ジャック・オ・ランタンの礼儀
【おばあさん、どうしたんだい?】
ジャック・オ・ランタンが、自分をぼうっとを見つめている魔女のおばあさんに話しかけます。
「ヒッヒッヒ、なんでもないよ。ただ、お前さんと初めて会った時のことを思い出していただけだからねぇ」
魔女のおばあさんは笑いながら言いました。
【そうなのかい? まぁいいや。もうすぐお菓子を食べ終えるから、おばあさんはもう寝てていいよ】
テーブルいっぱいにあったお菓子たちは、もうほとんどありません。
全部、ジャック・オ・ランタンが食べてしまったからです。
残っているといったら、カボチャのプリンとクッキーのみです。
あとは、ポロポロと零れ落ちた他のクッキーの欠片や、ケーキの上に降り飾られ、お皿から零れ落ちた真っ白な粉砂糖がちらほらとテーブルにあるだけでした。
「今年も、朝になったら片付けちまうのかい?」
【そうだよ。お菓子をくれたお礼も兼ねてね】
「お前さんはえらいねぇ。普通の子どもは、散らかし放題で片付けもしないんだとわたしゃ思うんだよ。特に小さな子どもはね」
魔女のおばあさんは子どもを見守るような目で言いました。
【ボクって、こんななりでも、普通の子どもより長く生きてるからね。それに、礼儀をわきまえているから、片付けもするのさ】
お化けの国に住まうジャック・オ・ランタンは、人間の子どもとは違い、きちんとしています。
なにかをしてもらったらお礼をしますし、悪いことをしてしまったら、自分から謝ります。
なかには、不届きなお化けもいますけどね。
ボーン……チクタク……ポーン……チクタク。
床に置かれた振り子時計が鳴りました。
針を視ると二時を差しています。
「フワァ……もう二時かい。眠たくなってきちまったよ。ジャック・オ・ランタン。わたしゃあもう寝るよ。お菓子を食べ終わったら、お化けの国にお帰り」
魔女のおばあさんは欠伸をすると、お菓子を食べているジャック・オ・ランタンにひとこと言って、ベットに入りました。
【プハァ。おばあさん、お休みなさい】
「ああ……お休み……」
魔女のおばあさんはそう言って、先に寝てしまいました――。