冬のプレゼント 前編
プレゼント編スタートです。
冬の聖人イヴェールを祭る冬至の日の夕暮れのこと。
町外れにある森の丘に、森に住まう魔女のおばあさんがいました。
「ヒッヒッヒ。老体に寒さは堪えるねぇ。でも、約束だから仕方ないねぇ」
魔女のおばあさんは左手にある一通の手紙をつかみながら呟きました。
この手紙は、ジャック・オ・ランタンが魔女のおばあさんに宛てたものであり、そこには一つの約束が綴られていました。
【冬至の日の夕暮れに渡したいものがあるから、来て欲しい】とね。
ですから、魔女のおばあさんは夕暮れに森の丘にいるのです。
「ヒッヒッヒ。ジャック・オ・ランタンはどんなプレゼントをくれるんだろうねぇ。しかし、このままじゃあわたしゃあ風邪をひいちまいそうだよ。ああ、早く来ないかねぇ……」
空を見上げると、灰色の分厚い雲が覆っていて、今にも雪が降りそうな感じです。
「雪まで降ってきたら、ますます身体が冷えちまうよ。この歳での風邪はけっこう堪えるから嫌だねぇ……」
魔女のおばあさんを問わず、お年寄りは風邪をひくと、若い人より治りは遅くなります。
薬湯を飲めば治りやすくなりますが、それでも風邪の辛さは少し和らぐだけです。
「おや? あれはなんだい? もしかして、ジャック・オ・ランタンかい?」
魔女のおばあさんは灰色の曇り空に異変が生じたのを見ました。
雲間から差す夕日の紅い光が魔女のおばあさんの前に集まり、天からの紅い光のすべり台のようなものを作ったのです。
すべり台みたいなのは、階段のような段差が見当たらないからです。
異変はまだあります。
紅い光のすべり台の先には、夜を思わせる暗い青紫色をした、お城にあるような大きな扉がありました。
ギィィ……。
という音を辺りに響かせながら、扉が開きます。
扉が開いたところには、穴あきカボチャを被り黒いマントを来た男性――ジャック・オ・ランタンが、白い髪をした十才くらいの女の子を抱えながら現れました。
「ヒッヒッヒ。プレゼントを渡すにしちゃ、たまげるような現れかたをするもんだね。
しかし、ジャック・オ・ランタンが抱えている女の子は、誰なんだろうねぇ」
ジャック・オ・ランタンが現れる様子を見ていた魔女のおばあさんは、少しだけ驚いたあとジャック・オ・ランタンに抱えられている少女のことを気にしました――。