど、レクスらしい気もするかな。

 大人なんだけど、それゆえに固く思い詰める、だから一緒にいてサポートしてあげたくなる。

「もっと気楽に行った方がいいと思うよ。釣れたら幸運だったと思うくらいにはね」

 あたしは釣竿を揺らしながら言った。

 後から考えると、三匹釣れてるあたしができるフォローじゃなかった。

 するとレクスが思い立ったように、包帯をほどこうとする。

 あたしはその腕をがっしりと掴んで、首を振った。

「能力使うのは反則よ。そもそも村が近いんだし、バレたら追い出されるかもしれないよ?」

 あたしは低い声で言って、レクスの腕を下に叩き落とす。

「すいません、ごもっともです……」

 レクスは落ち込んでしまったようで、顔を落としてしまう。

 あたし達、釣り程度に何こんなに真剣になってるんだろうか。

 わかった、恋人ってこんなにも真剣なものだったんだね。


 そんな楽しい日々を送っていると、じきに一週間が経ち、血の月の日が来た。

 レクスに今日は念のために一日中家に居るように言われたが、毎日会っていた後となると、とてつもなく寂しくなってしまう。

 楽しいものの後につらいものが来ると、余計につらくなるものだ。

 だから、今日を乗り越えるためにも、明日はピクニックの予定を立てた。

 それにあたしの誕生日も重なっている、何かプレゼントを用意してくれるみたいだった。

「美味しかった、けど……」

 あたしは夕食を食べ終え、レクスのことを頭に思い浮かべた。

「どうしたのよ、そんな顔して。まさかご飯が不味かったのかな?」

 ママは横で残り少ないスープを飲みながら、聞いてきた。

「料理の味のことじゃないよ……」

 あたしは泣き出しそうになりながら、呟いた。

 それを見て、ママは何かを察したようだった。

「もしかして、恋のもどかしさってやつ?」

 ママはにやけながら、最後の一口を飲み干した。

「えっ、なんでわかったの!?」

 あたしは驚いて、椅子から立ち上がって、前のめりにママの顔を見る。

「ふふふ、女の勘が半分。そして、最近は毎日おめかしして外に出ていくからね。そんな状態で会えない日が一日でもあると……なんてね」

 ママはそう言って、棚の上に置いてある写真立てを軽く持ち上げる。

「私も昔は恋をしたものよ。もちろん、あなたのパパにね」

 ママはため息をついて、キッチンに食器を持って行った。

 パパは昔、魔物に襲われて死んじゃったって聞かされた。

 そう考えると、ママも辛い思いをしてきたんだな、と考えた。

 ふと、カーテンに目をやると、しっかりと閉められ、少しの光すら入ってこない。

 その暗闇の中、一本の蝋燭の光が、あたしの涙を照らしていた。

「ふぁーっ、泣いたら眠くなってきちゃった。次起きたら、ピクニック……ね」

 あたしは、ゆっくりと眠りの暗闇の中へと落ちていった。


「ガギャアギャアギャアアァァ!!」

 破壊音と、狂ったような叫び声が、家の中をこだまする。

 あたしはそれを聞いて、驚き飛び起きた。

 夕食の後、あのままリビングで寝てしまってたみたいだ。

 それより、あの鳴き声は何だったのだろうか?

