スープと手紙と約束
「んー、よく寝たねぇ。さて、ジャック・オ・ランタンの食べたものを片付けしないとねぇ……って、今年もやってくれたようだねぇ」
朝が来て、目が覚めた魔女のおばあさんは、昨夜の片付けをしようテーブルのほうを見ました。
ですが、片付けしようにもできません。
なぜなら、ジャック・オ・ランタンが食べこぼれたお菓子の欠けらや粉砂糖、空になったお皿などを片付けてしまったからです。
「おやまぁ、美味しそうな匂いがすると思ったら、朝食も作ってくれたようだねぇ。嗅ぐだけでお腹が空いてくるよ」
台所から漂ってきた美味しそうなスープの匂いを嗅いだ魔女のおばあさんは、自分のお腹がクゥと鳴るのを感じました。
「この匂いだと、ジャガイモと豆のスープかねぇ。寒い時には、身体があったまってくるから、わたしゃあ好きだねぇ」
魔女のおばあさんが台所にある、湯気が出ている鍋を見ました。
「ヒッヒッヒ。やっぱり、ジャガイモと豆のスープだったよ。それにしても、わたしの寝てる間によくできたものだねぇ」
魔女のおばあさんは、ジャック・オ・ランタンのやったことに感心しながら呟きました。
魔女のおばあさんが寝ている間に、食べこぼしがあって汚れているテーブルをきれいにしたり、朝食の準備をしたりしているのです。
それも、物音で相手を起こさないようにしつつ。
「冷めないうちにスープをよそおうかねぇ」
魔女のおばあさんはそう言うと、戸棚からスープ皿を取り出し始めました。
「おや? これはなんだろうね?」
スープ皿を取り出そうとして、お皿を一枚取り出した魔女のおばあさんは、お皿の下敷きになっている、一通の手紙を見つけました。
「ジャック・オ・ランタンの仕業かねぇ。ヒッヒッヒ、まぁいいさ。スープを食べる前に読もうかねぇ」
魔女のおばあさんは、ジャガイモと豆のスープをお皿に入れ、思い出したように木のスプーンを食器棚から取りにいきました。
スプーンが無ければ、スープは食べれませんから。
「どれどれ、なんて書いてあるんだろうねぇ」
朝ご飯を食べる準備を終えた魔女のおばあさんは、ジャック・オ・ランタンからの手紙を読み始めました。
手紙にこう書いてあります――。
【魔女のおばあさんへ。
今年も美味しいお菓子をありがとう。
あなたが毎年くれるお菓子のお礼のために、ボクはあなたにプレゼントをしようと思います。
ただ、そのプレゼントは『冬至の夕暮れ』の時間帯でしか渡せません。
その時間帯に森にある丘の上で待っていてもらえませんか?
寒さが厳しくなる日にごめんなさい。
その日をボクは楽しみにしています。
ジャック・オ・ランタンより】
「ヒッヒッヒ。昨日の約束を忘れないように書き残してくれたみたいだねぇ。これなら、手紙をなくさない限り、わたしゃあ忘れないから安心できるねぇ。さて、早くスープを食べないと冷めて美味しくなくなるから、食べるかねぇ」
ジャック・オ・ランタンからの手紙を読み終えた魔女のおばあさんは、手紙を四つに折ってから、スープを食べ始めました――。
<終>
とりあえず、ここでハロウィン編は終了します。
次からプレゼント編です。
(クリスマスらしくないので……)