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「空色の授業」  作者: 翠野希
Ⅱ.異端の空
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望み見る

朝早く、けやき寮の全員が集まった後、寮母さんから休講の知らせを聞いた。2週間の期限が延長され、またいつまでになるか、未定らしい。



無理もない。だって、朝の時間が来ても、空は真っ黒なんだもの。

朝日が出ないなら、もはや朝なんかじゃない。


見たことのない現象を面白がる子もいたけど。一歩出れば、完全な闇だ。


こんな闇を誰かが描いたのかしら?それとも、何かの事故?

みんな口々にひそめき合う。


課題が延期になっても、やることがないために落ち着かない。

空の色一つでこんなに不安になるなんて思わなかった。


「みどり」

わたしを呼んだのは桃枝だった。

「大人しく、ここにいる?」

「出掛けようって言うのね」

闇の中をわざわざ出掛けるなんて変な提案だけど、寮にいたって仕方ない。


「何が起こるか分からないわよ。闇に転じて泥棒とか出るかも」

「だったら逃げるだけよ。こんな真っ暗じゃ、見つかりはしないわ」

危ないことを言う子だ。

「…わたしも行くわ。モモ一人じゃ心配だもの」

と言うのは建前で、怖いもの見たさの心がわいてしまった。


「それで、どこに行くつもりなの?」

「昨日行かなかった、2年生の実習棟よ。学校に行けば、誰か何か知ってるかも知れないわ」


確かに、空色職人の先生なら、この深い闇について知っているかもしれない。

学校が通常通り開いているのかは分からないが、他に行く当てもない。


「何があっても、後悔しない?」

わたしは桃枝に、慎重に聞いた。真っ暗闇から何が現れても、不思議じゃないだから。


「うん。みどりは?」

「わたしも後悔しないわ」

ただ待っているより、闇の中にも希望が隠れている気がした。


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