 恐怖より、強い興味に駆られたあたしは、家の中を見回った。

 玄関まで来ると、壊れた扉に、周りの壁が散乱していた。

 外はまだ暗く、赤い光がぼんやりと家の中まで入ってきていた。

「えっ、何なの、これ……」

 あたしが状況を理解する直前、背後から凄まじい衝撃を受ける。

 体ごと吹き飛んだあたしは、壁の端に横っ腹をぶつけ、外へと転がっていった。

 お腹の底から、血が吹き出して、口から溢れる。

 あまりにも痛すぎて、痛みという感覚が麻痺してしまっている。

 月がある方向に目を背けながら、家の玄関の方を見る。

 そこには、顔の上半分を残し、怪物と化してしまったママがいた。

「ママ……なんなの、その姿? へへ……ごめん、レクス、もう駄目みたいだ……」

 薄れていく意識の中、あたしはママだった怪物を睨み付けた。

 きっと血の月だ、それがママをあんな怪物へと変えたんだ。

「もう、死んじゃうんだ……ママを変えちゃった月……見ても、いいよね……」

 あたしは残った力を使いきり、赤く染まる空を見上げる。

 そこにあった一番真っ赤な月の魔力は、あたしに残されていた最後の意識を、無理矢理押し出していく。

「グギャァ?」

 怪物があたしに近づき、腕を掴んで持ち上げた。

 あたしが瀕死であることを確認すると、地面に叩きつける。

 勢いが強かったのか、あたしの体は一瞬で怪物の視界から消えた。

 いや違う、あたしは生きている、自分の足で走っていた。

 まるで風にでもなったかのような感覚が体を包みこんだ。

「ゲキャキャキャァ!」

 それにも気づかず、怪物は消えたあたしをあざ笑い、家へ向かって振り返った。

「完全に死んだかを確かめないなんて、本当に念入りだったママなのかねぇ……?」

 歪んだ愛の衝動は、辛辣な言葉となってあたしの口から出ていく。

 あたしの体はママの目の前に回り込み、挑発をしていた。

 怪物は驚いたようだが、すぐに攻撃の態勢に入った。

 怪物の鋭い拳が、あたしへ向かって放たれる。

 しかし、怪物の突き出す拳は、あたしの小さい手のひらに簡単に防がれていた。

 そして拳を軽く押し返して、怪物が仰け反ると、あたしは飛び上がった。

 そして瞬時に、怪物の体へと蹴りを食らわせる。

 怪物は、ぐらりと巨体を揺らせて、数歩引き下がる。

 これであたしと怪物の間に、ある程度の距離ができた。

 そうだ、あの魔法で終わらせよう、ママの得意だった究極魔法で……

「無駄よ。苦しくて、辛いでしょう、早く終わらせるから――デストロイフレイムよ!」

 あたしがそう唱えると、ママの体が爆発して吹っ飛ぶ。

「イギャアアァァァ!!」

 爆風が周りを包み、砂煙が巻き上がる。

 魔物はその衝撃に耐えられず、さっきのあたしのようにゴロゴロと転がっていく。

 甲高く悲痛な叫びをあげる怪物は、下半身と片腕をバラバラにして、倒れていた。

 あーあ、避けなければ、こんなことにはならなかったのに。

 そんな狂ったような思いが、あたしの中を駆け巡った。

 あたし、どこまでも悪い子になっちゃったのかな。

「ああ、ごめん。今度こそは一撃で殺してあげるから……ねっ!」

 あたしは笑いながら、近くにあった鎌を持った。

 そして言葉とは逆に、何度も何度も、怪物へと振り下ろした。

 肉が裂けて、血が飛び散って、辺りを真っ赤に染め上げる。

 気づけば、怪物はぐったりと倒れて、息絶えていた。

「ママ、終わったね……せめて最後ぐらい、きれいな姿で死なせてあげなきゃ」

 あたしは怪物の死骸にゆっくりと触れた。

 煮えたぎるような怪物の魔力が全て、あたしの体へと流れてきた。

 すると、怪物の姿は、人間へと、ママの姿へと戻っていく。

 それと同時に、あたしの体に異変が起きる。

 高温の魔力が体の中で暴れ、全身に爆発するような痛みが襲う。

 膝を着いて、息を荒げて、目に大粒の涙が伝っていく。

「うっ……熱いよぉ……こんなのをママは味わったのぉ……?」

