3話
短いです
姉か妹がいるやつにしか分からないかもしれないが、ほとんどの場合、姉や妹がどんなに可愛くても巨乳でもまぁとにもかくにも、恋愛感情を覚えることはないハズだ。
ないはず、なのだが…
「なんか急にかっこよくなった気がするよ」
なんてことを俺の姉がゼロ距離からささやきかけてくる。
ああ!お姉さま!胸が!胸があたっております!!
姉では興奮しないという絶対条件があるはずなのに、俺の理性はノーアウト満塁。最初からクライマックスである。
落ち着くために素数を数えようとしたとき、またホップアップが浮かんだ。
1、俺…実は紗季のこと…
2、早くしてくれよ、キス
3、ごめん!冗談だよ!
お、今回はまともなのがひとつあるじゃないか。
「ごめん!冗談だよ!」
セリフに加えて手を合わせて頭を下げる自然な演技。ナイス俺。
これで解放される…と思ったのだが、紗季はゼロ距離から更に距離を詰めてもはやマイナス状態。ジト目で俺を睨む。
「ご、ごめんって」
「むー…わかったよ」
ほっ。やっと離れてくれた。
「……と見せかけて、にゃー!!」
じゃれ合おうとして飛びかかる猫よろしく、俺に飛びついてきた。
俺が下、紗季が上という普通は逆の体勢だ。
紗季の柔らかい体が俺の腹の上に乗っている状態。
絶対条件があるにもかかわらず、普段“女”と意識できない姉を“女”と意識してしまう。
こんな状況にもかかわらず冷静に分析している俺だが、体中の汗腺がばかになったんじゃないかってくらい汗をかいていた。
焦っているわけでも、照れているわけでもない。
それはこの冷たいてが証明している。体温が1度くらい下がったような錯覚がする。めまいがする。
「なっちゃん?」
「あ、あぁ、ごめん。ちょっと熱中症っぽいんだ」
そう言うと、紗季は無表情になってすっと俺の上から降りて、台所に向かったようだった。
「真夏、ほら部屋で寝たほうがいいよ」
ミネラルウォーターを脇に挟んで、肩を貸してくれた。
ありがと、と口の中で小さくつぶやく。
「夕御飯どうする?お粥でも作ろうか?」
「今日はいいや。ありがとう」
「何かあったら呼ぶこと!」
「はいはい、ありがとね」
優しさに自然と笑みが浮かんだ。
紗季が俺のことを名前で呼んだときは、本気で心配してくれてる時だと俺はわかっている。
ほわほわしているが、いざとなる時は頼りになる姉なのだ。
さて、昔の話をしようか。