閉幕した舞台の上で
世界が優しくないことなんて
わかっていたはずなのに。
どうしてヒトは優しいコトに縋ろうとしてしまうのだろうか
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「徹、待って。」
「緋色?どした」
前を歩いていた徹が振り返る。こちらを心配そうに窺う視線に少しだけ慌てる。
「ごめん、えと。歩くのはやいよ」
「あぁ、すまない」
考え事をしていたのか、徹はいつもよりも大きな歩幅で歩くので私は小走りとゆうよりは殆ど走るようにして彼の後を付いて行ってる感じになってしまって少ししんどかっただけ。
「お前、今日の出動やめとけ。」
「え?」
暫く歩いて徹はこちらを振り返り眉を潜めながら言う。それに対して驚いて止まってしまった。
「え?どうゆうこと?」
「お前、体調悪いだろ。今日は違うやつと組ませてもらうようにするからやめとけ。」
「待って待って、大丈夫だよ!それに司令の所には行かなきゃだしそこで判断してもらお?」
「……とりあえず、いくぞ」
徹は私の手を掴むと先ほどよりは少し早い歩調で歩き出した。自分でさえ分かってなかったこと。正直今日は訓練中から息が上がるのはいつもよりも早かった。あまり気に留めてなかった。なのになんで徹は気づくのだろうか。足手まといにはしたくないからが1番有力で正しい選択。
司令室まで徹は一言も話さずにただ手から徹の体温がじんわりと伝わってきた。
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「……んむぅ」
「立川司令、どうゆうことですか」
司令室に着いた途端徹が口に体温計を突っ込んで来た。目が測れと言っているので言いかけた言葉をゴクリと呑み込んだ。そして大人しく測りつつ司令と徹の口論を眺めていた。
因みに司令はクールビューティーの美女です。ツヤツヤの黒髪が首元で踊っています。
「申し訳ないけれど他の子たちは出動させられないのよ。」
「なんでだよ。いつも俺らは代わりに出てただろ?」
「それはあんたらがヴィルにつけられた傷が無いからよ。他の子たちは大なり小なりヴィルから傷を受けての。わかる?今は体内の侵食率が低いから感染されていないけれどいつどうなるかわからない。だから無闇に出動させられないのよ。それに弥生たちも今は出てるの。」
「だからって、緋色がこの状態で出て行ったら死ぬぞ。」
「__釧路隊員、熱は」
いきなり此方に話を振られてびくりと立ち上がり敬礼しながら答える。
「35.6度です!」
「それ平熱?低いわね」
「至って平熱であります!」
ビシリと決めたはずなのに徹は不審そうな顔で私の持っていた体温計を奪ってより一層眉間にシワを寄せた。
「本当に大丈夫なのか?」
保護者かよ、と突っ込んでしまったらもう終わりな気がするから真面目な顔して頷く。
「品川徹隊員、釧路緋色隊員、両隊員に告ぐ!平戸区内の要救助者の捜索及びヴィルに対し然るべき処置を行うこと!」
「__っは!」
「よろしい!後方支援部から武器を補給したのちヒトサンマルマルに25ゲートから出動!作戦終了時刻はヒトゴウマルマル以内!以上解散!」
「はいっ!」
この3年間で何万回とした敬礼を司令に向けてする。そして司令室から出て行くときに一言だけ声をかけられる。
「緋色、ごめんなさいね」
哀しげに伏せられる睫毛と申し訳ないと声色が語る。そんな司令に対してもう一度敬礼をしてから部屋を出た。
「司令があぁ言うならしょうがない。だが、無理はするな。俺から離れるな。」
「ん、わかった」
それだけ言うと先に行く、と歩いて行った。残された私はゆっくりと徹の歩いて行った道を歩いていく。
大丈夫、死なない__!
手を強く握りしめた。
「徹」
10分前に到着すると徹はもう居て私を見ると額に手を伸ばす。ひんやりとした徹の手が少しだけ熱い額を冷ます。
「緋色、俺との通信回路は切るなよ。絶対に。」
「わかった。」
真っ直ぐ鉄の扉を見据える。生き残るために迷いをなくす。
『品川、釧路両隊員、応答願います。』
「品川徹、います!」
「釧路緋色、います!」
『25ゲート周辺ヴィルはいません。武器装着確認。無線オン。通信機能オン。25ゲートロック解除』
鉄が動く音が響く。ゲートの隙間から吹き込む風が火薬の匂いを運んでくる。
「司令!松原隊員たちは何処に?」
『あんたらの隣の地区よ!帰還命令時刻はヒトヨンマルマル!被りはしないわ。』
「ありがとうございます」
『25ゲート開きます!安全装置解除、直進3000mに複数のヴィル!
__距離2000!
両隊員、出動っ!!』
「「了解っ!!」」
ゲートが開いた瞬間にダッシュする。一瞬目眩が襲ったけど持ち直す。
徹にも気づかれていないから少し安堵すると焦げ臭い匂いが鼻を掠める。
「徹っ!」
「緋色っ、後ろだ!」
「っぁああああああ!」
後ろを振り返って前に向けていた脚力を逆方向に向ける。後ろから襲いかかって来た奴らをそのまま薙ぎ払う。3体ほど頭部と胴体を切り離す。
隣で銃声が聞こえて来たから撃退してるんだろう。




