子育てお悩み相談室。〜なずなの挑戦〜
こんにちは。春桜、葉桜になりつつありますね。
おばちゃま先生の相談室の隣の隣の部屋。
大学生の小娘ですが、何故か知らないけれど
先生の適当な一言で「子育てお悩み相談室」
勝手に設立され、アドバイザーになれと。
……もちろん未婚、子供なしの私です。
保育経験ありません。
しかし、昨今若いお母様が多い。
若いお母様のお話を聞く。アドバイスをさせて頂く。
監督責任は、あらゆる資格をお持ちの先生
にあります。
ので、無問題。だそう……です。
「先生! 絶対に無理です! 子供をお持ちの
お母様にアドバイスなどできません!
資格だって……」
私の抗議虚しく。
あくまでアドバイス。
ジャンル問わずチャレンジする。
イコール自分の実績、経験にもなる。
カウンセリングには変わりない……。
半ばゴリ押しで、私は先生の助手兼お母様の
子育てアドバイザーになった。
「大丈夫よ。 貴女と同じくらいのママさん
ばかりだから」
全く大丈夫ではありません。
しかし、何事も経験。 一応のカウンセラーの勉強はしているし、助手としても色々と
見てきた……。
私は先生のどでかい部屋の一室で、子育て
アドバイスをする事に。
一応 ホームページ欄、先生のカウンセリングの案内の下に、小さく子育てアドバイスお受けします。
そう書き足した。
ひよっこ小娘に、アドバイスを乞う人など
いる訳ない。
そう思っていた。
しかし、数日後。
私はパソコンの予約欄を見てびっくりした。
「先生! 大変です!」
「なあに? 騒々しいわよ?」
「子育てアドバイスの予約のお願いが……!
どうしましょう? 先生!」
興奮さながら先生にパソコンを見せた。
「あら。 良かったじゃないの? 予約受け付け、 きちんとね?」
ふふふ。
一言述べ、行ってしまった……。
どうしよう。
いや、うん。大丈夫。
私は予約受け付け手続きをした。
予約当日。
時間通りにマンションのチャイムがなった。
モニターで確認。
若そうな女性とベビーカーが映っていた。
私はマンションの中へと案内し、玄関を
開け待った。
暫くして、ベビーカーを押した女性が現れ、
部屋の中へ。
玄関の外にベビーカーをたたんで立て掛け、
小さな赤ちゃんを抱き、相談室のソファへ
女性が座る。
「初めまして」
簡単な挨拶をすませた。
若いお母様……。
さして私と変わりなさそうな……。
予め、パソコンに記入された相談者の情報をプリントアウトし、目を通す。
やはり、私と大差ない年齢。
しかし、表情が何処と無く、いや……。
思い切り暗い。
大まかな相談内容は把握してあるが、和えて
自分から話してもらう。
赤ちゃんを優しくあやす。
疲れているのか? 笑顔がなかった。
「今日は、 どの様なご相談で?」
定番紅茶、少し安め。
テーブルに置きながら、尋ねた。
むずがってきた赤ちゃんをあやしながら、
女性は話し始めた……。
「実は……。 私未婚なんです。 お付き合い
していた方がいたのですが、 子供ができたと
知ると……、 行方不明に。 親の反対を押し切る形で、子供を産みました。
無責任に産んだ訳ではないです! 欲しくて
産んだんです。 理解してくれる方は余りいないですが……」
いきなりダークだ。
「……でも、やはり無理な選択だったのかも
知れません。 一人で育てるなんて。 働きながら、 何とかやってますが、 限界かなって
思う様になり……」
自分の隣に、眠った赤ちゃんをそっと寝かせて、 紅茶を飲んだ。
「……どうなさりたい?」
意見は押し付けない。
自分で答えを導くのが大切。
無責任な責任であろうと、この人達の人生に
介入できない。
「里子……。 施設。 色々考えました。
どれがいいのか。 でも、分からなくなって
しまって」
望んで産んだ。
生活など、色々疲れたから施設?
里子?
私に理解できない物がそこにある。
でも、他に選択余地ないの?
「お付き合いされていた方とは、本当に
連絡取れない……? ご両親には本当に何も
言えない? 他の方法はもう一つもない?」
表せない感情が、私を押し寄せる。
貴女の人生は確かに貴女のもの。
では、自分の意思で生んだ子供は?
己の都合で、人生が変わってしまう子供の
事は、本当に真剣に考えましたか?
ぶちまけたい感情を抑えた。
「両親は、 言っても無駄です。 私をいい所に嫁がせたかったから。
彼も……。 連絡しようなありません」
諦めモード全開。
子供の権利を無視された子供が、こういう
考えを抱く様になるのか。
はっきり言って、しょっぱなからお手上げ。
けれど、何とかしたい。
「何回でも、 チャレンジできます。 一度や二度で、 全てを諦めるんですか? 欲しくて
生んだ子供を、 貴女は手放せる?」
優しく問いかけた。
自分で決めた人生を、環境のせいで諦めて
欲しくない。
自分の意思で生んだ子供を、簡単に手放せる
はずなどない。
「確かに。 色々あります。 生きにくい世の中、 上手くいかない自分の人生。
あらゆる物が押し寄せる……。 けれど、 決めたのなら、 自分で一度決めたのなら。
簡単に諦めて欲しくない。 大変だと思います。 私には、理解できない事だらけです。
それでも、 寄り添う事はできます」
私は私の思いを正直に述べる事しかできな
い。
共感と理解。 私にはできない。
思いを汲み取り、寄り添う事はそれでも
できる。
女性の目から、流れる大粒の涙。
我慢して、悩んで。不安だったのか。
「この子は、 諦めたくない……」
小さく呟いた。思いは伝わったのだろうか。
「私……。 どうしていいか分からなくなってしまって。 どうかしていたのかも知れません……。 子供を手放すなんて」
簡単に手放せない大切なものがある。
でも、弱さ上に迷いも生まれる。
誰かに話す事は大事だ。
初めて笑顔を見せた。
頼りない笑顔。
母親の笑顔……。
ベビーカーに赤ちゃんをそっと乗せ、彼女は帰って行った。
「これで良かったのでしょうか……」
何気なく不安を先生に言った。
「良かったとか、良くないとか、 判断するのは貴女じゃないわ。 彼女の判断。
自分の人生は、 誰の指図も受け付けない。
なずなさん、 あくまでアドバイスよ?」
ふふふ。
先生はそう言った。
色んな人が世の中いる。
先生といると、色んな人に出会う。
人の人生を垣間見る場所。
そして、カウンセリングや、アドバイスを
する……。
私の人生の経験値、上がるかも……。