冬のプレゼント 後編
「ヒッヒッヒ。家についたねぇ。わたしゃあ、温かいスープでも作ってようかねぇ」
【それじゃあ、ボクはノエルをベッドに運んでるよ】
魔女のおばあさんの家についた三人は、それぞれすべきことをやりました。
魔女のおばあさんは、新しい家族であるノエルの分を含んだ三人分の薬草と豆のスープを。
ジャック・オ・ランタンはノエルをベッドに運ぶことを。
二人はやりました。
しばらくすると、台所から美味しそうな匂いがしてきました。
魔女のおばあさんが作っている、薬草と豆を煮込んだスープの匂いです。
【ああ、良い匂い。食べるのが楽しみになってくるなぁ】
ノエルをベッドへと運び終えたジャック・オ・ランタンは、テーブルチェアに腰を降ろしていいました。
「……んにゅう……おいしそうなにおい……あれ? ここどこ?」
薬草と豆のスープの匂いを嗅いだノエルは、まぶたを擦りながら起きました。
【やぁノエル。おはよう。ゆっくりと眠れたかい?】
「あ、えーと、ジャック・オ・ランタンだっけ……? ここどこなの?」
【ここかい? ここは君の新しい家だよ。今、君の新しいお母さんである魔女のおばあさんが美味しいスープを作っているから、待っていようか】
キュルルゥ……
スープの匂いでノエルのお腹が鳴りました。
「……うん、待ってる」
お腹の音を聴かれたノエルは恥ずかしそうに笑いながら答えました。
しばらく待つと、両手に鍋を抱えた魔女のおばあさんが台所から現れました。
「ヒッヒッヒ。おや、ノエル。お目覚めかい? ノエルの分のスープもあるから、たくさんお食べ」
【ボク、お皿を持ってくるね】
ジャック・オ・ランタンは三人分のスープ皿を取りに台所へ行きました。
「……どうしてあたしの名前を知ってるの?」
ジャック・オ・ランタンがスープ皿を取りに戻るまで、たいくつだったノエルが魔女のおばあさんに聞きました。
「ヒッヒッヒ。そりゃあジャック・オ・ランタンに聞いたのさ。勝手に名前を知ったお前さんにゃ、悪いと思うだろうけど、名前が分からなくちゃ不便だからねぇ」
「……そうなの? ……別にいいけど。……名前なんて、遅かれ早かれあいてにしられちゃうしね」
「ヒッヒッヒ。他に何か聞きたいことはあるかい?」
「……どうしてあなたは、白い髪を持つあたしを気味悪がないの? ねぇ、どうして?」
ノエルは魔女のおばあさんに聞きます。
今までの大人たちと違った反応をする、魔女のおばあさんに興味を持ったのかもしれません。
「わたしゃあ、ノエルの気持ちは少なからず分かっちまうんだよ。ノエルと同じく、長い間独りだったからねぇ……」
「……あたしがあなたと同じだから……あたしの新しいお母さんになってくれるの?」
ノエルは子どもながらに、言葉を選ぶように言いました。
「独りぼっちが二人いれば、独りじゃなくなるもんだよ。お前さんが白い髪で気味悪がれて、わたしゃあ醜い顔で気味悪がれる。
だからわたしゃあ、お前さんの孤独を埋めるために、新しいお母さんになりたいんだよ。互いが互いを埋め合うような感じにねぇ」
魔女のおばあさんも、言葉を選ぶように言いました。
「……こんなあたしの、新しいお母さんになってくれて、ありがとうございます」
「お礼を言うのはわたしもだよ。わたしの子どもになってくれてありがとうね」
互いにお礼を言い終わると、それを見計らうようにジャック・オ・ランタンがスープ皿を取りに戻りました。
【遅くなってごめんね。すぐに、スープをよそうよ】
「ジャック・オ・ランタン……もしかして、聞いてた?」
ノエルが恥ずかしさで可愛らしい顔をリンゴのように真っ赤に膨らましながら、ジャック・オ・ランタンに聞きました。
【ボクってこれでも耳が良いから、偶然聞こえちゃったんだよ。だから、怒らないで? 可愛らしい顔が台無しだよ?】
「偶然聞こえちまったのは、しょうがないから許しておやり」
「……おばあさんがそう言うなら、許してあげる」
スープをよそいながら説得するジャック・オ・ランタンと、許すように促す魔女のおばあさんの、二人に言われたノエルは真っ赤に膨らました顔をやめました。
「さて、スープを飲もうかねぇ」
【美味しそうな匂いがたまらないね】
「……どんな味がするのか楽しみ」
魔女のおばあさんが作り、ジャック・オ・ランタンがよそったスープは、薬草と豆を煮込んだ良い匂いが食欲をそそらせています。
三人そろって、スープを一口飲みました。
「美味しくできたねぇ」
【煮込み加減もいいね】
「……美味しい」
三人とも、スープの美味しさに顔をほころばせてます。
魔女のおばあさんの作ったスープは、飲んだ人の心を温かくさせたからです。
「……あれ……眠たくなってきちゃった……あたし……もう寝るね……お休みなさい……」
スープを飲み終えたノエルは、しばらくすると眠たくなってきました。
このままだと、風邪をひいてしまいます。
【ふふ、またボクがベッドに運んであげるね】
ジャック・オ・ランタンはすでに寝息を立てているノエルを抱えると、ベッドに運びました。
「お休みノエル。さぁ、後片付けをしようかねぇ」
【あ、ボク手伝うよ】
「ありがとうねぇ」
魔女のおばあさんとジャック・オ・ランタンは、テーブルの上にあるお皿と鍋を片付け始めました――。
めでたしめでたし
これで、プレゼント編は終了です。
終盤、端折り過ぎがあってすみません。
次の後日談一本で締めます。
(後日談はこれから執筆します。)
お読みいただき、ありがとうございました。




