後日談1
遅くなりましたが、後日談です。
魔女のおばあさんとノエルが、イヴェールを祭る冬至の日に出会ったから、十年近くが立ちました。
白い髪を持つ少女だったノエルは、白い髪はそのままに雪のような肌を持つ美しい乙女へと成長しました。
一方、魔女のおばあさんは体調を崩してしまい、ベッドで寝たきりとなっていました。
「おばあさん、大丈夫? 薬湯を作ったから、飲んでね」
「おお、ノエル。すまないねぇ……」
魔女のおばあさんはノエルから薬湯を受け取ると、少しずつ飲みました。
十年の間に、魔女のおばあさんから教わった薬草の知識を活かして、栄養のあるハチミツと煎じた薬草をお湯で割ったものです。
「おばあさん、無理はしないで休んでいて」
ノエルは心配そうに言いました。
ただ独りの、血のつながらない家族を失いたくなかったからです。
魔女のおばあさんは、そのことに気づいていました。
だからこそ、ノエルの想いを守るために、薬湯を飲んだりして早く病気を治そうとしていました。
ですが、本能で知っていました。
自分が患っているのは、病気に似ていて違うものだということを。
寿命がきていたということを。
ノエルには言いませんでした。
ノエルを悲しませたくなかったからです。
「あら、薬草が少ない。おばあさん、薬草を採りに行ってくるわね」
「ああ、行ってらっしゃい……」
ガチャ。
薬湯に必要な薬草が少なくなっていたので、ノエルは薬草を採りに行きました。
「ジャック・オ・ランタン……そこにいるんだろう……?」
魔女のおばあさんはつぶやくように言いました。
【……やぁ、魔女のおばあさん。どうして、ボクがいることに気づいたの?】
部屋の中から現れたのは、穴あきカボチャに黒いマントの男性――ジャック・オ・ランタンです。
「あの娘以外に……誰かいると思ったからさ……」
【無理してしゃべらなくていいよ】
「ジャック・オ・ランタン……わたしがいなくなったら……あの娘はどうなってしまうんだい……?」
【……多分、いや、確実に、おばあさんを喪った悲しみに打ちのめされてしまうね】
ジャック・オ・ランタンは言います。
ノエルに待ち受ける残酷な未来を。
「ヒッヒッヒ……誰だって、愛する者を喪うことは辛いことさ。でも……いづれ来てしまうものだよ。
……良い人も悪い人も、抗えはしないのさ」
魔女のおばあさんは言いました。
ノエルに襲いかかる、魔女のおばあさんの死という、無慈悲な喪失から逃れられないことを。
「……ジャック・オ・ランタン……一つ頼みを聞いてもいいかい?」
魔女のおばあさんは言いました。
【なんだい? ボクに出来ることなら、聞くよ?】
「……これから来るノエルの孤独を……お前さんなりに癒やしてくれないかい?
……あの娘が泣いていたんじゃあ、死にきれないからねぇ……」
魔女のおばあさんは、うっすらと涙を浮かべながら言いました。
ノエルに対して、心残りをしたくなかったからです。
【わかったよ。おばあさんがそう望むなら、ボクはボクなりに叶えよう】
ジャック・オ・ランタンはそう言うと、霞むように消えてしまいました。
今、部屋にいるのは魔女のおばあさんだけです。
「……ヒッヒッヒ、ありがとうねぇ……頼んだよ」
魔女のおばあさんはつぶやくように言いました――。
続きは執筆中です。
なかなか、進みません……。




