ジャック・オ・ランタンとの出会い 後編
「……ふぅわぁぁ……わたしゃあ、眠くなってきたから、もう寝るよ。お前さんも、お菓子を食べ終えたら早くお帰り」
時計を見ると、短針は二時を指しています。
ハロウィンの朝からお菓子作りのために起きていた魔女のおばあさんも、疲れを取るために寝なければいけません。
ジャック・オ・ランタンに一言だけ言った魔女のおばあさんは、そのままの格好でベットに入って寝てしまいました。
【お休みなさい、おばあさん。そして、お菓子をありがとう】
ジャック・オ・ランタンはテーブルいっぱいのお菓子をほんの少しだけ残して、ベットで寝ている魔女のおばあさんにお礼を言いました。
「(ヒッヒッヒ……寝入りにお礼を言われるなんてね……わざわざ寝直すのも億劫だし、このまま寝てしまおう……この気持ちいいまどろみの中でね……)」
魔女のおばあさんはまどろみながら、ぐっすりと眠りにつきました――。
「ふぁぁぁぁ……よく眠れたねぇ。おや、ジャック・オ・ランタンは帰ったのかい。さて、後片付けを……おや? 片付けが終わっちまってるよ。ジャック・オ・ランタンがやってくれたのかねぇ」
冬が目覚めたような、冷たい朝日が差す時間に起きた魔女のおばあさんは、昨夜――そう言っても数時間前のことですが――に訪れたジャック・オ・ランタンが食べ尽くした、テーブルいっぱいのお菓子たちを盛った器を片付けようとしたら、すべてキレイに片付けられたあとに驚きつつ微笑みました。
「おや? こんなところに手紙が挟み込んであるね。ジャック・オ・ランタンの仕業かねぇ」
魔女のおばあさんが部屋中を見渡すと、食器棚の戸棚に一枚の紙が挟まれているのを見つけました。
「ヒッヒッヒ、さぁ何か書かれているのかねぇ?」
魔女のおばあさんは、戸棚に挟まれている紙を引き抜くと、そこには黒いインクの走り書きみたいな字でこう書かれていました。
【おばあさんへ。来年のハロウィンも、お菓子をよろしく。ジャック・オ・ランタンより】
「ヒッヒッヒ。ジャック・オ・ランタンはちゃっかりしてるね。まぁいいさ。一人ぼっちで悲しく待ち過ごすよりはねぇ……」
ジャック・オ・ランタンからの置き手紙を読んだ魔女のおばあさんは、顔を綻ばせながら、いつもの日課をし始めました――。
回想編終了です。