 あたしの意識はぷつりと切れて、そのまま倒れこんでしまった。


 あたしは柔らかく暖かい魔力に包まれ、ゆっくりと目を覚ます。

 目の前には、男の人と老人の二人が座っていた。

 どうやら、どこかの洞窟の中で眠ってしまっていたようだ。

「んっ……えっ、ここはどこ? あたしは……」

 記憶が無い、自分が誰なのか、何故ここにいるのか全く覚えてなかった。

「あっ、目が覚めましたね! 私の名はレクス、こっちの老人はヘルドです」

 男の人は、唐突に自分達のことを紹介をする。

 まるであたしと知り合いで、記憶が無いのを知ってるかのように。

「うん、わかった……」

 あたしは怯えながらそう言って、起き上がった。

「大丈夫です、あなたの名前はマリン、元は私の彼女でした……」

 レクスはそう言って、怯えるあたしの頭を撫でた。

 突然何を言っているんだと思ったが、その手はあたしの不安をゆっくりと消していった。

「そして、今日の誕生日に、それを渡す予定でした」

 そう言ってレクスは、純白のとんがり帽子を取り出して、あたしに被せる。

「マリン……ね。じゃあ、これからもよろしくね、レクス!」

 あたしは戸惑いながらも、レクスに向かい笑いかけた。

 レクスに心配をかけたくない、そう思ったからだった。

「はい、もちろんですよ。よろしくお願いします!」

 レクスも笑って、あたしを抱き寄せてくれた。

 この人の彼女、覚えてはいないけれど、それでもいいと思えた。

 あたしはレクスにふんわりと包まれて、ゆっくりと目を閉じていった。


 気づけば真っ暗な闇、あたしは目を閉じているようだ。

 あたしはゆっくりと目覚めて、レクスの顔を確認する。

 ――おはようございますマリン、結構長く寝ていましたね、丁度次の日の朝になりましたよ。

 そう言う優しい超音波が、あたしの頭の中が響いてきた。

 レクスは包帯の下から覗く優しい目で、あたしを見つめていた。

 その超音波で、今までのことが全て夢であったと理解できた。

 この窓から見える風景、ここは見覚えがある、ハルトの家のベッドの上だった。

「……また、あの時の夢を見てた。今回は生まれ変わった後までね」

 そう言って、ゆっくりと起き上がり、軽快に二三歩スキップする。

 そして、壁に立て掛けてあった、あたしのノコギリを取り、背中へと戻す。

 レクスは心配そうに口を開けて、あたしの方を向いていた。

 ――無理しないでください、もう少しゆっくりでもかまわないですよ、か。

 相変わらずいつになっても、レクスが甘いのは変わらないようだ。

「これぐらい大丈夫よ。じゃあ、さっさと要件を済ませましょう。あの二人も、すぐに準備を終わらせるでしょうからね」

 あたしはレクスの手を握り、ハルトの家から出る。

 不気味なほど静かなのは変わらないけど、何故だか不安は消え去っていた。

 そしてあたし達の目的が何だったのかを明確に思い出していく。

 魔神姫ティルダ、その名前は聞いたことは無いけど、あの姿、この王国の何かの話で聞いたことがある気がする。

 あたし達はそれを見つけて、ティルダの正体を暴き、戦いのヒントにするため、こうして王国までやって来た。

 この国の国立図書館は、凄まじい数の本が網羅されていたはずだ。

 歴史書でも見て、封印された魔物達がどんなものだったのかを調べればわかるとでも思っていた。

 図書館は確か、城のすぐ目の前、国立の建物が建ち並ぶ場所にあったはずだ。

「……少し距離があるわね、図書館の前まで競争なんてどうかな?」

 あたしがそう言うと、レクスは頷いて、石畳の道の先を見つめる。

 ――いいですね、今度こそは負けません、勝負です!

 少し強い超音波で、そう言ってきた。

 こうやって、競い合いながら、ゆっくりと無限の時を過ごしていければいいなと思っていた。

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