冬のプレゼント 中編
「……すぅ……すぅ……」
【魔女のおばあさんは……あ、あそこだ。さて、この娘が寝ている間に、魔女のおばあさんのとこに行かないと】
天から現れた、暗い青紫色をした扉から白い女の子を抱えながら現れたジャック・オ・ランタンは、地上の丘にいる魔女のおばあさん目掛けて、足元にある紅い光のすべり台に少女を抱えつつ、天から滑り降りてきました。
「なんだい? ジャック・オ・ランタンがこっちに来るみたいだねぇ。体当たりを受けないように、少し下がっていようか」
魔女のおばあさんは、近くにある紅い光のすべり台から、少しだけ離れました。
今いた位置にいたら、滑り降りてくるジャック・オランタンとぶつかってしまうかも知れなかったからです。
魔女のおばあさんが位置を離れてから少しして、眠っている女の子を抱えたジャック・オ・ランタンが魔女のおばあさんの前に滑り終えて来ました。
【魔女のおばあさん、久しぶり。元気にしてた?】
「ヒッヒッヒ。この寒いなか、お前さんを待っていたわたしゃあ、風邪をひきそうだった以外は、いつもどうりだったねぇ」
【それはごめんなさい。あとこの娘だけど、ボクが言っていたプレゼントだよ】
「ヒッヒッヒ。この女の子がプレゼントって、どっかから連れ去ってきたのかい? 親がいるんなら、親のもとへ連れ返すべきだよ?」
ジャック・オ・ランタンのプレゼントは、白い髪の女の子でした。
しかし、女の子の事情を知らない魔女のおばあさんは、正論を持って返します。
【どこからか連れ去ってはいないよ。同意の上さ。
この娘は誰からも愛されていないんだ。
この娘を産んだ親も、病で亡くなってしまったし。
年寄りでもないかぎり、白い髪なんていうのは気味悪がれてしまうからね】
ジャック・オランタンはさらりと、白い女の子の事情を言いました。
ただ、その内容は軽い口調とは裏腹に重さのあるものでしたが。
「……その娘にそんな事情があったんだねぇ。親も亡くし、白い髪ゆえに居場所すら無いなんて、ひどい話だねぇ……」
少女の生い立ちを聞いた魔女のおばあさんは、哀れみを含んだ顔をしながら言いました。
【おばあさんが良かったらだけど、この娘の継母になってくれないかな?
それだったら、この娘も喜ぶと思うし、おばあさんも独りきりの寂しさを感じなくてすむから】
「ヒッヒッヒ。わたしで良けりゃあ、この娘の継母になってあげようかねぇ」
魔女のおばあさんは、女の子を引き取ることにしました。
「ああ、そうだ。この娘の名前はなんて言うんだい? 名前が無きゃあ、不便で仕方ないよ」
【そうだった、そうだった。この娘の名前は、ノエルというんだ】
「ノエルかい。良い名前だねぇ」
ノエル――少女の名前――を知った魔女のおばあさんは、はにかむように笑いながら、今も寝息を立ててジャック・オ・ランタンの腕のなかで寝ているノエルの頭を撫でました。
「……んぅ……うにゅ……」
魔女のおばあさんに頭を撫でられたノエルは、幸せそうな笑いをして寝ています。
【ところで、このままでもなんだし、魔女のおばあさんの家に戻らない? ノエルはボクが抱いているからさ】
「ヒッヒッヒ。そうだねぇ。早く帰って、冷えた身体に温かいスープで温めたいしねぇ」
ジャック・オ・ランタンの提案で、三人は魔女のおばあさんの家に向かうことになりました――。